六拾六話:親友は何人いたっていいじゃない!
それからえいりあんも完全に倒せて、ひとまずは戦いも終わった。
「おうおう、どうすんだこの死骸の山」
「ターミナルもしばらく運休らしいですぜ」
「幕府(うえ)に何言われるかわかったもんじゃねーよ
……ったく、あのジジイ。
それにしても、噂通りの化け物だったな」
「ん?」
「星海坊主だよ、星海坊主……」
「俺ァ、正直えいりあんなんぞより
あのオッさんの方がよっぽど恐ろしかったね」
「そーか?」
「俺には、奴が化け物になんて見えなかったけどな。
娘を護ろうとじたばたする、ただの人の親に見えたよ。
ガキに手を焼くその辺にいるただの親に……
探しものとやらは見つかったのかね、星海坊主殿」
『、大丈夫なの!?』
「うん、平気!」
星海坊主さんと銀さんが二人でどこかに行った直後、
からケータイに電話がかかってきていた。
は、どうやらテレビで私たちの様子を見ていたようで。
砲撃される直前までカメラに映っていたから、
心配して電話してきてくれたらしい。
『もう、ホントに心臓が止まると思ったんだからね!』
「ごめんって」
でも、銀さんなら大丈夫だと思ったんだよ。
だって、それは知ってるくせに。
「ところで、」
『ん?』
「銀さんと星海坊主さんが見当たらないんだけど、
どこに行ったか知ってる?」
普通なら、この場にいないに聞くのはおかしいんだろうけど。
生憎はどこにいても知ってるからね。
『うーん……たぶん、二人で話してるんだと思う』
「話してる?」
『そう』
何を話してるんだろ?
『……前にね、星海坊主さんは息子に殺されそうになったんだって』
「神楽ちゃんのお兄さん、だっけ」
『そうそう。
昔、夜兎には親殺しっていう風習があったみたい。
親を越えてなんぼ、って感じで』
そんな恐い風習があったんだ…………
「……もしかして、神楽ちゃんのお兄さんはその風習を?」
『うん。それで、そのときに星海坊主さんは左腕を失ったの』
そういえば、左腕は義手だって言ってたかも。
――その後、は私にも解るように詳しく説明してくれた。
本来ならば、自分の命を狙ってきた息子を止めるべきなのに、
星海坊主さんも本気でその息子を殺そうとしてしまったこと。
それを必死に止めたのは神楽ちゃんで、
神楽ちゃんやお兄さんのおびえる目を見てから
星海坊主さんは家に寄り付けなくなったこと。
『変わることも、信じることも、
そのときの星海坊主さんには難しいことだったんだね』
家族を壊すのが恐くて、星海坊主さんは逃げ回った。
結果、家族はバラバラになってしまった。
『でも、今回のことで、星海坊主さんも知ったはずだよ。
信じるってことの、大切さを』
「……!」
『銀さんは絶対に来てくれるから、信じててね』
そうだ…………
のすごいところは、こういうところだ。
天然ボケのくせして、私より物事を知っている。
解って、いるんだ。何が大切なのかを。
「ねぇ、……神楽ちゃんと星海坊主さん、大丈夫かな?」
『神楽ちゃんにとって、大切な、それでいて自慢のお父さんだもん。
星海坊主さんだって神楽ちゃんのこと大切に想ってるから、
何も心配することないよ』
そうだよね…………
「心配すること、ないよね」
それが、家族だから。
「だからよォ、神楽(あいつ)のこと大事にしてやってくれよな」
ズンズン
「言っとくけどねェ、僕はずっと万事屋にいますからね。
家族と思ってくれていいですからね」
「やめるとか言ってなかったっけ……」
『、銀さんに言ってあげてほしいことがあるの』
「…………」
銀さん、どこにいるんだろう…………
「やめるとか言ってなかったっけ……」
「あっ!」
いた!
