あの後、勝真さんと一緒に紫姫の館から帰ってきたんだけど……
ちょっと気になることがある。
さっき、ぬえ塚で怨霊を退治したとき………
『フフ……百年前の牡丹の姫と、同じ瞳をしている。
やはり戦向きのようだ』
アクラムが言っていたこと……。
アイツは百年前の……
あかねちゃんが神子だったとき牡丹の姫だった人と、会ってるんだよね?
まあ、アクラムはあのときから登場していたし
おかしな話では無いのだけれど……。
「けど、直接会ってるってことは、すごく貴重だよね……」
星の一族に伝わっている資料にも、図書寮に収納されていた資料にも、
あたしが知っている以上のことは書いてなかった。
牡丹の姫に会ったアクラム……
「問い出せば、何か解るかもしれない」
でも、何処にいるんだろ……。
――そのとき、何度か聞いているあの音がした。
「……」
あたしを……呼んでる……?
「まさか……」
…………。
…………。
「あー、もう! 考えてても仕方ない!!」
行動あるのみよ!!
「すぐ戻ってくるから、黙って出てっても平気だよね……?」
そんなわけで、行ってきまーす!!
うーん……
「こっちの方だと思うんだけどな……」
鈴の音に従ってやってきたけど、
本当にあの仮面に会えるのかな………?
「フフ……」
「……!」
この声は……!
「アクラム……」
やっぱり、鈴の音はあたしを案内してくれてたんだ……
でも……
「……なんでここにいるの?」
こんな、何の変哲もない場所に……。
「私を呼んだのはお前であろう? だから来てやったまでだ」
「…………」
「不服か?」
あー! コイツ絶対あたしのことバカにしてる!!
すげームカつくんですけど!?
いや、でもここで怒ったらあたしの負けだ!
ここは冷静に行くのよ、!!
「……アンタに聞きたいことがある」
「何だ、牡丹の姫よ」
“牡丹の姫”…………
「アクラム……百年前の牡丹の姫について、聞きたい」
牡丹の姫について、少しでも多くの情報が欲しいから……。
「フフフ……私が素直に答えると思うか?」
「思わない、だから、」
だから、力ずくで答えさせる!!
「牡丹乱舞!!」
ビュオオオオ……!!
あたしが術を放った直後、アクラムはその場から姿を消した。
「……!」
どこ……!?
「フフフ……あまりいい選択では無かったが、
その心意気に免じて答えてやろう」
「……!」
本当……!?
「百年前の牡丹の姫も、戦闘向きの娘だった。
武器も、お前と同じ扇であったな」
「武器も同じ……」
「ただ、あの者は神子と同じ世界から召喚されたようだ」
「……!」
百年前の牡丹の姫は、あかねちゃんと同じ世界の子……?
「他には……他には何か無いの?」
「これ以上答える義理は無い」
「待ちなさい!!」
「牡丹の姫よ……
足掻け。足掻くことで己を磨くのだ」
「え……?」
何を言ってるの……?
「また会うときを楽しみにしている」
「ちょっと、アクラム!!」
あたしの制止も気にせずに、アクラムはそのまま立ち去った。
「逃げられた……」
結局、あんまりいい情報は得られなかったな……
けど……
「アイツが何を考えているにしろ、それを阻止しなきゃいけない」
……ん?
「ちょっと、待って…………」
アクラムは“牡丹の姫”を知ってた。
でもシリンは知らないって言ってた。
「どういうこと……?」
百年の間に何かあったの? それとも……
「別の何かが……作用している……?」
解らない。
どちらにしろ、今は用心しておくしかないね……
「…………帰ろう」
勝真さんに見つかったら大変だし、ね……。
「…………」
「? どうかしたのか?」
「あ、勝真さん……」
良かった、出掛けてたことはバレてないみたいだ……。
「何でもないですよ」
「そうか? なら、いいが……」
嘘ついてごめんなさい、勝真さん。
でも、余計な心配はかけたくないの……。
「ねぇ、勝真さん?」
「何だ?」
「あたし、“牡丹の姫”として頑張りますね!」
大切なあなたの住むこの京を、
頑張っているあの子が守ろうとしているこの世界を、
そして、大切なあなたが居るこの場所を……
あたしも、自分の意志で守りたいと思うから。
「……まぁ、でも頑張りすぎるなよ」
「はい!」
頑張りすぎずに、でも、精いっぱい頑張ります!
それが、今のあたしに出来ることだから。
戻る