『風早っ……あたし、風早のこと好きなの!』
『俺ものこと、好きですよ』
『本当!?』
『本当です』
やったぁ、これで両想いだ……
…………と思ったのも、ほんのつかの間でした……。
「何なの、風早ったら……」
もう頭にくるー!
「……おや、ではないですか。どうしました、このような所で」
「柊……」
「確か、今日は天気がいいから風早と出かけるのだと
あれほど楽しみにしていたではないですか」
「うん……」
そうなんだけど……
「ちょっと柊、聞いてくれる!?」
思い出したらまた頭にきた!
「…………まぁ、いいでしょう。
この手の話は、道臣や忍人では荷が重いでしょうし」
「羽張彦も一ノ姫様のところに行ってていないしね〜」
あー、
好きな人と一緒にいられるなんて羨ましすぎる、羽張彦!!
「それで? 今日は何故出かけないことになったんです?」
「それがね……」
柊が淹れてくれたお茶を飲みながら、
あたしは先ほどの会話を思い出した。
『風早ー!』
『あ、』
『ねぇ、今日は天気がいいから一緒に出かけない?』
朝起きたら、今日はとってもいい天気だった。
だから、風早を誘って出かけようとしたの。
(朝一でたまたま柊に会ったから、
そう考えてることも少し話してたんだよね。)
『あ……すみません、。
今日はニノ姫と湖に行く約束なんです』
『え……ニノ姫様と?』
『はい……。この間絵本で見たような湖に行きたいようで……
だから、今日そこに行くことになってるんです』
『そう、なんだ……』
前々から約束してたんだよね……
だったら仕方ないか…………
『…………解った、じゃあ、また今度ね』
『はい……すみません、』
『いいのいいの。 それじゃ、気をつけて行ってきてね』
『ありがとうございます』
「それであなたは身を引いたわけですか」
「だって仕方ないじゃない、
前々から約束してたみたいだし。だけど……」
だけどさ……
「やっぱりなんか頭にくるよね!
風早ったら、いっつもいっつもニノ姫様につきっきりで、
あたしの相手なんか全然してくれないじゃない!!」
「が素直に引くからですよ」
「だってニノ姫様はまだ小さいし、風早がいなかったら心細いじゃない!
あたしは、もうそんな年齢でもないし、我慢しなくちゃ……」
そう、我慢しなくちゃって……
頭では解ってるんだよ…………
「でも……やっぱり淋しい…………」
「…………」
「ねぇ、柊……風早って、
本当にあたしのこと好きなのかなぁ…………?」
「…………」
確かに好きって言ってくれたけど……
「それって……
あたしの“好き”とは違う“好き”じゃないかなぁ…………」
両想いでも何でもないのかもしれない…………
「もう……
こんなことなら、好きなんて言わなければ、良かった…………」
そうすれば……こんな想い、しなかった、の、に…………
…………
「ん……すぅ…………」
「…………ふふっ、ぐっすり眠ってくれたようですね」
「柊……に何をしたんですか?」
「心配はいりませんよ、ちょっとした睡眠薬ですから。
別に危ないものでも何でもないです」
「そう、ですか……」
それならひとまずは、安心か……。
「それより……自分が愚痴をこぼしている間、ずっとあなたが
後ろに立っていたと知ったら、はどう思いますかねぇ、風早?」
「…………本当にあなたは意地の悪い人ですね、柊」
「今さら何を言っているんですか」
「…………」
……確かに今さらな事です。
「まぁ、冗談はこれくらいにして」
「……?」
「きちんとに言ってあげるんですよ、あなたの気持ちを」
「…………解ってますよ」
「では、私は失礼します。
風早、が起きるまでついててあげて下さいね」
「はい」
そう言って柊はこの場を去ろうとした、が。
一度立ち止まり、振り返って言った。
「…………それと、」
「……?」
「次にに淋しい想いをさせたら、
私は本気でを頂きに参りますから」
「……! ……肝に銘じておきます」
やはり柊も……のこと本気だったんですね……。
「…………」
すみません、淋しい想いをさせてしまって…………
「だけど、俺は…………」
……俺は…………
――………………――――
「ん…………」
だ、れ…………?
「ん……?」
「あ、目が覚めました?」
「ん……かざ、はや…………?」
「はい」
なん、で……?
「すみません、……」
「……?」
「淋しい想いをさせてしまいましたね」
え……?
「なんで、知って……」
「…………すみません、あなたが柊に愚痴をこぼしているとき、
俺はずっとあなたの後ろにいたんですよ」
「…………」
…………
…………
「ええっ!? 嘘っ!!」
「本当です」
ってことは柊、知ってたのに何も言ってくれなかったんだ……!
(全くもう〜!)
「俺は……あなたのことを、一人の女性として愛しています」
「……!」
「いつもあなたの誘いを断ってばかりで……酷い男ですよね。
でも、信じてください、……
俺が好きなのは……あなたなんです…………」
風早…………
「…………風早は酷い男なんかじゃないよ」
「ですが、」
「風早はとっても優しい人だよ。
じゃなかったら、好きになったりしないもの」
「…………」
だからあなたに惹かれたんだと思うよ。
「……でも、たまにはあたしにもかまってね?」
「ええ、が嫌がるくらいに一緒にいますよ」
「何それ、羽張彦にからかわれちゃうじゃない」
「その後に羽張彦のことをからかえばいいんです」
ええっ、そんなものなのかな……?
「…………ま、いっか」
「、今から散歩しませんか?」
「え?」
「今日は天気がいいですからね」
「……! うんっ!」
やっぱりあなたのことが大好きだよ。
一緒にいるこの時空を
(あたしはあなたと 生きてゆきたい)
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風早夢でしたー! いかがだったでしょうか??
風早のいいところは、一人称が「俺」なのに敬語で、
敬語なのに神子のことは呼び捨てのところです。
……萌え!(何