慌てたようにそう言ってきたのは、今しがた走り去ってったはずの銀時だった。





「てか、銀時……今どっかに逃げたはずだよね?」

「慌てて戻ってきたんだよ!
 考えてみりゃァ…俺が逃げたらの奴、他のヤローに絡むってコトじゃねェか!!」

そんなの黙ってられるかァ!!
と、変にテンションを上げた銀時が力説してきた。
(でも確かにその通りかもな、と納得もした)










「まァ、そーゆーコトだからな……
 ほらちゃん、もう今日はお休みしますよ〜」

「えぇー!」

「『えぇー!』じゃないの! 
メチャクチャかわいーけど!!

「オイ!!」

銀時のアホ発言に、新八がすかさずツッコミを入れる。





「ほら言うこと聞け、ちゃん!」

「じゃあ、ぎんさんいっしょにねてくれるのぉ!?」

「あーハイハイ、わかったわかった。一緒に寝るから」

「ほんとぉ? わーい!」

「ちょっ……
何この子かわいすぎなんですけどォ!!

勢い余ってお姉に抱きつこうとした銀時に、お妙の強烈キックがヒットした。













「冗談はさておき……
 銀さん、本当にちゃんと一緒に寝るつもりなんですか?

そう言ったお妙の顔には、もはや殺意しか感じられなかった。
さすがにも恐怖を感じた……





「バーカ、んなワケねェだろ。
 そうでも言っとかねーと、今のアイツは素直に言うこと聞かねェだろうからな」

その言葉に、問いかけたお妙を始め周りの奴らの間にホッとした空気が流れる。





「とりあえず、他に被害が出る前にアイツを寝かしつけねーと……
 ……!」

言い終わるや否やのところで、はポケットに入れていたものを取り出し
銀時に向かって投げつけた。

……何も言わずに投げつけたものの、それをしっかりキャッチしたところはさすがだと思う。










「なんだァ、コレは……鍵?」

「まァ、こーゆー展開も予想してなかったわけじゃないからな。
 このパーティ会場とは別に、部屋を用意しておいた」

「マジでか! さっすがだな」

んじゃ行ってくるわ、と言った銀時は、
上機嫌になっているお姉の手を引いて部屋に向かった。






























「……よし、っと。
 じゃあ、今日はもうさっさと寝ろよォ〜」

「ええー!
 ぎんさんは? ぎんさんは、ねないのぉ!?」

「俺は大人だからまだ夜更かししててもいーの」

「あたしだって、おとなだもん!!」

ベッドに横になったに問答無用で布団を掛けてそう言うと、予想通り反論してきた。

横になればすぐ寝ちまうだろうと踏んでたからな……
さて、どうすっか…………。










「……よし、わかった。
 一緒に寝てもいーが、一つ条件がある」

「なーに?」

「今日はとりあえず、このまま一人で寝ろ。
 んで、明日起きてもお前が変わらず『一緒に寝たい』と思うようなら、一緒に寝てやる」

「ほんとぉ!?」

「おー」

どーやらうまくいきそーだな。

この手の酔っ払い方は、寝て起きたら全部忘れてるパターンが多いからな……
きっとも、明日になりゃー何も覚えてねェだろう。

それもそれで残念な気がするが……
さすがの俺も、こんな状態のコイツに手を出す気はねェ。










「じゃあ、きょうはもうねる!」

「よーし、いい子だぞォ〜」

そう言いながらの頭をなでてやると、嬉しそうに笑った。






「おやすみなさい、ぎんさん」

「ああ、おやすみ」

ゆっくりと目を閉じ、とたんにしゃべらなくなる。

一瞬で寝ちまったのかと思い部屋から出て行こうとしたが……
ふいに名前を呼ばれたので、振り返ってみると。









「銀さん……
 さっきの約束……忘れないでね…………」

「……!
 、お前…………」

「……すぅ……すぅ…………」

さっきまでの、舌足らずなしゃべり方とは明らかに違う。
まさかと思いながら急いでのそばに戻ってみたが、規則正しい寝息だけが聞こえてきた。





「…………んだよ、期待させやがって……」

まァ、いいか。
今日はあんなに楽しそうに笑うコイツを見れたんだからな。