「どうして、」


なぜ彼がここに居るのだろう。
もう、屯所からかなり離れたはずなのに。










「探しましたぜ、


私はすでに除隊した身だ。
そんな奴を、わざわざ追ってくるなんて……。





「なんで……」

「……?」

「なんで……追いかけてきたの?」


あなたに迷惑をかけたくなくて、ここまで来たのに……





が黙って出て行ったからですぜィ」

「除隊届は、近藤さんの机の上に置いてきたよ」

「でも俺は聞いてやせん」

「……」


確かに総悟くんは、
一番隊を任された上の立場にいる人だけど……

私は、一番隊には所属していない。


除隊のことは、局長の近藤さんか
副長の土方さんに言えばいいはずなのに。





「俺に言う必要はない、っていう顔ですねィ」

「……そんな顔してる?」

「ええ」


総悟くんの考えが分からなくて、動揺してる。

ポーカーフェイスは割と得意なはずなのに、
今は全く冷静になれない。










「どうして除隊なんかしようと思ったんです?」

「……足手まといだから」


次の言葉を探していた私に、総悟くんが先に声を掛けてきた。


素直に話すべきか、迷いつつも……

この人相手にごまかしは効かないと悟って、
考えていることを少しずつ話し始める。





「足手まとい?」

「だって私、自分の身も護れないのに……」


それで、真選組隊士だなんて……おかしいでしょう?





「この間、土方さんにかばってもらったことですかィ?」

「そう」


自分の身も満足に護れない私は、真選組にいても迷惑なだけ。





「だから除隊したの」

「……」

「それで、真選組にとっても煩わしい奴が減って
 結果的に良かったでしょ?」


誰も困ることなんてないはず。










は……
 俺たちと一緒にいるのが嫌ですかィ?」


そう言った総悟くんの顔が、すごく悲しそうで……





「……嫌なんかじゃない」


珍しい表情にひるんでしまって、私は馬鹿正直に答えてしまう。





「嫌なんかじゃない、私は真選組が大好きだよ」


そんなの当たり前じゃない。





「でも……それでも……!」

「迷惑だと?」

「そうだよ!」


だから私は除隊したの。

あの場所は大好きだけど……
これ以上、迷惑なんてかけたくないから。










「そういうことなら、俺は許しませんぜ」

「えっ?」

「除隊なんて、俺は許さない」

「総悟、くん……?」


何を言ってるの?

許さないって……
どうしてあなたが、そんなことを決めるの?






「俺はのことが好きだから」

「……!」

「だから一緒にいたい。除隊なんて許すもんか」

「総悟くん……」


瞳孔が開いていた。


総悟くんは本気になったときに、よくこの瞳をする。
ということは……

本気で、私の除隊を許すつもりがないんだ。










を護って死ぬなら本望でさァ」

「総悟くん……」


どうして……
どうして、そんな嬉しいこと言ってくれるの?





「そんなこと言われたら……
 離れられなくなっちゃうじゃない……」


本当は、ずっと真選組にいたい。

それでも除隊したのは……
これ以上、足手まといになりたくなかったからだ。

真選組が、大好きだからこそ。





「私だって、もっと……みんなと一緒に居たい……」


総悟くんも真選組も、本当に本当に大好きだから……。










「……俺と真選組、どっちの方が好きですかィ?」


そんなの……





「決まってるじゃない……総悟くんだよ……」


私がそう言うと、総悟くんは満足そうに笑った。





、帰りやしょう。
 俺たちの真選組(ばしょ)に」

「うん……」


せっかく決意して出てきたというのに、
差し出されたその手を、迷わず取ってしまった。





「……ごめんなさい」


また迷惑をかけるかもしれないけど、
やっぱり私は、真選組が大好きだから――……















「どうしたんだ、いきなり除隊なんて!
 お父さんは心配したぞ!!」

「いや、誰がお父さんなんだよ、近藤さん」

ちゃんがいなくなったら、
 ミントンする相手がいなくなっちゃいますよ!!」


屯所に戻ってみると。

もうかなり遅い時間だったというのに、
みんなが温かく出迎えてくれた。





「足手まといと思うやつを、普通こんなに気にしますかねィ?」

「……ううん、しないと思う!」


みんな、ありがとう。


これからは、みんなを護るために……

総悟くんを護るために、もっともっと頑張ります。
足手まといにならないように。





「ありがとう、総悟くん」


あなたがいてくれて、本当に良かった――……




















いや、俺は護られたいんじゃなくて護りたいんで


(と思ったけど、とりあえず黙っておきまさァ)















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総悟くん夢、修正しました。

けっこう、ありがち展開かもしれませんが……
あの人たちと居ると、どんなに優秀な隊士でも
自信をなくすこともありそうだなと思いました。