六拾弐話:時として名前が物事の全てを語る















          前回、父である星海坊主と共に江戸を出ようとした神楽を止めるため、
          と新八はターミナルに侵入した。
          だがそこで、銀行において退治したはずのえいりあんと再会してしまう!










          果たして、たちの運命やいかに……!




















          「ちょっと!この連載ってそーゆーノリだったけェ!?」










          絶対違うと思うんだけどォ!!




















          ウィー ウィー










         『緊急警報、緊急警報!
          七番門(ゲート)で異常発生!七番門で異常発生!
          係の者は速やかに――』










          「なっ……










           なんじゃありゃああ!!




















          「てか、気持ち悪ッ!!」










          新八くんが叫ぶのも解るんですけどォ!!















          「アレ?こっち来てない?ウソ?こっち来てない?
           ヤバイ、こっち来てない!?




















          「…………アレ?
           なんかあのえいりあん、新八くんのいた所に突っこんだよね?」










          直後、彼のものと思われる叫び声がこだました。(何















          「てか、私のいる所も崩れて…………!」










          ぎゃあああああ!!!



























































          「どうしよう…………」







          船やターミナルの一部が崩れてから、
          私は神楽ちゃんや星海坊主さん、新八くんまで見失ってしまった。










          「向こうの方に見えるアレ、明らかにえいりあんだよね…………」










          たぶん、あれはものすごいスピードで増殖してるんだと思うけど……




















          「あっちにあるのは……カメラかな?」










          リポーターみたいな人が見えるところからすると、
          どうやらニュースの中継か何かをやっているんだろう。















          「…………私は、ターミナルの入り口付近に飛ばされたみたいだね」










          えいりあんよりかは、リポーターさんたちが立ってる場所に
          近いみたいだし…………。




















          『とにかく、なりにやってみればいいと私は思うよ』















          『銀さんは絶対に来てくれるから、信じててね』





















          …………。















          「…………がああ言ったんだ。私は、信じなきゃ」










          信じて、自分が出来ることをやらなきゃ。




















          「まずは、残っている乗客がいるか確認!
           もしいたら避難経路を確保して、避難させる!!」










          そのくらいなら、私にだって出来るはずだ!















          



          意気込んだ私は、その勢いのまま走り出した。



































































          「おい」

          「…………」

          「おい」

          「…………」

          「しっかりしろ。オイ、坊主」










          「……アレ、ここは冥土ですか?
           花畑じゃなくて焼け野原が見える

          「誰の頭が焼け野原?
           花畑いくか?花畑で永遠に暮らすか?















          「! 星海坊主さん?」

          「さっさとお前も逃げろ。坊主、死ぬぞ」














































          「…………よしっ」










          どうやら、乗客のほとんどは既に避難してたみたいだね。















          「あとは神楽ちゃん、星海坊主さんに新八くん……かな?」









          何か忘れているような、という思いは、この際気にしないことにした。(え




















          「えいりあんの増殖がものすごいあの場所…………」










          あの場所に、おそらく神楽ちゃんがいるんだ。















          「よーし!私も行くぞォォ!!」






























          「うーん…………」










          、迷ったみたいです(えええ















          「あちこちえいりあんに侵食されてて、道という道も無いし……」











          どっちに行けばみんながいるんだろ?




















          「…………ま、テキトーに進んでれば会えるよね!」










          大丈夫!私、運だけはいいから!(オイ






































































          「あっ、いた!」










          神楽ちゃんと星海坊主さんが…………















          「神楽ァァ!!オイッ、しっかりしろォ!!」




















          「……!」










          何…………?




















          「……!? 神楽ちゃん、その怪我……!」

          「…………」










          神楽ちゃんは大量の血を流していて、
          消え入りそうな声で私の名前を呼んだ。















          「…………か」

          「え?」















          「てめーら、黙って見てたのか」

          「?」

          「助けてもらっておいて、俺の娘が弱っていくの……










           だまって見てたのかってきいてんだよ















           神楽ちゃんを抱きかかえていた星海坊主さんが、
           すごく鋭い目をしてバカ皇子たちを見た。















          …………私は今ここに来たから、状況をよく理解してない。
          だけどおそらく、バカ皇子たちは神楽ちゃんに助けてもらったんだ。















          ――星海坊主さんのこの目は、やばい。










          私の本能というものがどこまで高い力を持っているか解らないけれど、
          これだけは察知できた。















          …………この人は、やばい。




















          「まままま待って!だってこんな状況じゃ医者呼ぶにも……
           …………のう?じい!」

          「ワシに振るなァ!!しらん!ワシはしらんよ!
           今日からボケだから!」










          「てんめっ…… ……!!」










          バカ皇子たちめがけてふるわれそうになった傘を止めたのは、
          ずっと苦しそうにしていた神楽ちゃんだ。















          「パピー、ダメヨ。せっかく私、助けたのに」

          「神楽!」

          「神楽ちゃん!」










          私も慌てて神楽ちゃんのそばに駆け寄った。










          「も……も……もう大丈夫だ、父ちゃんが助けてやるから。
           もう安心しろ!」

          「パピー……わ……私、変わったでしょ?
           私の力、人を傷つけるだけじゃないヨ。
           人を護ることもできるようになったヨ」










          「も……もういい、しゃべるな!」

          「神楽ちゃんっ……」















          「そういうふうにしたらネ、いっぱい友達できたヨ。










           もう、誰も私を恐がったりしないアル。
           もう一人じゃないネ」










          神楽ちゃん…………















          「戦って戦って、夜兎滅びたネ。
           戦って戦って、夜兎、一人ぼっちになってたネ。
           パピーも兄ちゃんも、みんな……」










          ――あぁ、そうだ。
          きっと神楽ちゃんは、淋しかったんだ。















          「戦わなきゃいけないのは自分自身アル。
           このままじゃみんな、一人ぼっちになってしまうヨ」

          「…………」










          自分自身と戦わなきゃいけないのは、夜兎だけじゃない。
          きっと、私だってだって……みんな、そうなんだろう。




















          「おいィィィ!!あぶないィィ!!上!!上!!










          バカ皇子の声に合わせ目線を上に移すと、えいりあんの口があった。















          「!」










          ドンッ










          「えっ!?」















          いち早くえいりあんの動きを見切った星海坊主さんが、
          とっさに私を突き飛ばし、神楽ちゃんをかばうように抱きしめた。















          「!! 星海坊主さん…………!」










          腕が食べられてる…………!?















           「……パ……パピー」










          「ぐうううう……」















          神楽ちゃんも星海坊主さんも、ひどい怪我だ。
          このままじゃ……















          「神楽ァァァ!!」










          怪我で身動きが取れない神楽ちゃんが、えいりあんに捕らわれる。















          「神楽ァァァァ!!」




















          このままじゃ……ダメだ…………




















          『銀さんは絶対に来てくれるから、信じててね』




















          銀さん…………




















          「銀さん…………!!」



















          ゴパッ




















          「神楽ァァァァァ!!」















          「銀さん!!!」










          来てくれたんだ…………!















          「神楽ちゃん、銀さんの手を取って!!」




















          「……銀ちゃ…………」
















          神楽ちゃんが伸ばした手を、










          銀さんは取ることが出来なかった…………