〜真ん中の扉〜
「紫、平気か?」
「はい、兄様……
ですが、ここに様がいらっしゃるのでしょうか?」
真ん中の扉を開け、その先にあったオフィスで立ち尽くす二人。
どうやらここで、例の指令を遂行するようだが……
「泉水殿のお姿が見えませんわ」
「扉を開け、その先に足を踏み入れた際には
確かに我々と共に居たはずだが……」
だが、ここには自分たち以外の人の気配はない。
「指令をこなすことも重要だが……ここはひとまず、泉水殿を捜そう」
「はい、兄様」
そうして二人は、部屋を出た。
「紫姫!深苑殿!」
二人が部屋を出て歩き出したところで、声を掛けられた。
声のした方を見ると、そこにはこれから捜そうとしていた泉水が立っている。
「泉水殿!」
紫も思わず泉水の名を呼ぶ。
「そんなに慌ててどうかされたのか?」
「はい、それが……殿に、ひとまずお二人を捜すようにと」
「まあ、そうでしたの」
三人それぞれ何が何だか解らない状況であるが、
とにかく、のもとへ向かうことにした。
「殿、お二人をお連れしました」
「あ、ありがとう、泉水!」
そう言いながら三人のもとへ駆け寄ってくる。
「同僚になれ」と言うのだから、これから共に
仕事をするのかと思っていたのだが……
「これから宴を開くよ!!」
「「「え…………?」」」
紫や泉水だけでなく、さすがの深苑も間の抜けた声を出してしまった。
「だから、宴を開くんだってば!」
「宴、ですか?」
「うん☆」
当たり前だと言いたげなの態度を受け、深苑が口を開く。
「急に宴など……馬鹿げている」
いつもの厳しい口調でそう言った深苑。
そんな彼を、こちらもいつものように宥める紫。
「兄様! 様に対してそのような……」
「気にしないで、紫姫」
「ですが……」
兄・深苑の言葉を気にする紫であったが、
そんな彼女には再び「気にしないでいい」と言った。
「あたしも詳しい説明なしに宴なんて言っちゃったしね」
そんなことを言うからには、その宴には何か事情があるのだろうか。
そう思った三人は、の言葉に耳を傾けることにした。
「えーと……まず、宴を開こうと思ったきっかけなんだけどね」
「はい」
「最近、花梨ちゃんの様子がおかしくて……」
「神子の様子が……ですか?」
「うん」
の話によると、最近花梨の様子がおかしく、
何やら元気がないのだという。
「あたしが思うに、ちょっと疲れてるんじゃないかなって」
「神子様は、よくお休みになっていらっしゃらないのでしょうか」
「うーん、睡眠は取ってるみたいなんだけど、なんてゆうか……
精神的に参っちゃってるみたいでね」
花梨に元気がない理由は、
ここ最近の立て続けに入った仕事のせいなのではないか、とは加えて説明した。
「とにかく!
そんな花梨ちゃんに気分を変えてもらうためにも、
みんなで宴を開こうと思ってるの」
「なるほど……それは良い考えかと思います」
「私も同じ意見ですわ」
一通りの説明を聞いた泉水と紫姫は、賛成の意を示す。
それに対して、しばらく黙っていた深苑であったが。
「…………仕方があるまい」
深苑なりの、賛成の意を表す言葉であった。
「やった!
それじゃ、さっそく準備しよっか!」
「はい、様!」
「様、こちらはどうすればよいでしょうか」
「うん、それは向こうに運んでくれる?」
「かしこまりましたわ」
「殿、こちらはこのくらいでよろしいでしょうか」
「うん、完璧だね!」
「深苑、そっちじゃなくてこっち並べて!」
「そういうことは早く言わんか!」
「ごめんってば!」
それから数時間、たちは宴の準備に奔走するのであった。
六月生まれへの指令:会社の同僚になりきれ
(ここに来てからまだ、宴の支度しかしていないが……)
(様と共に過ごすというのが、きっと大切なのですわ)
(ええ、そうですね)
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遙か十周年記念企画、六月の紫姫・深苑&泉水Ver.でした!いかがでしたか?
三人は割りと会話しそうな気がするんで、なんとなく書きやすかったです。
しかしながら、宴の準備で終わってしまいましたね^^;
泉水のキャラソンは意外と積極的なので、気になります。
キャラソンネタも良さそうですね!
双子でも何か書いてみたいです☆
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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