六拾五話:それぞれがそれぞれで、今できることを
私が今やるべきことは、
銀さんが神楽ちゃんを助け出すまでの時間を稼ぐこと。
そう思った直後、何かが近くに落ちてきた。
「おっ……お前…………」
星海坊主さんが、それを見てびっくりしている。
「来たね、新八くん」
「はい、さん」
私が……私たちが今やるべきことは、時間を稼ぐことだ
。
「でも、さん……どうやって時間を稼ぎますか?」
「そうだね…………」
考え始めた私の視界に、あのバカ皇子たちが入ってきた。
「ちょっと、協力してもらうよ♪」
黒蝶は素早く移動することが得意だったこと、
そして沖田をも凌ぐ腹黒だということ、バカ皇子たちは知らなかった。
「チクショー、また始まっちまったぜ!
どーすんだ、近藤さん!?」
「クッ!」
「エネルギー充填。松っちゃん砲、発射用意」
「長官」
「いいから撃て」
「いや、そうじゃなくてアレを……」
「奴等、逃げるどころか
増えてます」
「貴様らァァ、このオッサンが目に入らねーかァァ!!」
「いだだだ」
「今撃ったら、もれなくこの央国星皇子ハタ様も爆死するぞォ!!
もれなく国際問題だぞォ!!」
「なっ……」
「五分だァ、たった五分でいいから待てって言ってんだよォ、コルァ!」
「五分なんてスグじゃん!矢の如しじゃん!
カップラーメンでも作って待ってろって言ってんだよォ!!
コルァ、殺すぞ!」
新八くんとバカ皇子、そしてじじぃも私の脚本通りに(?)やってくれた。
「てっ……てめーら」
「チャイナ娘には世話になったんでな。
(それに、この真選組の娘も恐すぎだし……!)」
「撃たないよね?コレ撃たないよね?大丈夫だよね」
いくら松平様でも、国際問題となれば気にするはず…………。
「……ったく、あの天然パーが。
来るなら来るって最初から言えってんだよ」
「どうせ来るって思ってたでしょ?」
「ええ、天邪鬼ですからね」
「…………」
私、変わったでしょ?
私、人を護ることもできるようになったヨ
そういうふうにしたらネ、いっぱい友達できたヨ
もう誰も私を恐がったりしなアル
もう一人じゃないネ
「松平様!本当にあと五分でいいんです、待ってください!」
もう一押しだと思った私は、バカ皇子の前に出た。
「土方さん、アレじゃねーですかィ?」
「! アイツ、まだあんな所で……!」
「もちろん、この皇子を死なせたとあっては、国際問題です!
その前に、この江戸に住んでいる人たちを護るのが、私たちの役目のはず!」
なりゆきで入ったとはいえ、私ももう完全に真選組の一員なんだよ。
「その江戸に住む人を、ここにいる彼らを、
このまま見殺しにするなんて、間違っていると思います!!」
五分待ってもらえないのなら、私が話を伸ばせばいい。
そう、思ったんだけど…………
「……アレ、なんか……撃とうとしてない?」
「ウソ……ウソだろオイ。
皇子だよ、仮にも皇子だよ」
「ヤバイってコレ!」
このままここにいてもダメだ…………!
「みんな、急いでここから避難を…………!」
そう私が言いかけたとき、
新八くん、バカ皇子、じじぃの身体が宙に浮いた。
「…………!」
「それ、私の酢昆布ネェェェ!!」
えいりあんの核を突き破ってきたのは、神楽ちゃんだった。
「神楽ァァ!!」
星海坊主さんが叫んだ。
本当に神楽ちゃんを助け出した銀さんに、驚いているようにも見える。
「ったく、食い意地がはったガキだよ。親の顔が見てみてーなオイ」
…………なんて、銀さんは皮肉を言った。
「銀さん、星海坊主さん、神楽ちゃんは私に任せてください!」
「おう、頼んだぜ、!」
「神楽はしばらく嬢ちゃんに預ける!」
そう言ったあと、二人は同時に地を蹴った。
「いくぜェェェ!!お父さん!」
「誰がお父さんだァァァァ!!」
直後、二人はえいりあんの核を思いっきり攻撃した。
「核が!!」
「局長ォォ!!えいりあんの動きが鈍く!」
「きっと、あのえいりあんはこれで終わる」
「とっつぁぁぁん!!
