帝にかけられた呪詛を祓ったことで、
          最終的に帝側の八葉も花梨ちゃんを神子として認めてくれた。

          彰紋くんも帝に花梨ちゃんの活躍を話してくれるって言ってたから、
          きっと、花梨ちゃんが神子として活動しやすくなるよね。










          「、起きてるか?」

          「あ、はい……おはようございます、勝真さん」


          あたしが身支度を整えたところで、
          勝真さんが部屋を訪ねてきた。





          「どうかしたんですか?」

          「あぁ、花梨からお前に文が届いてるぜ」

          「花梨ちゃんから?」


          また何か解ったことが書いてあったりするのかな?





          「わざわざありがとうございます、勝真さん!」

          「いや、気にしなくていい。俺にも関係あることなら、
           お前が読んだ後で教えてもらおうと思ってな。
           だから俺が持ってきたんだ」


          そうだったんだ……。





          「とにかく、読んでみますね」

          「そうしてくれ」


          えーっと……






          
さんへ

            昨日はお疲れ様でした! さんや勝真さんの助けもあって、
            帝を呪っていた怨霊を退治することが出来ました。

            それで、昨日また紫姫に色々と教えてもらったので、
            お手紙で報告しておきますね。



            まず、……”
















          「なるほど……」

          「なんて書いてあったんだ?」

          「はい、花梨ちゃんがまた紫姫に教わったことを、
           いろいろ書いてくれてます」




          
“まず、神子には『封印』という力があるということです。
           この力があれば、怨霊が復活することがないらしいんですが、
           今の私には、まだそれが備わっていないみたいで……”





          封印、か……。
          舞一夜で出てきたから、なんとなくは解るよね。







          「龍神の神子には、“封印”という力が備わっているんです」

          「封印……?」

          「はい、怨霊を完全に鎮めて浄化します。
           封印をすれば、怨霊が復活することは無くなるんです」

          「そうか……それはいいな」


          舞一夜のあかねちゃんは、
          割と初めから封印する力を持っていたよね。

          おそらく、もともと大きな力を持っていたからだ。
          だけど……





          「だけど、今の花梨ちゃんには、
           その力がまだ備わっていないらしいんです」

          「備わってない、だと? どういうことだ?」

          「詳しくは紫姫も花梨ちゃんも解らないみたいです。
           残っている資料には、その時が来れば備わる……って感じで
           書かれているみたいで」

          「そうか……」


          だけど、おそらく封印する力は花梨ちゃんにも備わると思う。
          ……勘でしか、ないけれどね。

          だけど、その勘が確信に近いことを、あたしは知っている。
          おそらく、これもまた、牡丹の姫の力でもあるのだろう……。



          
“それから、さん……ちょっと気になることがあって……”






          「勝真さん?」

          「ん?」

          「これも花梨ちゃんからの文に書いてあったんですが……」

          「……?」



          
“紫姫と深苑くんが、その……ちょっとケンカしちゃって”







          「紫姫と深苑が、ちょっとした言い合いをしたみたいです」

          「あの二人がか? 珍しいな」

          「ですよねー……」



          
“まあ、本当にちょっとしたケンカなので、
           そんなに心配ないと思うんですが……”







          「とにかく、深苑のことも気にした方がいいかもしれません」

          「そうだな」

          「きっと、深苑も自分なりに頑張っているんだと思うんですけど」


          紫姫のことを大切に想っているし……





          「ただ、その方法が空回りしないか、見ていてあげないと」

          「……お前の言う通りだと思うぜ、


          あんまり口出ししてもややこしくなるだろうし……
          深苑が妙な行動に出るまでは、見守るしかないのかな……。












          「……と、花梨ちゃんからの文はこんなところですね」

          「他にも何か書いてあるのか?」

          「これ以上は秘密ですよ(笑)」

          「なんだよ、それ」


          だって、秘密なものは秘密だからね。




          
“あ、それと……この間、泉水さんと一緒に出掛けたんですよ!
           そのときの話も後でしましょうね!”




          可愛いなぁ、花梨ちゃん。






          
さんのことも、教えてくださいね(笑)”



          そして抜け目ないな、花梨ちゃん……。














          「ところで……お前、今日はどうするつもりだ?」

          「今日ですか? 
           今日はゆっくりしたいのでお庭で日なたぼっこでもしようかなって」


          いや、たまにはこういうのも必要だと思ってさ……
          (なんで日なたぼっこなんだよ、とつっこまれそうなところだけどね……)





          「いいんじゃないのか? 
           この間また新しい花を植えたって女房たちが言ってたから、
           庭を見たりするのもいいと思う」

          「わあ、本当ですか!?」


          楽しみ〜!






          「ま、でも1日中ゴロゴロしているのもアレなんで、
           お昼まではこの近くを散歩してくるつもりです」

          「そうか……俺も一緒に行けるが、どうする?
           一人で行くか?」

          「え……?」


          どういうこと……?





          「俺としては、お前を一人で外出させるのは心配だから
          、一緒に行きたい。
           だが、お前だってたまには一人になりたいだろ?」

          「あ……」


          勝真さん、あたしに気を遣ってくれたんだ……

          確かに一人になりたいきもあるけど……
          でも、今は違うから。











          「たまには一人もいいかなって思うけど、
           やっぱりあたしは勝真さんと一緒に行きたいです」


          あんまり考えないようにしていたけれど、
          いつかあたしがこの世界を去るときが来ると思うんだ。

          そのときまで、あたしはなるべくこの人と一緒にいたいから……。





          「勝真さんが嫌じゃなかったら、一緒に来てほしいです」

          「……嫌なんかじゃないさ。じゃあ、行くか」

          「はいっ!」


          でも、今からしんみりなんてしてられないよね。
          あたしがこの世界を去るのは、この世界を救ってからだよ。






          「ねっ!」







勝真さんにもらった扇に、あたしは同意を求めるように微笑みかけた。



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