七拾話:そしてやっぱり家政婦は見ていた
「オイ、さっさと歩け!」
「あれは……」
あの人が、さっきが言ってたお房さん……だろうか。
それで、後ろにいる偉そうなのがきっと橋田屋の主人だよね。
「で、これからどうするかってことだけど……
…………って、アレ?神楽ちゃんと新八くんは?」
「(オイオイ、こいつァあんまり長居する所じゃなさそうだな)」
「(だが、この仕事をやめてどーする またプーの生活に戻るのか?)」
「(そうだ、いつも俺は
そうだ、ちょっと嫌なことがあったらスグ仕事変えて……
逃げぐせがついてる)」
「(その通りだ。まるでダメな男……マダオだ
そうだ、死のう)」
あれって長谷川さん?
ってか神楽ちゃん、面白そうなことしてる……!
「私も参加しちゃおっと♪」
「(いやいやいやいや、おかしいぞなんで死ぬの?おかしいぞ今の
そうだ京都行こうじゃないんだから)」
「(いやいやいやいや死んどけって
どうせこの先生きてたってロクなことないアル)」
「アルって何だ?」
「(この際そんなことは気にするな
ここいらで死んどこうぜ、いえい!)」
「いえいって、意味わかんねーよ……
って、何してんだてめーらァァァ!!」
あ、やっと長谷川さんがうちらに気付いた(笑)
「お前らかァ!人の頭ん中に変なナレーション流してた奴は!!
オイ!なんでこんな所にいるんだ!?
何やってんだ、てめーら!?」
「何って決まってるじゃんね、神楽ちゃん」
「そうヨ、家政婦アルネ」
「長谷川さんこそなんでこんな所にいるんっですか?
また転職ですか?」
私たちが三者三様の反応をしていると、
長谷川さんもなんだかいたたまれなくなったようで、
ちょっとだけ落ち着いてきた。
「丁度いいですよ、さん。
長谷川さんに案内してもらいませんか」
「そうだね、いいかも!」
「は?何だよ、案内って」
「そのままヨ」
と、こんな会話で長谷川さんが理解するはずもないので、
私たちはおおまかな事情を話すことにした。
「実は…………」
「おのれェ、どこへ行った!?」
「お前はあっちを探せ!」
「オイ、行ったぞ」
…………。
「…………。
行ったと言っている」
「行ったと言ってるだろうがァァァ!!」
「んなトコ隠れられるかァァ!!」
「あっ、なんだ。結局そっちに隠れたのか」
「結局もクソも、ハナからそんな所に隠れられるワケねーだろ
バカかお前、バカだろう」
「バカじゃない、桂だ」
「ちょ、ちょっと桂さんも銀さんも!
とにかく落ち着いてください……!」
「安心しろ、。俺はいつでも落ち着いている」
「いや、逆だろオイ」
「さすが桂さん!」
「ってちゃん?それって、素?素で言ってるの?
(ってかこの二人なんなの、ボケコンビ?)」
「……と、そんなことより銀時。アレは恐らく攘夷志士だ」
「この廃刀令の御時世に堂々と刀を帯刀する人なんて、
幕府の人かその逆の立場の人ですもんね」
「ああ。その上、連中が橋田屋の名を口にしていたと言ったな」
「ああ、知ってるのか?」
「オイオイ、孫って何!?
まさか橋田屋の旦那の孫、勘七郎君のこと!?
それが万事屋の前に捨てられてて
銀さんがどっか連れてちゃったって!?」
「だからさっきからそう言ってるじゃねーか
同じこと繰り返すんじゃねーよめんどくせーな」
「すみませェェん!!!」(土下座
説明的な口調すぎて逆に癇に障るよね。(黒)
「け、けどヤベーよ
橋田屋の旦那、浪人を使って血眼になって探してるって話だぞ
殺られちまうよ!あのオッサン、ただの商人じゃねーんだって!
なんか黒い噂の絶えねー危ねーオッサンなんだって!
しかもそれを調べるってバカか!
帰ろう!オジさんと一緒に帰ろう!酢昆布買ってあげるから!」
なかなかすごい噂を聞いていたらしい長谷川さんは、
一気にまくし立てるようにそう言った。
「てか、一人でしゃべり過ぎじゃない?」
「まあ落ち着いてください、さん。
とにかく、そんな話を聞いたら余計に帰れないですよね」
新八くんの問いかけに、私も無言で頷く。
「やっぱり、何か裏があるよね」
「はい」
「その通りネ!