射撃を止めろォォォ!もう撃つ必要はねェ!!」
近藤さんもそれを悟ったのか、
そんな風に叫んでいるのが土方さんのケータイ越しに聞こえた。
「泊める?ふざけるな栗子はまだ十七だぞ。
彼氏と二人で誕生日を祝いたいとかぬかしてやがったが、アレ外泊する気だよ。
絶対許さねェ、全力で邪魔してやる
ケーキの上で全力でランバダを踊ってやる」
「泊めるじゃなくて止める!
アンタ、娘のことしか考えてねーのか!!」
「…………たぶん、アレはもう止まらない」
だったら、やっぱりここを離れるしかないんだ。
「みんな!ここを離れるよ!!」
「下は無理だ、上だ、上!!」
私に続いて銀さんがそう言い、逃げようとしたんだけれど。
「酢昆布返せェェ!!」
「ぐぉふ!」
って、神楽ちゃんまだ酢昆布ゥゥ!!??
「神楽ァァ!!
しっかりしろオイ、ダメだって出血が!!」
も、もしかして神楽ちゃん、無意識…………?
「あー、酢昆布だ」
ブチン
「!?」
次の瞬間、神楽ちゃんは星海坊主さんの髪の毛を思いっきり抜いてしまった。
「ぎゃああああああ、何すんのォォォォ!!
お父さんの大事な昆布がァァ!!」
「てか昆布じゃないからァァ!!」
「おいィィ、何食ってんだ!
出せェェ、ハゲるぞ!そんなもん食ったらハゲるぞ!」
「ハゲるかァ!お前ホント後で殺すからな!」
『、逃げろ!!』
「…………!」
ケータイ越しに聞こえた土方さんの声で、私ははっとなった。
そうだ、こんなことしてないで早く逃げないと…………!
…………が、そう思った瞬間、砲撃されてしまった。
「ーーー!!」
「!!」
『目標消滅を確認』
「なっ……なんてこった、まさか……
ちゃんやあいつらが…………」
「「…………」」
「長官!射撃地点から微弱な生体反応が!」
「な……なんだと?」
「傘一本で、あの砲撃を…………」
砲撃がされる直前、私は思わず神楽ちゃんを抱きしめ、目を閉じた。
そして、銀さんが私たち二人をかばってくれて。
あの一瞬で星海坊主さんがどうやって動いたのか解らないし、
傘一本で砲撃から私たちを護ってくれただなんて、信じられないけれど。
それは、事実なのだ。
「ぼっ……坊主さん」
「クク……俺も焼きがまわったようだ」
「いや、髪の毛も焼きがまわってるけど」
ちょ、銀さん、そこはつっこんじゃダメ!!
「他人を護って、
くたばるなんざ」
それだけを言った星海坊主さんは、そのまま倒れてしまった。
「お……おい!」
「坊主さん!」
「星海坊主さん!!」
「ハゲッ!おい、ハゲ!」
「ハッ……じゃない、坊主さん!!」
「ハゲェェ!!右側だけハゲェェェェェ!!」
♪♪♪ あとがき ♪♪♪
おおおー!いよいよクライマックスまで来た感じですね!
ここで星海坊主さんの考え方というか、そういうのが
変わっていったのが、千夜は好きです。
自分より生きている時間は少ないけれど、
娘に教わることだって、たくさんありますよね。
さてさて、そろそろえいりあんの話も決着が付きます!
神楽ちゃんはどうなるのか!?
次回へ続く!!(何