「夕方っつーと、そろそろか?」


だいぶ日も暮れてきたから、
あいつが来る頃だと思うんだが……



『その、あたし……
 土方さんと一緒に行きたい所があるんですが』






「一緒に行きたい所か」


一体どこに行くってんだ……。










「こんにちはー!」


そう考え始めたところで、
門の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

だ。





「……はァ」


さっきのを見ちまった手前、なんだか行きづれーが……
約束した以上、居留守するわけにもいかねェしな。


そう考え直して、簡単に出掛ける支度を済ませ
重たい足を引きずりながらあいつのところへ向かった。










「土方さん、良かった!
 居ないかと思いました……」

「あ、いや……遅くなって悪かった」

「いいえ、いいんです」


グズグズしてねーで、もっと早く出て行くべきだったな……





「じゃあ、行きましょうか!」

「あァ」


それで、俺はこれから何処に連れていかれるんだろうな。

人気のない所に連れていかれて、
別れを切り出されるのかもしれねェ……










「着きましたよ、土方さん」


ぼんやり考えなら歩いていたせいか、
いつの間にやら目的地に着いていたようだ。





「ここは……」


ここには見覚えがある。


ストーカーしに行っている近藤さんを連れ戻すのに、
いつも一番最初に向かう場所……

志村妙とその弟が住む家だった。





「オイ、なんだってこんなところに……」

「いいから入ってください!」

「オイ待て、俺の話を……!」


全く話を聞こうとしないが、
目的の場所と思われる部屋に俺を無理やり押し込める。

すると、パーン!という音が何重にも響き渡った。





「な、なんだ!?」


攘夷志士の襲撃でも受けてんのか……!?

腰にある刀を、手早く抜こうとした瞬間、





「「「「「「「お誕生日、おめでとォォォォォ!!!!!!」」」」」」」





「……!」


近藤さんに総悟を初めとする隊士たち、
万事屋のやつらと、見覚えある連中が揃っている。

そうか、こいつァ……










「トシ、誕生日おめでとさん!」

「近藤さん……」


俺は、すぐ後ろに控えていたの方を見る。





「これ、土方さんのお誕生日パーティですよ♪」

「……そーゆーことかよ」


してやった、と言いたげな顔で、は笑った。





「本当は屯所でやれれば良かったんですが、
 それだと準備してる途中でバレちゃうと思って」

「だから、お妙さんと新八くんの家を借りることになってな!」

「今朝から準備してて、けっこう大変だったんですよ。
 ね、総悟くん?」

「買出しなんて滅多に行かないんで、妙に疲れましたねィ」


買出しだと?

まさか……さっきのアレがそうだったのか。










「銀さんたちも、準備に協力してくれたんです!」

「いや別に、お前のお祝いなんてしたかなかったけどォ〜?
 ちゃんに頼まれたから仕方なくだよ、うん」





「この間せっかく誘ってくれたのに、
 お断りしてしまってごめんなさい……」

「あー、いや……」

「少し前からずっと、今日の計画を立てていて……
 土方さんに会ったら、つい言っちゃいそうだなって」


だから会わないようにしてたってワケか。





「……お前の気持ちは嬉しい。ありがとな」

「土方さん……」


必要以上に気にしないように、
俺は努めて優しく頭をなでてやった。










「えっと、その、なんだ……
 腹減ったんだが、食ってもいいか?」

「は、はい、どうぞ召し上がってください!
 マヨネーズもありますから」

「あァ、サンキュ」


懸命に冷静を装ったつもりだが、
顔がにやけるのを抑えられたかは分からねーな。

まァ、とにかく……
愛想つかされたとかじゃなくて、マジで良かった。










「よーし、今日は思いっきり騒ごうぜ!」

「って近藤さん、あんまりウチで暴れないでくださいよ?」

「いいじゃないか新八くん、今日くらいは!」

「いや、アンタの誕生日じゃねーから!!」

「あはは」


屯所以外で、大勢で騒ぐのは初めてかもしれねーな。
だが、たまにはいいか……。





「……ねぇ、土方さん」

「何だ?」

「あたし……土方さんのこと大好きですよ」

「なっ……いきなり何言ってんだ」


まさかそう来るとは思っておらず、
俺は必要以上に動揺してしまう。





「土方さんが、あたしに愛想つかされたかも、とか
 勘違いしてたら嫌だなぁって思って」

「……!」

「図星でした?」

「……そーだよ、悪りィか」


この状況でごまかしても無駄だろうと思ったから、
俺はあえて素直に認めた。




「悪くなんかないですよ」


そうやってあたしのこと、
たくさん考えてくれてるってことだから。

すごく、嬉しいです。










「土方さん、大好きです。
 生まれてきてくれて、あたしと出逢ってくれて、
 そして……あたしを選んでくれてありがとうございます」


……





「礼を言うのは俺の方だ。
 俺のために、色々とありがとな」

「好きでやってることですから♪」

「…………そうかよ」


――正直なところ、自分が好かれている自信はない。

だが、俺の気持ちに応えてくれたってことは、
少しでも好いてくれてるってことだろう。





言い切ることは出来ない。

出来はしないが、俺を想ってくれているのだろうと、
そう信じることは出来るんだ。



また会えない日が続くこともあるかもしれねェ。

だけどお前には、これからも俺のそばに居てほしい。


いや……

これからもそばに居てくれ、





「もちろんですよ、土方さん」



















そう答えたお前の笑顔が、本当に綺麗だった。


(綺麗で、思わず見とれちまったんだ)















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土方さんバースデイ夢でした。

修正して長かったので、ふたつに分けました。

銀魂は割と、ジェラシー感じるシーンを書きがちかも?
土方さんより、銀さんのほうが多いですかね。当サイトでは。