「ー!!」


          依頼を終え帰ってきたばかりのあたしのもとへ、
          同じくちょうど帰ってきたらしい神楽ちゃんが駆け寄ってくる。

          ……でも、隣に居た人が想像していた人たち(銀さんと新八くん)ではなかったので、
          それが少し気になった。




















思い出のアルバムを心に――第四話 その笑顔を永遠に願う 中編






          「お帰りなさい、神楽ちゃん」

          「ただいまヨ!」


          もお帰りネ! と言ってくれたので、あたしも「ただいま」と返した。










          「それにしても神楽ちゃん、銀さんと新八くんは一緒じゃないの?
           あと、なんで総悟くんが……?」


          ……そう。
          神楽ちゃんの隣に居た予想外の人とは、総悟くんだったのだ。

          (理由は解らないけれど)ふたりがあまり仲良くないことは心得ていたので、
          そういう点からしてもこのツーショットは不思議だと思った。















          「ぎ、銀ちゃんと新八は、その…依頼アルヨ!
           すっごく簡単な仕事だから、あのバカ二人に任せて私は先に帰ってきたんだヨ!」

          「そうなんだ?」

          「そうネ!」


          よく解んないけど……
          三人でやるまでもない、みたいな感じなのかな?

























          「オイ チャイナ、もう少しマシな嘘つけねーのかィ!
           アレさん絶対変に思ってるだろィ」

          「うるさいネ!
           これからうまくごまかすんだから、余計なこと言うんじゃないヨ!!」















          「神楽ちゃん? 総悟くん?」


          ふたりが何か言い合いしてるみたいなんだけど……。







          「な、なんでもないヨ!
           それより、今からココに行ってみないアルカ?」

          「え…?」


          神楽ちゃんが差し出してきたのは、「おすすめお散歩スポット」という雑誌だった。
          (どこから持ってきたんだろう、という疑問は、とりあえず飲み込んだ)

          その雑誌をのぞいてみると、少し前に江戸に出来た公園が載っていて…
          ここからもそう遠くないし、何よりいろんな施設があって楽しそうだった。










          「うん、行ってみたい!」

          「やっぱりネ!
           こーゆーの好きそうだから、絶対行くって言うと思ったアル」


          さすが神楽ちゃんだなぁ、なんて思いつつ、
          あたしはふと隣に居る総悟くんに目を向ける。















          「あ、もしかして……総悟くんも、一緒に行ってくれるの?」


          この流れからすると、そう考えるのが妥当な気がするんだけど……

          そんなあたしの予想は的中したようで、総悟くんはこくりと頷いた。







          「ホントは銀ちゃんと新八を連れていこうとしたけど、二人は依頼中アルからな。
           それで暇そうにしてたコイツを代わりにと思って連れてきたんだヨ!」

          
「暇そうってオイ」

          「そういうことだったんだね!」

          さんもつっこんでくだせェ!」


          ちょっと焦っている総悟くんに「冗談だよ」と返すと、
          なんだか納得がいかないような微妙な表情をされた。(なんでだろう?)















          「(全く、さんはホントに天然な人でさァ……
            こればっかりは、旦那と土方さんに同情しますぜ)」















          「じゃあ、
           さっそく公園に行くアル!」

          「うん!
           総悟くんも行こう?」

          「了解でさァ」


          そうして、あたしは神楽ちゃんと総悟くんと一緒に
          雑誌に載っていたその公園へと向かった。






























          「……オイ

          「何?」

          「あいつら大丈夫なのか?」

          「何のこと?」


          買い出し中に突然、トシがそんなことを言った。
          なんのことなのかすぐ解ったけれど、は解らないフリをした。







          「だから、総悟とあのチャイナ娘だよ。

           あいつらお世辞にも仲がいいとは言えねェだろ。
           その二人に、を引きつけといてもらうって……」


          無理だろ、と言わんばかりの顔をした。

          そんなトシに、も買い出しの手を止めず答える。













          「大丈夫だよ。
           お姉はあの二人を、妹と弟みたいに思ってるだろ」

          「まァ、それはなんとなく解るが……」

          「だから、あの二人が適任なんだ」


          妹と弟みたいに思っているからこそ、
          お姉があの二人の思惑に気づくことは、ないだろう。
          (そもそもそーゆー懐疑的な目で二人を見ないだろうし)







