〜その隣の扉〜










          「泰継さん、こんにちは!」



          その隣の扉を開けた泰継は、見慣れぬ邸の縁側に腰を下ろしていた。
          その状況を理解した直後……声は聞こえた。















          「……か」



          の姿を見つけた泰継は、その名をつぶやく。










          「すみません、勝手にお邪魔してしまって」

          「いや」



          気にしなくていい、と泰継は続けた。





          ……というのも、が勝手に邸に入ってきたことよりも、
          泰継には気になることがあったからだ。















          ――――この邸の扉には、結界が張ってある。
              私の意志なければ開かない……





          そのはずなのに。
          だが彼女は……は、自分で扉を開けて入ってきた。



          何故…………















          「あの、一応声は掛けたんですけど、
           泰継さんに聞こえなかったみたいですね……」



          困ったようにそう言った
          だが、そんな顔はしてほしくないと思ったのか、
          泰継はもう一度「気にしなくていい」と言った。















          「それより、何かあったか」



          了解を待たずして邸に上がりこむだなんて、
          そもそも普段のがすることではない。



          ……となると、何か重要な用でもあったのだろうか。
          泰継は、そんな考えに至った。















          「あ、別に、何かあったわけじゃないんです!」



          泰継の考えを読み取ったらしいが、慌てて訂正した。










          「ただ、ちょっと……
           今日はお仕事もお休みですし、泰継さんとゆっくりお話がしたいと思って」



          早く会いたくて、いてもたってもいられなくて
          勝手にお邸に入ってしまったんです、とは言った。















          「…………そうか」



          彼女のその言葉が、その行動が、嬉しいだなんて。
          自分はどうしてしまったのだろうか。





          そうも考えた泰継だが、
          考えれば考えるほど解らなくなる一方であった。















          「……泰継さんのお邸は自然がいっぱいあって、
           なんだか不思議ですよね。神秘的な感じがします」



          陰陽師の家系だからなんでしょうか、とは続けた。










          「……そうかもしれぬ」

          「ええっ!あてずっぽだったのに、本当なんですか!?」

          「ああ」



          予想が当たっちゃったんですね!と、は喜ぶ。















          「てか、今まで散々話しておいてアレなんですけど……
           今日はここでお話してていいですか?」



          ――何故嬉しいかだなんて、本当は解らなくてもいいのかもしれない。















          「…………ああ」



          ――ただ、お前の隣に居られれば、それでよい。





          泰継は、そう思った。




















          「話をするのもよいが、これの確認もしたい」



          そう言いながら泰継が手に取ったのは、
          彼が次回出演するドラマの台本だ。
          どこから取り出したのかは解らないが、とにかく、
          台本の読み合わせをしたいらしい。















          「って、やる気満々ですね、泰継さん!
           あたしもマネージャーとして頑張りますよ!!」



          掛け合いのところも一緒に練習しましょう、と言いながら
          は自分の荷物からもう一冊台本を取り出した。








































九月生まれへの指令:俳優になりきれ





(お前と共に居られるのなら 小さなことなど気にならない)








































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            遙か十周年記念企画、九月の泰継さんVer.でした!いかがでしたか?
            正直、泰明さんとの書き分けが…難しいです;
            でも泉水と割と初めから険悪な感じはあまりない気がする、泰継さん。
            一番平和だよね^^;

            この話の中で泰継さんのお邸に結界が張ってあるのは
            陰陽師だからですよ!別に小難しい理由はないです(え
            泰継さんの心に入ることが出来る彼女だから、
            お邸にも入れた、ということなんですね^^
            解りづらい……。

            とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!

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