「やぁ、姫君、おはよう」
「おはよう、ヒノエくん」
「今日も朝から可愛いね」
「なっ、何言ってるの、もう!」
「ふふっ」
「うーん……」
「おや、さん。どうしました?」
「あ、弁慶様!」
私が少し考え込んでいると、弁慶様が現れた。
「おはようございます、弁慶様!」
「ええ、おはようございます。
……それで、何やら考え込んでいたようですが?」
さすが弁慶様……鋭いなぁ………。
「そうなんです。ヒノエ様ってすごいなぁ、って思ってたんですよ!」
「ヒノエが……?」
「はい! だって、何でも持っている気がして」
欲しい物は何だって手に入るのかもしれない!
「どうしてそう思ったんですか?」
「うーん……まず、熊野別当っていう肩書きも持ってるし……
まぁ、ヒノエ様が権力を欲しているのかは別としてですね」
「ええ」
「あとは、信頼できる仲間もいっぱいいるし、
素敵なお父様もいらっしゃるし……」
他にも色々あるよね……
「……あ! あと、弁慶様が叔父様っていうのも羨ましいです!」
「ふふ、そうですか?」
「はい! だって、弁慶様は医学に精通していらっしゃるから……
お近くにいればお勉強も出来ますよね!」
本当に専門的なことは無理かもしれないけれど……
一通りのことだったら、私でも覚えられると思うし。
「そう言ってもらえると、嬉しいですね」
「えへへ!
あ、あと、可愛らしい神子様がお近くにいることもですね」
「望美さんが?」
「はい! 好きな人が近くにいるなんて、素敵ですよね!」
私はまだ好きな人はいないけれど……
いつか出来たら、一緒にいたいと思うなぁ。
「望美さんが……ヒノエの好きな女性だと?」
「はい! ……違うんですか?」
「うーん、困ったな……」
え、私、何か勘違いしてたのかな……!?
「僕の口から言ってしまうのは……ね。
後でヒノエに直接聞いてみるといいですよ」
「そう……ですか? じゃあ、そうします」
何だかよく解らないけれど、後でお聞きしてみよう!
「ところでさん」
「はい?」
「僕でよければ、医学ならいつでも教えますよ」
「わぁっ、本当ですか!?」
ちゃんと覚えれば、私に出来ることが増えるかも!
「ええ。ただし、この戦が終わるまでは無理かもしれませんが……」
「それで充分です! お願いしますっ!!」
「ふふ、解りました。では、戦が終わったあとで教えましょう」
「はい! 約束ですよ!」
やったー!
「ふーん……」
「ヒノエくん?どうかしたの?」
「……ちょっとね」
「あ……もしかして、ちゃんが心配?」
「えっ……?」
「……?
だって、ヒノエくんはちゃんのことが好きなんでしょう?」
「……参ったね。姫君には全てお見通し、ってことかな」
「ふふ、そんな感じかな☆(前の時空でもそうだったし、ね……)」
「ちゃん、なんか弁慶さんと楽しそうにしゃべってるし、
心配なら行ってきた方がいいと思うよ」
「そうだね……今日は神子姫様の御前を失礼させてもらおうかな」
「私、ヒノエくんの味方だからね! 弁慶さんに負けちゃダメだよ!」
「ふふっ……ありがとう、望美」
タタッ
「……おや?」
「どうしましたか、弁慶様……
……あ、ヒノエ様!」
「やぁ、」
「おはようございます!」
神子様とのお話は、もういいのかな……?
「弁慶と楽しそうに何を話していたんだい?」
「聞いてください、ヒノエ様!
弁慶様が医学を教えてくださるんです!」
「へぇ……」
「これで、私ももっとヒノエ様のお役に立てますね!」
「……! 参ったね……」
……?
ヒノエ様、どうかされたのかな……?
「ヒノエ様……?」
「……なんでもないよ」
「そうですか……?」
それなら、いいのだけれど……。
「……あ、そうだ、ヒノエ様!」
「何だい、」
「ヒノエ様の好きな方って神子様ですよね?」
「え……」
「違うのですか?」
「くくっ……」
「……おい、笑ってんじゃねーよ、弁慶」
え? 何??
「……、俺が好きなのは神子姫様じゃないよ」
「ええっ! そうなのですか!?」
「………ああ、違うよ」
「くくくっ……」
「いい加減にしろよ、オジサン」
「す、すみません、ヒノエ……くくっ……」
弁慶様、何がそんなにおかしいのかなぁ……。
「なぁ、」
「はい?」
「は好きな奴はいないのかい?」
「私ですか? 私はいません」
「そう……(けっこう攻めてたつもりなんだけど、ね……)」
でも、やっぱりいつか誰かを好きになるのかなぁ……
「とにかく、ヒノエ様の好きな女性は神子様ではないのですね」
「ああ、そうだよ」
「そうですか……じゃあ、今度こそ当てますね!」
「……ま、頑張りな」
「はい!」
でも、“いない”とはおしゃってないし、
やっぱり好きな女性がいらっしゃるんだよね!
「頭領ーー!!」
「あ、水軍の方がお呼びですよ、ヒノエ様!」
「(間の悪い奴だな……)また後で寄るよ、」
「はい! お待ちしておりますね!」
「じゃあね」
タタッ
ヒノエ様もお忙しい方だなぁ……。
「……はぁ、なかなか楽しいものを見せて頂きました」
「弁慶様……そんなに笑ってしまうほどのことでした?」
「ええ、充分」
結局、弁慶様はあれからしばらく笑っていたのだけれど……
別に何も面白いことは言ってないよね?
「ところで、さん」
「はい」
「さんは何故、ヒノエの役に立ちたいと思ったのですか?」
「はい……
大したことが出来ない私にも、ヒノエ様はよくしてくださって……
それがとても嬉しいのです。
だから、せめて何かお役に立って恩返ししようと……」
微々たるものしか出来ないけれど、
それでも「ありがとう」と言ってくださったときは嬉しかったな……。
「ヒノエ様に“ありがとう”って言って頂けると、
なんだか心が温かくなるのです。
またそう言って頂きたくて、私も頑張ろうと思えるのですよ」
「そうですか……ヒノエも喜びますよ、さん」
「そうだといいなって思います!」
「! ちょっと手伝ってくれないかい?」
「はい、ヒノエ様!
……弁慶様、私は少し失礼しますね!」
「ええ、いってらっしゃい」
たたたっ
「……ふふ。さん、あなたが自分の気持ちに気付くのは、
そう遠くないと思いますよ……」
良かったですね、ヒノエ。
僕も影ながら応援していますよ。
苦悩の日々はもうすぐ終焉を迎える
(そのとき 彼女は自分の想いを 彼に告げるだろう)
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お初なヒノエ夢でした! いかがだったでしょうか?
天然ヒロインちゃんを目指してみました^^