酢昆布ぐらいで釣られる尻軽女と思ったかコノヤロー!
何個だ!?一体酢昆布何個で釣るつもりだった?
まさか四個じゃないだろうな!
四個もくれるんじゃないだろうな!」
「神楽ちゃん、静かにして」
「アハハ……」
とにかく、お房さんが連れて行かれた部屋に向かわないと!
「ここですか?あの女の人が連れ込まれた部屋は?」
「ちょっと覗いてみようか」
「そうですね……」
「相も変わらず強情な女よ。勘太郎も酔狂な男だったが、
こんなうす汚れた卑しい女のどこにホレたのやら、皆目見当つかんわ。
ええ?ひとの息子をたぶらかし死なせたうえ、
あまつさえその子をさらうとはこの性悪女が」
橋田屋の主人は、そう言いながらお房さんの顔をつかんだ。
「勘七郎をさらったのは、あなた達の方でしょう。
あの子は私の子です、誰にも渡さない」
「お前のような女から橋田家の者が生まれただけでも
恥ずべきことだというのに」
ひどい…………。
「勘七郎に母親はいらん。
いや、橋田家にお前のようなうす汚れた女はいらんのだよ。
あの子は私が橋田屋の跡とりとして立派に育てる。
その方があの子にとっても幸せなことだろう。
お前のような貧しい女が一人で子を育て
幸せにすることができると思っているのか?」
「さん、これって……」
「…………うん」
が説明してくれた通り、かなり複雑な話だよね……。
「オイ、そこで何をしている」
「「「「!」」」」
「使用人か?」
次の行動に移らねばと思っていた私たちの前に、浪人らしき奴らが現れた。
って、なんてタイミングで来るの、こいつら!
「あっ……アレでございます。
この者達三人、新入りでございまして……あの、
ビルを案内していたところでして」
「そーでごぜーます、御主人様」
「いや、御主人様じゃないから」
「なんだ?なんかこんなん言われた方が嬉しいんだろ、男共は」
「ダメだよ!神楽ちゃん、そんな事言ったらダメ!!」
って、私が真選組の隊服を着ていることには、
一切ツッコミはナシなのね……。(まあ、その方がいいけど)
「それじゃあ、私達は失礼しま……」
長谷川さんがそう言って、この場を去ろうとしたとき。
「待ちな」
誰かに引きとめられた。
「くさいねェ、ねずみくさいウソつきスパイの匂いだね」
って、既にバレてる!?
そんな私の焦りをよそに、その男は続ける。
「今日はいろんな匂いと出会える日だね。
でも、そろそろ鉄くさい血の匂いがかぎたくなってきたところさね」
もしかして、こいつがの言ってた…………
「闘り合ってくれるかィ、この人斬り似蔵と」
やっぱり、こいつが岡田似蔵…………!
「目玉がなんで2つあるか知ってるか?
それは片方拷問で失っても生活できるようにだ」
「これで最後だ。勘七郎をどこへ隠した?言え」
「…………」
「えぐれ」
「うわあああ!!」
「!」
「…………何事だ?」
しまった、橋田屋のいる部屋に入っちゃったんだ……!
「こいつはお楽しみ中すいませんね。
ちょいとあやしいネズミを見つけたもんで」
「! そなた達はお登勢殿のところにいた……。
おやおやこんな所までついてくるなんてお節介な人達だ。
私事ゆえこれ以上はお手伝いいらぬと申したはずですが?」
「心配いりませんよ、僕らも私事できてるんで。
それにしても孫思いのおじいちゃんにしちゃあ
ちょっとやり過ぎじゃないですか?賀兵衛さん」
橋田屋が遠回しに邪魔だというようなことを言ったけど、
新八くんも負けじと言い返す。
「あなた方もだたのお節介にしてはやり過ぎですよ。
世の中には知らぬ方がいい事もある……
それに、そのような幕府の人間を連れてこられては困りますね」
「…………」
橋田屋は、私の方を見ながらそんなことを付け加えた。
「困るも何も、もう遅いよ。
こんなことがあるって解った以上、私は真選組の一員として放っておけない」
辺りに一触即発のような空気が漂った。
♪♪♪ あとがき ♪♪♪
前回から引き続き橋田屋の話になってますが……
やはりうまく絡めない(>_<)
どんだけ下手なんですか、私。って感じです;
でも、とにかくどんどん進めたいので頑張ります!
早く紅桜篇を……!!(本音