「銀さん、銀さん!」

          「んー? どうした、

          「ちょっとお願いがあるんだ!」


          とある日。

          あたしは少し早めに起きて、
          銀さんにとあるお願いをした。















思い出のアルバムを心に――第一話 あなたにありがとうを
























          「えーと……」


          けっこう朝早いけど、土方さん電話出てくれるかな?





          「…………もしもし」


          あっ、出てくれた!





          「おはようございます、土方さん!
          です」

          「ああ……」

          「朝早くからすみません」


          何だか声が不機嫌っぽいけど……
          もしかして、寝てたのに起こしちゃったとか……?










          「ご、ごめんなさい、土方さん!!」

          「は? 何だよ、いきなり」

          「え、あの……起こしちゃったのかと思って……」


          あたしがそう言うと、電話の向こうからため息が聞こえた。





          「…………別に寝起きじゃねェよ。
          怒ってるわけでもねーし」

          「そ、そうですか、良かった!」


          確かに今の声の感じだと、怒ってなさそう……。









          「それで土方さん……本題なんですが」

          「あァ」

          「ちょっと聞きたいことと、お願いがあるんです」
 
          「何だ?」
  

          そう問われたあたしは、詳しいことを説明し始めた。



















          「ふあ……なんか眠い。見回りもめんどいし。
           ここいらでちょっとサボるか、総悟」


          トシと一緒に見回りする日だと、
          こんなこと言った瞬間に怒鳴られる。

          だけど今日は幸い(?)総悟とペアを組んでの見回り。

          総悟とは割と考えとかも合うから、
          この案にも乗ってくれるだろうと思ってたんだけど。





          「そうですねィ……まァサボりも捨てがたいですが」


          今日は真面目にやってみても、いーんじゃないですかィ?





          「え?」


          まさか、総悟の口から
          「真面目に」という言葉が出てくるとは……。

          そんなどーでもいいことに驚きつつ、
          は総悟の言葉の続きを待つ。





          「たまに真面目にやることで、
          土方さんをびっくりさせるって寸法ですぜ」

          「あァ、なるほど」


          そういう考えもあったか。

          素直にそう思ったため、
          今日はサボらないで見回りを続けることにした。
















          「オイ……サボり二人組のことだから、
           そろそろ見回りから帰ってくるかもしれねーぞ」

          「えっ、ほんとですか?」


          ばたばたと走り回っていると、
          土方さんがそんなことを言ってきた。





          「でも、総悟くんに時間稼ぎをお願いしているし……
           まだ大丈夫じゃないでしょうか」

          「どうだかな」


          あたしの言葉に対し、土方さんはきっぱりそう答えた。





          「えーと……
          じゃあ、ちょっと総悟くんに連絡してみます」

          「あァ、そうしてくれ。
           俺が言ってもあいつは聞かねェだろうからな」


          そんなことを言いながら、
          土方さんは引き続き準備をしてくれる。


          まさかとは思うけど、土方さんが忠告してくれたし……

          様子を探る意味も含めて、
          ちょっと総悟くんに連絡してみよう。









          「オーイ、
           沖田くん、何だって?」

          「あ、銀さん。
           うん、なんとか引き続き時間稼ぎしてくれるって」

          「そっか。
           じゃ、こっちも本気で終わらせないとな」

          「うん!」


          総悟くんが頑張ってくれてるんだもの、あたしも負けないよ。





         「あと少しだし、頑張ろう!
          せっかくのパーティだもの」

         「……そうだな」


         あたしの言葉に、銀さんも少し笑ってそう答えたくれた。

















          「…………そろそろいいですかねィ」

          「ん? 何か言ったか、総悟」

          「いえ、何でも」


          何やら総悟が企んでいる気がしたが、まあ、いいか。
          気にしてもめんどいことになりそうだしな。





          「やっぱり真面目にやるってのも、疲れますねィ。
           そろそろ帰りましょうぜィ」

          「あァ、そうだな」


          やっぱり「真面目」なんて、うちらとは合わない言葉だ。
          そんなことを思いながら、屯所への道を歩き出した。
















          「いま総悟くんから連絡あったんですが、
           これから二人で屯所に帰ってくるみたいです!」


          準備の整った真選組屯所にて。

          協力してくれたみんなを集めて、
          あたしは再び手順の確認をし始める。





          「さっきの打ち合わせ通り、ドアが開けられたら、
           一斉にこのクラッカーを鳴らしてください」

          「そういうこった。
           おめーら、失敗すんじゃねーぞォ〜」

          「って、お前に言われたくねーよ」

          「あァ? 何だって?」


          って、銀さんに土方さん、こんなときまで喧嘩……!?





          「あっ、足音アル」

          「どうやら帰ってきたみたいですね」
           
          「そうね……
           ちょっとそこの天パーにマヨラー、静かにしてくださいな」


          お妙さんの射るような視線に、ぴたっと言い合いをやめる二人。





          「皆さん、準備はいいですか?」


          なるべく声をおさえて……
          でもみんなに聞こえるように、あたしは言う。



          そうして、二つの足音が部屋の前で止まり。
          ふすまが開かれた。









          「「「「「「「「「「Happy Birthday!!!」」」」」」」」」」



          「お誕生日おめでとう、!!」


          一瞬目を丸くして、珍しくも驚きの表情を表に出していた
          だけど、すぐにいつもの平然とした顔に戻って。





          「…………ありがと」


          そう、一言だけつぶやいた。

          でも、その一言にいろんな想いが詰まっていること、
          ここに居るみんなは理解してくれたと思うんだ。









           「さ、いつまでも立ってないでパーティを始めよう!」

           「はい、近藤さん!」


           、お誕生日おめでとう。
           こうして一緒にお祝いできたこと、すごく嬉しいんだ。



          パーティの場所として屯所を貸してくれた真選組と……

          手伝ってくれた銀さんや新八くん、神楽ちゃん、お妙さん、
          土方さんに総悟くんや近藤さん……

          みんな、ありがとう。










          ――お姉、パーティなんて開いてくれてありがとう。

          あのとき故郷に一人お姉を残してきたこと、
          まだ申し訳ないと思ってる。


          でも、こんな風に……

          この町の人たちと一緒に、笑い合っているお姉を見たら
          何だか嬉しくなってきたよ。


          あんまり柄じゃないけどね。










          「「みんな、ありがとう」」


          ――本当に、感謝してる。