の戦い方……
 なんか、舞ってるみてーだな』



そう言ったのは、万事屋の野郎だった。










そのときは成り行きで、俺と
野郎の三人で市中で暴れる攘夷志士を制圧しに向かい……





『土方さん、どうやらあの人がリーダーみたいです!』

『解った、あいつは俺がやる。
 お前らは周りのやつらに当たれ』

『はい!』


認めたくはねェが、万事屋の腕は本物だ。
そして、も……

総悟との手合わせで、実力が相当だということは
よく解っていた。


だから、何も疑問を持たずに任せた。










『……よし。
 こいつを捕えれば、あとはすぐ終わるだろう』


リーダー格の男を捕え、たちの方に目を向ける。

すると野郎は既に木刀をおさめていて……
が最後のやつを倒しているところだった。















『どうやら何事もなく終わったみてーだな』

『こんな奴らにやられっかよ。
 んなことより……』


そこまで言って、万事屋はの方に目を向ける。





の戦い方……
 なんか、舞ってるみてーだな』

『…………』


人とは異なる得物を使っているからだろう、
その動きも人とは全く異なっていた。

けど、確かに……

野郎と同じ考えってーのは癪だが、確かに。
戦っているはずなのに、舞ってるように見えた。





















「……土方さん?」

「あァ、いや……悪りィ」


いつの間に考え込んじまったのか、
の声に、すぐに返してやることが出来なかった。





「謝らないでください。
 それより、もしかして……お疲れなんですか?」

「……そうかもしれねーな。
 どっかの誰かさんが、見回りサボってんだからよ」

「あ……そういうことですね」


俺の冗談に、は笑った。
(いや、総悟のサボりは本気でどうにかしてほしいが)


……だが、そのおかげで偶然通りがかった
見回りを手伝ってくれることになった。

それについてだけは、総悟に感謝しておこうと思う。















「何か考え事ですか?」

「あん?」

「さっきずっと、黙り込んでいたので」

「…………」

自分で言うのもなんだが、
俺は自分から、ペラペラしゃべるようなタイプじゃねェ。


こいつと居るときも同じだ。

一緒に居られるのは確かに嬉しいが、
それで何か会話を続けようだとか、考えたことはない。


それでも、こいつは……

さっき黙り込んでいた俺が、いつもとは違うことを
理解しているんだと思う。



だからこその、さっきの問いだ。















「…………」


は、黙ったままこちらをじっと見つめてくる。

あまり真っ直ぐ見つめられると、それは照れるんだが……
どうやら、答えないと解放してはもらえないらしい。










「お前の……
 得物のことを、考えていた」


俺は目をそらしながら答える。





「あたしのフォークのこと、ですか?」

「あァ、いや……
 得物と、その戦い方か」


自分で言った通り、こいつの得物はフォークだ。


人とは違う得物を……

いや、そもそも得物になるのかすら疑問なものを、
得物として使っている。……使いこなしている。











「……前に万事屋の野郎と三人で、
 攘夷志士を制圧しに行ったことがあっただろう」

「ええと……
 その場に、一緒に居合わせてたときですよね」

「そうだ」










の戦い方……
 なんか、舞ってるみてーだな』











「野郎はお前の戦い方を見て、そう言ってた」

「銀さんが……」

「俺も、そう思う」


けど、俺は……
それと同時に、こうも思うんだ。





「お前は、戦いの中に居るような女じゃない」


出来ればそんなものとは無縁の世界で、
人に囲まれて笑っていてほしい。


――お前の剣には、俺がなるから。

だからお前は戦ったりなんかせず、
ただ俺の後ろに居てほしい。















「……ま、そんなこと言ったところで、
 お前はただ守られるのは嫌だって言うだろうが」

「土方さん……」


あたしのことよく解ってますね、と言って、
は微笑む。





「おっしゃる通り、ただ守られるだけなのは嫌です。
 大切な人を……守りきれないのも」


そう言いながら、どこか遠くを見るような目をする。










「でも、心配してくれてるんですよね。
 ありがとうございます、土方さん」

「いや……」


俺ァただ、自分の考えを押し付けただけだ。





「それでも、そう思ってくれるのは嬉しいし
 ありがたいと思いますから」

「……そーか」

「はい」


そう言って、また微笑んだ。


















「さてと……そろそろ見回りを再開しましょうか!」

「そーだな」


颯爽と歩き出したに続いて、俺も歩き出した。




















112.舞うがごとく戦う君


(その綺麗な姿をまた見たいと 思ってしまう俺も居る)