あたしが江戸にやってきた日の翌日。

          午前中は女中さんのお手伝いをしたり、
          退くんとしゃべったりしていた。


          そして、午後になって。
          約束通り、銀さんが迎えに来てくれたのだった。




















新たな暮らしが始まる日――第六話 惹かれる僕に気が付いた






























          「お姉、忘れ物は無い?」

          「うん、大丈夫(笑)
           もどんどん依頼してくれていいからね!」

          「……そうだね、そうしようかな」


          銀さんからの依頼を受けてはいるけれど、
          他にもいろんなお仕事をしてみたいしね。






          「……また、遊びに来てもいい?」


          これからは、いっぱい会えるよね……。






          「……がいなかったら、近藤さんかトシ、
           総悟辺りに相手してもらいな」

          「うん!」















          「よォーし、そろそろ行くぞ、

          「はーい! ……と、ちょっと待って銀さん」

          「ん?」



          たたっ






          「近藤さん、これどうぞ!」

          「ん? 名刺……?」

          「あたし、銀さんとおんなじ万事屋やってるんです。
           いつでもどうぞ!」

          「あァ、そーゆーことか(笑) じゃ、今度お願いするからな!」

          「はい!」


          少しでもアピールしとかないとね(笑)






          「総悟くんもどうぞ!」

          「あ……ありがとうございやす」


          たたっ






          「はい、土方さんもどうぞ!」

          「あァ……」

          「あたし、調査みたいなことも得意ですから
           いつでも依頼して下さいね」

          「…………考えとく」


          よし……






          「じゃあ行こっか、銀さん!」

          「おう」


          そうしてあたしは、真選組の屯所を後にした。




















          「…………」




          「……ん?」


          トシの奴、ずっとお姉の名刺を見てるな……



          『いや、無い。それは無いよ』




          オイオイ、まさか……
          あの予想がホントに的中しちゃったんじゃ……。








          「トシ〜、そろそろ中に入るぞォ〜」

          「あっ、あァ……」





          「…………はァ」


          後で探ってみるか……。

























          「よし……」


          途中で焼き肉の材料も買ったし……
          準備オッケーだよね!





          「……なんでガッツポーズしてんのか解んねェけど、
           あんま気負う必要ねーからアイツらバカだし」

          「頑張らなくちゃ!」

          「ってオーイ、ちゃん? 聞いてる?」


          もちろんだよ!






          「…………何も心配いらねェからな」

          「うんっ……」



          ガララッ







          「あっ、銀ちゃん、お帰りアル!」

          「その人がさんですか?」

          「おー」


          この二人が神楽ちゃんと新八くん……






          「はっ、初めまして、です!」

          「僕は志村新八です」

          「神楽ヨ」

          「う、うん……こ、これからよろしくね!」


          良かった、大丈夫そう……かな?






          「そ、それでね! 今夜は焼き肉にしようと思って。
           材料も買ってきたんだけど……いいかな?」

          「「…………」」


          あっ、あれ!? 何故か沈黙が……















          「焼き肉ですか!? すごい!!」

          「そんなの久しぶりヨー! 楽しみネ!
           は太っ腹アルな!」

          「そっ、そうかな?」

          「僕、嬉しいです!」


          どうやら喜んでもらえたみたい……良かった〜……。
          (そしてミハルのアドバイスは的確だったなぁ……)


          その後は、新八くんや神楽ちゃんとたくさんおしゃべりをして
          夕飯までの時間を過ごした。


























          「………………」



          『えっ、すみません! じゃあ、もうこの話はやめます!!』



          本当に、変な女だったな……







          「トシ、入るぞ」


          シャッ






          「……何か用か?」

          「ちょっと聞きたいんだけど。
           (的にはハッキリさせときたいし……)」

          「……?」

          「トシ、もしかして……お姉にホレた?」

          「…………は?」


          何言ってんだよ、コイツは……






          「……あり得ねェだろ」

          「本当に?」


          俺が? あの女に?
          ……いや、無ェよそれは。




         『いか……ないでっ…………』





          あの時、俺は……アイツを助けてやりたいと、
          いつの間にかそう思っていた。



          『いつ折れるとも知れねェ刀だな…………』



          そうは言いながらも、俺はその刀に確かに惹かれてはいる。
          だが……


          惚れてる、のか……?

















          『はい、土方さんもどうぞ!』



          ……まァ、確かにあんな人間がそばにいればいいだろうな。
          支えになってくれるだろうし、……







          『置いてかないで…………』



          俺も……支えになってやりたい…………


          ……って、
俺は何考えてんだ!?










          「……なに赤くなってんだよ、ムッツリ」

          
「赤くなってねェェ!!」

          「なってるだろ。(つーか、これで決まりだなァ、オイ……)」





          「(銀時に続き、トシまでも……って感じ?)」





          ちくしょう……コイツの言う通りなのかよ……。















          「…………なァ」

          「ん〜?」

          「どうしたら会えるんだろうな……」

          「お姉に? そりゃアレだろ」

          「……?」


          何だ……?





          「依頼だよ、依頼」

          「……!」



          『あたし、調査みたいなことも得意ですから
           いつでも依頼して下さいね』




          そうか……







          「そうだな……」

          「(えっ、マジで依頼すんの?
            お姉のこと警戒してたんじゃ……って、今はホレてるのか。)」


          のアドバイスも、たまには役に立つな……


          そう思いながら、俺はあの女が置いていった一枚の名刺に
          再び目を向けた。




















          To Be Continued...「エピローグ