「銀さん!!」
「?」
私が大声で銀さんを呼ぶと、こちらを振り返ってくれた。
「銀さん、あのね、」
『にとって“家族”って何なのか……銀さんに、説明してあげて』
「私は、血の繋がりだけが、家族じゃないと思う」
「……!」
突然現れた私が突然こんなことを言ったからか、銀さんは驚いている。
「だからきっと、新八くんだって、神楽ちゃんだって、私だって。
銀さんにとっては、家族と同じなんだと思うんだ」
家族と思うのかは、結局はその人次第なんだろうけれど。
「…………あァ、お前の言うとーりかもしんねェな」
「……うん」
銀さんは、ちょっとだけ笑ってそう言った。
「あ、でも、が銀さんと結婚すれば家族になれるんじゃね?」
「それとこれとは話が別だ」
まだ引っ張るか、そのネタ!?
「おーい、〜。そろそろ帰りますぜィ〜〜」
そんなことをしているうちに、総悟くんが私を迎えに来てくれた。
「はーい、今行くよー!」
総悟くんに返事をし、私はもう一度銀さんの方を見る。
「銀さん、またね!」
「おー」
神楽ちゃんが、星海坊主さんと一緒に行ってしまうかもしれないのに。
銀さんの表情は、なんだかすっきりして見えた。
「はァ〜〜〜〜…………」
は大丈夫って言ってたけど、
神楽ちゃんホントに残ってくれたのかなァ……。
「かなり気になるけど、確かめようにもどうしたらいいか…………」
そんな風に考え込んでいると、障子越しに近藤さんの声が聞こえてきた。
「おう、ちゃん。ちょっといいか?」
「はい、大丈夫です!」
私がそう言うと、近藤さんが障子を開けた。
「お仕事ですか?」
近藤さんが私の部屋に来るのは、案外珍しいんだよね。
「いや、ちゃんに客が来てるんだ」
「お客さん?」
こんな時間に誰だろう……?
「行ってみれば解るだろう」
「あ、はい」
近藤さんに言われた通り、私は屯所の玄関まで急いだ。
「お客さんって、ホントに誰なんだろう…………
……!」
そんなことを言いながら屯所の玄関に来た私の目に映ったのは。
「神楽ちゃん!!」
そう、神楽ちゃんだったのだ。
…………神楽ちゃんが、地球に残ってくれたんだ。
それが解った私は、思わず彼女に抱きついてしまった。
「神楽ちゃん、ホントに星海坊主さんと行っちゃったのかと思ったよ!」
「ごめんネ、」
神楽ちゃんは、私のことをあやしてくれた。
…………あァ、これじゃあどっちが年上か解らないな。
「、私、お礼を言いに来たんだヨ」
「お礼?」
私、何かしたっけ?
「新八と、銀ちゃんも……私のために、あんな危ない場所に来てくれたアル。
私すごく嬉しいし、感謝してるヨ」
「神楽ちゃん…………」
それを言うために、わざわざ屯所まで来てくれたんだ…………。
「私……神楽ちゃんのこと、親友だと思ってるんだ。
だから、親友のピンチのときに駆けつけるのは、当然でしょ?」
私が少しおどけた感じで言うと、神楽ちゃんも笑って言った。
「がピンチになったら、私が助けに行くアル!」
――――うん、ありがとう。
♪♪♪ あとがき ♪♪♪
おおおおお、終わったァァ!!終わりましたァ!
とうとう星海坊主編が終わりました。
再三言ってきたことですが、上手く絡めなくて
そのままズルズル終わってしまいました(オイ
ちょっと前から思ってましたが、
この長編ではちゃんが割といいこと言いますよね。
ちゃんと諭すのは、いつもちゃんです。
実は一番物事を知っているのかも?
なかなか迷走している長編ですが、
今後ともよろしくお願いいたします!
なんかいつも似たようなあとがきですみません……!(土下座