〜そのまた隣の扉〜
そのまた隣の扉を開けた知盛と重衡は、通路のような場所に立っていた。
「ここは一体どういった場所なのでしょうか」
「さあな……」
周りを見回すが、人の姿も見当たらない。
これではの居場所を知る術も、全くない。
一体どうしたものか……と重衡が考え出したとき。
向こうの方から走ってくるの姿が目に入った。
「ごめーん、二人とも!」
慌てて走り寄ってくる。
そんなに慌てては、危ないのではないか……と
重衡が口にしようとした直後。
「わっ……!」
案の定、彼女の身体は前のめりになり、倒れそうになる。
このままでは転んでしまう、という思いからか、
はとっさに目をつぶった。
「……あれ?」
……だが、には痛みがなかった。
どういうことだろうかと、彼女が目を開けると。
「全く……お前は、世話の焼ける女だ」
「しかし、間に合ってようございましたね」
よく見ると、知盛の右手、そして重衡の左手で
は抱えられていたのだ。
きちんと立たせてもらい、は二人を見やる。
「ごめん……ありがとう」
普段から無茶をする彼女は、よく二人からも注意を受けていた。
だが、その上でのこの状況である。
それゆえか、は少々落ち込んでしまったようだ。
そんな彼女の心情を読み取ったのか、重衡はにこりと微笑む。
「様……本当にご無事でようござました」
「重衡……」
「あなたも反省していらっしゃるようなので、
私は、今回は何も言いませんよ」
「……!」
そう言った重衡を見て、驚いたような顔をした。
だが、次の瞬間には綺麗に笑ってありがとう、と返した。
「まあ、それに……
牡丹の姫様を受け止めるなんて、役得だろう?」
「ちょっ……知盛!」
知盛のその言葉に、赤面する。
そういうことを言うなと怒ってはいるが、
先ほどまでの落ち込んでいた彼女は、もう居なくなったようだ。
そのことに、二人は安堵していた。
「ところで、様。
何故先ほどはあのように慌てていらしたのですか?」
話を初めに戻す重衡。
その言葉を聞いて、がはっとなる。
「そうそう、さっき社長に呼ばれてお仕事の話してたの!
次に出演するドラマが決まったよ」
「そうでしたか、それは喜ばしいですね」
「うん!」
「ドラマ」という言葉は先ほど管理人の説明の中に出てきたため、
既に重衡ももちろん知盛も、意味は理解していた。
「知盛も同じドラマに出るんだからね?」
「クッ……めんどう、だな」
ドラマの話をずっと黙って聞いていた知盛は、
それが自分にも関係のあることだと知り、心底面倒そうな顔をする。
「兄上……我々は、こちらでは『俳優』として過ごさねばなりません。
どうぞそのようなことは、おっしゃらないでください」
でなければ様もお困りになります、と重衡は小声で言った。
「…………仕方ないな」
戦以外に興味のなさそうな知盛ではあるが、
の名前を出されると実は弱いのである。
もちろん重衡はそれを承知で、彼女の名前を強調して言ったのだ。
「ねえ、けっこう中身の濃いドラマだから、これから練習しない?」
この後の予定は空いてるし……と、
は手帳を取り出し、もう一度二人のスケジュールを確認する。
「……うん、やっぱり大丈夫。
ってことで、練習しよう!あたしも練習したいし」
「様も、ですか?」
「うん」
「あたしも」という言葉が、気になった重衡。
確か管理人の話では、は自分たちの世話役ということだったが……
知盛も同じことを考えたのか、
口には出さないがどこか怪訝そうな顔をしている。
「うん!今度のドラマ、あたしも出るの。ヒロイン役!」
そう言いながら、は台本の登場人物が載っているページを開き、知盛と重衡に見せた。
すると、確かにそこには自分たちの名前、さらにはの名前も載っていたのだった。
「あたしだって元々は演技する側だったんだもの。
二人には負けないよ!」
現役だからって、調子に乗ってると痛い目遭うよ!
と、はどこか挑戦的な、それでいて楽しそうにそう言い放った。
――――ああ、やはりこの人は、こいつは、こうでなければ。
自信満々のを見て、二人は思った。
「俺も……負けないぜ?」「私も負けませんよ」
九月生まれへの指令:俳優になりきれ
(いわば勝負だろう? 面白くなってきたな……)
(兄上、仕事だということを忘れないでくださいね)
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遙か十周年記念企画、九月の知盛&重衡Ver.でした!いかがでしたか?
正直、遙かシリーズの中で一番好きな重衡、
そして最近ほんと、すごく好きな知盛の二人なので
頑張って書きたかった……でも撃沈しました/(^o^)\
何だろう、やっぱ八葉じゃないから絆とかって
けっこう難しいキャラな気がするんですよね、個人的に。
でも、そんな中でEDを迎えていくっていうのが、なんか……
やりがいもあるし、色々と考えさせられるかも。
とにかく……あたし十六夜記まじ好きですよ!
銀ルートのお父さんのような泰衡も好き。(え
てか、もう……遙かが好きだ!!(何
今回、なんかさんも元女優みたいな設定でした。
どうせなら一緒に演技したいと思ったので。
(しかしながら演技までは書きませんでしたが)
たぶん、ドラマの内容としては、主役が双子で
ヒロインがそこに絡んでくるとか、そんなです。
……ちなみに、事務所の社長は将臣くんです(笑)
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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