          「あの二人がやるからこそ、勘づかれる可能性が低くなる」

          「……そうか」


          の言葉に納得したのか、トシはそれ以上
          お姉の引きつけ役たちについては何も言ってこなかった。














          「とにかく、こっちもこっちでまだまだやること目白押しだからね。
           急ぐよ」

          「あァ」


































          「着いたヨ!」

          「わあ……!」


          目的地の公園に着くと、雑誌で紹介されただけあってか
          けっこうな数の人が来ていた。

          新しくできたから施設とかも綺麗だし、いい感じだなぁ…。










          「さん、中にアスレチックがあるみたいですぜ。
           やってみませんかィ?」

          「アスレチック?
           うん、楽しそうだね!」


          みんなでやろっか、と言うと、ふたりが元気よく返事をしてくれたので、
          案内図を見ながらアスレチック場に向かった。




















          「……あ、もしかしてアレかな?」

          「きっとそうネ!」


          アスレチック場に着いたあたしたちは、
          受付を済ませさっそくアスレチックを始める。







          「良かった、最初はあんまり難しくないね」


          正直なところ運動神経がいいとは言えないので、心配だったんだけど…
          これなら一つもクリアできなかった、なんてことにはならなさそうだ。










          「きっとどんどんレベルが上がってくんでさァ」

          「えっ……
           大丈夫かな、あたし」

          「心配ないんでさァ」


          無理そうだったら俺が手を貸しますぜ、と、
          総悟くんから心強い言葉をもらった。















          「何言ってるカ! お前の助けなんて必要ないヨ!」


          は私がサポートするからネ! と、
          (何故か)張り合うようにして言う神楽ちゃん。







          「お前には『サポート』なんで無理だぜィ!」

          「お前のほうこそ無理アル!!」

          「なんだったらどっちがさんのサポートに適してるか
           勝負してみるかィ?」

          「臨むところネ!!」


          そんなことを言い合いながら、ふたりはアスレチックをどんどんクリアしていく。

          そしてあたしはというと、ふたりのように俊敏にクリアできるはずもなく…
          ただただ小さくなっていくふたりの姿を、追うことしか出来ない。















          「ふ、ふたりとも、早いよ……!」


          でも、これ……
          アスレチックもだんだんレベルが上がってきて、
          そんなにスマートにクリアできないんですけど…!






          「けど…早くしないと、本当に追いつけなくなるかも」


          急がないと、と思って走り出した瞬間……










          「っ……!?」


          変に慌てたためか、足を滑らせてしまった。

          生憎そこは、地上から5メートルくらい離れたアスレチックの上。
          死ぬことはないだろうけど、怪我をするのは必至だった。


          ――だめだ、落ちる……!

          そう考えて、思わず目をつぶる。




          けど、その直後…
          両手を何かに思いきり引っ張られた。















          「……!
           神楽ちゃん…総悟くん……」


          あたしの手を引っ張って助けてくれたのは、先に行ってしまったはずのふたりだった。















          「あ、ありがとう、ふたりとも……
           戻ってきてくれたんだね」


          体勢を整えながらそう言うと。
          ふたりとも、すごく罰の悪そうな顔をした。










          「ごめんネ、……
           私たち、つい熱くなって先に行ってしまったヨ」

          「さんを急かして危ない目に遭わせたのは俺らでさァ……
           すみません」

          「ふたりとも……」


          本当に申し訳なさそうに言って、ふたりして頭を下げてきた。
          そのことに驚き慌てつつも、顔をあげてほしいとあたしは言う。















          「確かに、先に行っちゃったときは慌てたけど……
           でも、滑って落ちそうになったのはあたしの責任だよ」


          ふたりが気にすることないよ。
          続けてそう言ったんだけれど、ふたりはまだ納得がいかないようだ。







          「……ほら、いつまでもここに居たらもったいないよ。
           アスレチック、最後までクリアしよう?」


          せっかく公園にも来たんだから、楽しまないと損だよ。















          「あたしがうまく進めないときは『ふたりに』サポートお願いするからね」

          「「……!!」」


          だから、よろしくね。

          そう言ったら、ふたりの顔がやっと笑顔になってきた。







          「任せてヨ、!」

          「さんの身は、俺たちが守りまさァ!」

          「あはは、ありがとう」


          でも大げさだよ、と思いつつも、
          はりきって先導してくれるふたりの後にあたしも続き、
          次々にアスレチックをクリアしていった。



































          「けっこう遊んだね〜」


          あれから無事に(?)アスレチックを全てクリアして。
          他にもボートに乗ったり公園内を歩き回ってみたり……

          とにかく、色々と遊びまわった。

          それで、そろそろ帰ろうか…ということになり、
          今はその帰り道をみんなで一緒に歩いているわけだ。







          「、楽しかったアルカ?」

          「うん、すごく!」


          久しぶりに、思い切り遊んだ気がする。






          「さんが楽しかったんなら、来たかいがありましたねィ」


          そう言ってくれた総悟くんに対し、あたしも「ありがとう」と伝えた。















          「それで、さん……
           もっと面白い場所があるんですが、今から行ってみませんかィ?」

          「え?」


          もっと面白い場所…?







          「気になるけど…でも、今からで大丈夫かな。もう夕方だし…」

          「部屋の中だから大丈夫ネ!」

          「あ、そうなんだ」


          室内施設なんだろうか…?
          いろいろ気になったものの、詳しいことは着いてからのお楽しみ…ということみたいだ。
          
          聞きたいことをひとまず飲み込み、あたしはふたりの後に続いて歩き出した。






























          「……オイ、みんな。
           今、総悟からメールが来た」

          「総悟の奴、なんだって?」

          「神楽と一緒にお姉を連れて、今からココに向かうってさ」


          トシの問いかけに答えてやると、
          その言葉が聞こえたのか、会場に居るみんながこっちに注目する。

          そんな面々の顔をぐるっと見回して、は言った。







          「さァ……こっからが本番だよ」


          ニヤリと笑って返してきた面々に、も同じように笑って返したのだった。



















          To Be Continued...「その笑顔を永遠に願う 後編」