〜右の扉〜
右の扉を開けた足往は、すぐ目の前に居た見覚えのある人物のもとへ駆け寄った。
「姫さま!」
「あ、足往!」
姫さま、と呼ばれ振り返ったのは、
足往ももちろんのこと中つ国の人々が王として掲げた葦原千尋、その人である。
「姫さまも『らじお』をやるのか?」
「ううん、私はスタッフ……準備が担当なの」
「ふうん、そうなのか」
自分は出演者ではないことを説明した千尋に頷いた足往だが、
実のところ完全に理解したようではなさそうだ。
それが解った千尋は、そんな彼を見て少し苦笑した。
「それにしても足往、のところには行った?」
確か打ち合わせするって言ってたと思うけど……と千尋が言うと、
足往は慌てた様子で言う。
「そっか、じゃあおいら、のところへ行ってくる!」
「あっ、待って足往!
がどこに居るのか知ってるの!?」
「姫さま、また後でなー!」
「……行っちゃった」
そうして千尋が引き止める間もなく、足往は走り去ってしまったのであった。
「そういえばはどこにいるんだ?
姫さまに聞いてくればよかったなぁ……」
勢いよく走り出したのはいいものの、
千尋の予想通り足往はの居場所を知らなかった。
どうしたものかと足往が考え出したとき、ちょうどよく見知った人物が通りかかった。
「あっ、忍人さま!」
「足往か」
足往が尊敬してやまない中つ国の将軍、葛城忍人である。
「こんなところで何をしている?」
「おいら、今、を捜してて……
でもどこにいるかわからないんだ」
忍人さまは知らないか?と問いかける足往に対し、
少しため息をついた後、忍人は答えた。
「なら、この通路の突き当たりにある部屋に居る」
「そうか!ありがとう、忍人さま!」
それだけを言って、足往はまた走り去ってしまう。
「全く、仕方ないやつだな」
そんなことを言いつつも、どこか微笑ましくも感じている忍人であった。
「つきあたり、つきあたり……」
忍人と別れてから、ひたすら通路を進んできた足往。
突き当たりの部屋らしき場所に着いたが、
なんと扉が二つ――つまり、部屋が二つあったのだ。
「どっちにがいるんだ?」
この際どっちも開けてみたらいいんじゃないのか、と足往が考えたとき。
背中の方から声を掛けられた。
「足往?」
「!!」
捜していた人の声だと解ったのか、足往は嬉しそうに振り返る。
「良かった、千尋に言われて追いかけてみて正解だったね」
どうやらは、少し前に千尋と話をしたようで、
そこで足往が走り去ってしまったことを聞いたらしい。
「姫さまと会ったのか?」
「うん、つい先ほど」
ならば、忍人が突き当たりの部屋に居る、と言っていたが
どこかで入れ違いになってしまったということだろうか。
足往は少し不思議に思ったが、
当の本人に会えたのでそこまで深くは考えなかった。
「! 姫さまが打ち合わせをするって言ってたんだ」
「うん、そうだよ。
みんなでラジオについて、前もって話し合いするの」
あまり状況が解っていない足往に対し、丁寧に説明する。
は、もともと敵の立場にあったとは思えないほど優しい。
敵であった彼女と、こんな風に仲良く話すなんて初めは思わなかったのに。
それでも今こうやって話せるのは、彼女の人柄……
だと足往は考えていた。
「…………足往、聞いてる?」
「ああ、おいらばっちり聞いてたぞ!」
なんとなく上の空だった足往には問いかけるものの、
そんな風に自信満々な答えが返ってきた。
「おいら、やっぱりと会えて良かった!」
「うん……私も同じよ」
やっぱり聞いていなかったようだ、と思いつつも、
足往の言葉が嬉しくては苦笑しながらそう答えたのであった。
八月生まれへの指令:ラジオDJになりきれ
(そういえば、結局「らじお」ってなんだったんだ?)
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遙か十周年記念企画、八月の足往Ver.でした!いかがでしたか?
足往も微妙にキャラがつかめてない感、満載なんですが^^;
とりあえず色んな人と関わりがある足往なので
今回は千尋と忍人にも登場してもらいました。
基本この企画は主人公と相手だけで展開する方針なのですが
なんてゆうか……二人を登場させたかった!(何
結局ラジオ関係ねーけど、割と好きな感じですv
しかしながら、やっぱ、久しくゲームやってないと
キャラがほとんど解らないです……似非足往?^^;
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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