「うーん……」


さっぱり解らん……
この場合、どうやって対処するのがいいのかな?







「全く考え付かないわけじゃないんだけど、あたしたちの常識とは違うんだろうし……」


そんなことをつぶやきながら、任された書類とにらめっこしていたとき……















「なんだ、またそんなしかめ面で格闘しているのか?」


聞きなれた声でそんなことを言われた。
発言したのはこの国を統べる人物――アシュヴィンである。






「しかめ面って……!
 あ、いや、でも自覚はあるけども……」


もっと違う言い方があるでしょうに!







「悪い悪い、そんなふくれっ面になるな」


せっかくの美人が台無しだぞ、と、頭をぽんぽん叩いてくる。
















「……って!
 そんなことで誤魔化されないよ!?」


危うく(?)丸め込まれそうだったのだと気付き、あたしは反論したんだけど。
目の前の殿下は、あまり気にする様子もなく笑っているだけだった。



















「てゆうか、それより……
 何か用があったんじゃないの?」


確かこの時間だと、アシュヴィンも自室で(嫌々)事務処理をしているはずだ。
それなのに、ここにやって来たということは、十中八九あたしに用があったんだと思うんだけど……







「ああ、察しがいいな。さすがだ」


そう言いながら、一枚の紙(手紙?)を差し出してくる。
よく解らないまま、あたしもそれを受け取った。







「えーと、なになに……?」

























  
 『さん、アシュヴィンへ


      お久しぶりです。元気にしてますか?
     私や、中つ国のみんなは元気に暮らしています。
     国としてもだんだん安定してきたし、いい方向に向かっていると思います。


      ところで、ちょっと提案なんですが……久しぶりに、みんなで集まりませんか?
     布都彦にお願いしてサザキたちにも連絡を取ってもらったんですが、
     みんな橿原に集まってもらえそうなんです。
     だから、さんとアシュヴィンも、良かったら来てください。

      二人が来てくれるのを楽しみに待っています。それでは、また。


                              葦原千尋


     あ、書き忘れていたけれど……
    アシュヴィン、さんを哀しませたりしていたら許さないからね。』

























「千尋から……」


良かった、みんな元気でやってるんだ!
そう思いつつ隣のアシュヴィンに目をやると、ひとつため息をついて言う。






「あいつは本当に、お前が大事なんだな」


それでもって、俺に対して厳し過ぎるんだ。

そうぼやきながらも、なんとなく嬉しそうな感じがしたのは黙っておこう。










「まあ、とにかくさ……
 このお誘い、もちろん受けるよね?」

「ああ」


楽しみだなぁ……
















「よし、なんかやる気が出てきた!」


さっさとこの仕事終わらせちゃおう!







「やる気になったのはいいが、あまり無理はするなよ?」

「うん、解ってるって」


そうやっていつも気遣ってくれるから、あたしはまた頑張ろうと思えるんだ。










「ありがとう…アシュヴィン……」

「どうしたんだ、急に」

「急に、じゃないよ」


本当はいつも思ってたよ。
でも、なんかそれをうまく伝えることが出来てなかっただけで。








「ずっと、思ってたことだよ。
 言葉にしないと伝わらないことがあるって、解ってるから」


だから、なんてゆうか……
いい機会だから、伝えておきたかった…って感じかな。















「……そうか」


あたしの言葉を聴き終わったアシュヴィンは、それだけ答える。
そして、少し間を空けて再び口を開いた。







「ならば、俺もこの機会に伝えておこう……

 ――、ありがとう。
 お前が共に歩むことを選んでくれたから、俺はこうして生きていられる」

「アシュヴィン……」

「これからも、俺についてきてほしい。
 ……まあ、お前が単についてくるだけの女だとは思っていないが」


うん……















「あたしは……
 あなたの隣で、一緒に歩いていくよ」


これからも、ずっと。







「ああ……そうしてくれ」


珍しくも、優しく微笑んでそう言った。




























「……あっ、見つけましたよ、殿下」


そう言って部屋に入ってきたのは、(おそらく主人を探し回っていたのであろう)リブだった。







「なんだ、リブ……
 少しは気を遣え」

「十分気を遣ってると思いますが……」


反論したそうなリブだったけど、なんとか言葉を飲み込み…







「さ、殿下。
 残りの報告書の、確認をお願いしますよ」

「解った解った。
 ……それじゃあ俺も戻るぞ、

「うん、また後でね」


嫌々ながらも、アシュヴィンはリブと共に自室に戻っていった。















「……よし」


仕事に戻る前に、あたしは千尋への返事を書いてしまおう。










「千尋へ、と……」





   『 あたしたちも、みんな元気でやってるよ。
    そっちも元気そうで良かった!
    お誘いありがとう。ぜひお邪魔させてもらうね。

     千尋、あたしたちみんな色々あったけど……
    今この場所を選んで、あたしは良かったと思ってる。後悔もないし。
    なんてゆうか…それだけ伝えておきたかった。
    いつもあたしのこと心配してくれた、千尋だから。

     千尋も、これから今よりももって幸せになってね。
    あたしに出来ることなら、なんだって協力する。
    だから、どうか……


    一緒に笑い合っていける国を、作っていこうね』























































その手紙を出す前に あの人に見てもらった




(短いがいい文だな、と言ってくれた)





















































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五発目はアシュヴィンでした!
遙かもキャラ多いので、だいぶ迷いました……
そんで、アシュヴィンっぽいかなっと。
ほとんど書いたことないので難産でしたけど、楽しく書けました!

アシュヴィンはほんとに、石田彰氏の演技が好みです。
あーゆーのが好きなんだな、あたし…!