〜左の扉〜
「ここがやあかねの居た世界か……」
左の扉を開けたイノリは、ラジオの収録スタジオがある建物内に居た。
しかしながら、見慣れぬ場所に少々戸惑うイノリ。
「……って、いつまでも突っ立ってたってしょうがねぇよな」
だが、ここで怖がったりしないのがイノリである。
ひとまずを捜さなくては、と、ずんずん歩き出した。
そうして、イノリが手前の角を曲がろうとしたとき……
どんっ
「わっ!」
「っ……!」
バサバサッ
向こうから走ってきた誰かと、イノリはぶつかってしまったのだ。
自分はなんとか持ちこたえたが、相手は勢いあまってか
尻餅をついてしまったようである。
そして、同時にその「誰か」が持っていたらしい紙の束が、辺りに散らばってしまう。
「お、おい、大丈夫か!?」
焦ったイノリはその「誰か」に向かって慌てて声を掛ける。
すると。
「は、はい、なんとか大丈夫で……
…………って、イノリ!」
「!?」
なんと、イノリがぶつかった相手とは、
これから捜そうとしていた・その人であったのだ。
「お前、大丈夫かよ!?ケガは?」
「大げさだよ、イノリ。怪我もしてないから」
慌てふためくイノリに向かって、苦笑しながら答える。
だが、当のイノリは納得のいかない様子である。
「けど、お前思いっきり吹っ飛んでたじゃん!」
「そりゃあ、自分が走ってたのが悪いんだから」
イノリが気にすることじゃないよ、とは続ける。
もう言いたいことがなかったわけではないが、
が意外にも頑固なことを知っているイノリは、
これ以上この話を続けることを断念した。
「それで、お前なんでそんなに走り回ってたんだ?」
実はずっと疑問に思っていたことを口にするイノリ。
そんな彼の問いに対し、も思い出したように答える。
「そうそう、イノリを呼んでこいって言われてたんだった」
わけが解らず首をかしげるイノリに、は付け足す。
「もうすぐラジオのリハーサルをやるから、
イノリをスタジオまで連れてこいってさ」
「りはー……何だって?」
「リハーサル!
ええと……事前の練習ってことかな」
今回の番組はあかねがプロデュースしたものだから、
早く行かないと怒られるよ。
そう言って、はイノリの手をとった。
「お、おい、!」
その繋がれた手に戸惑うイノリ。
だが、はイノリのそんな様子にも気付いていない。
普段から人一倍鋭いくせに、こういうとこ鈍いよな……
イノリはそんなことを考えたが、あえて黙っていた。
今はこのまま、繋がれた手をほどきたくないと思ったから。
「遅いよ、イノリくん!」
「ごめん、あかね!」
「悪りぃ!」
収録スタジオで待っていたあかねたちスタッフは、
待ちくたびれた様子で二人を迎え入れた。
「イノリ、今日もいつも通りの元気でお願いね」
「お、おう!任せとけよ!」
収録直前、小声でそう言ったに、イノリは自信満々で返した。
お前が元気にって、そう言うのなら、
オレはお前の言う通り元気にやり遂げるよ。
「じゃあ……残り5秒から行くよ!」
あかねのカウント後、ラジオの収録が開始された。
八月生まれへの指令:ラジオDJになりきれ
(お前の願いを叶えるのは いつだってオレでありたいから)
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遙か十周年記念企画、八月のイノリVer.でした!いかがでしたか?
ラジオDJもかなり趣味に走ってるんですがね^^;
八月のメンバーを見て、「これ絶対わいわいする職業だよね」
とか思ったのがDJになった始まりです(え
前回の小説家とか、そーゆーの絶対違うよね。うん。
イノリは映画で少将が言ってたけど、実は男前。好きです。
あたしは少し悩みを抱えている人が好きなのかも。
そうして、そういう人を諭したいのかも。
とか、謎なことを考えてます^^;
でも言ってあげないと気付けない人っているもんね。たくさん。
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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