「…………ちっ」
自分のこと、ボンゴレのこと、10代目のこと……
ふと色々と考え始めたら、堂々巡りになってしまった。
それにいらつき、舌打ちをした直後。
ピンポーン
何の気なしにインターホンが鳴った。
正直めんどくさくて出る気になれなかったけど、
なんとなく出なきゃなんねぇという思いに駆られ、出てみる。
「……はい」
『あ、獄寺くん? 突然ごめんね、俺、ツナだけど……』
「10代目!?
す、すみません、今すぐ開けます!!」
『え、あ、獄寺く……』
ガチャッ
10代目の話を最後まで聞く前に、
俺はインターホンの受話器を戻し玄関へと急いだ。
「お待たせしました、10代目!!」
この先に10代目がいらっしゃると思い、俺がドアを開けると。
「よお、獄寺!」
「やっほー、隼人!」
そこにあったのは、俺を脱力させる二人の顔だった。
「……って、なんでてめぇらが居るんだよ!」
「いや、ツナの家で宿題やってたんだけどさ」
「結局解んないから、隼人に教えてもらおうってことになったの」
俺の問いかけに対し、山本とはあっけらかんと答えた。
「ご、ごめんね、獄寺くん!
俺は連絡もなしに訪ねるのはやめよう、
って言ったんだけど……」
俺が二人にキレているからか、
10代目が気を遣ってくださったらしくそんなことを口にする。
だから、俺は慌てて言った。
「10代目は気にしないでください!
馬鹿なのはこいつら二人ですから」
「馬鹿ってひでぇな〜」
「そうだよ、失礼だよ、隼人!」
「どっちがだ!」
素でボケを繰り返す二人に、思わずツッコミを入れてしまった。
「と、とにかく……どうぞ、10代目!」
「う、うん、ありがとう獄寺くん」
そうして俺は、10代目(+ボケ二人)を家の中に招き入れた。
そのとき、一人だったときに堂々巡りをしていた考えは
いったんどこかへ消え去っていた。
「それで10代目、宿題の解らないところってのは?」
「あ、うん……ここなんだけど」
教科書を開きながら、10代目が解らない箇所を指差す。
「ああ、ここですか。ここは……」
そうして俺は、10代目に説明し始めた。
「……というわけなんです」
「なるほど、そっか……
すごいよ獄寺くん、ありがとう!」
「い、いえ! お役に立てたなら光栄っす!」
どうやら10代目は俺なんかの説明で理解してくださったらしく、
もったいない言葉をくださった。
「獄寺、次は俺に教えてくれよ」
「あたしもあたしも!」
うるせぇ、てめぇらなんかに教えるかよ!
ギャーギャー騒ぐ二人に、そう言ってやろうとしたけど。
「ごめん獄寺くん、教えてあげてくれないかな?」
俺も二人が解んないとこちょっと曖昧だし、
と10代目は続ける。
「じゅ、10代目がそうおっしゃるなら……」
本当は面倒だったが、10代目に言われては断れない。
やったー、なんて騒いでいる二人に、俺はしぶしぶ教えてやった。
「ありがとな、獄寺!これで完璧だぜ」
「あたしも全部解った! ありがとう、隼人」
二人は馬鹿のくせに理解力はいいから、
それほど時間もかからず問題を解いていった。
10代目を含め、
もう必要ないという様子で教科書やらを鞄にしまう。
そうしてひと段落したときに、
先ほどまで堂々巡りをしていたあの考えが、ふと蘇った。
「…………」
また先ほどと同じように、舌打ちをしてしまいそうになる。
だが、10代目の手前、なんとか我慢した。
「あー、なんか腹減ったなぁ」
「うん、あたしもー……
…………」
山本とが、そんなのん気な会話をしている。
だが俺は、そんな二人につっこむことも忘れてしまっていた。
「…………ねぇ、ツナ、山本!
あたしお腹すいて我慢できないから、なんか買ってこない?」
がそんなことを言った。
「んー……
このままみんなでマックとかに行った方がいいんじゃねぇか?」
山本がそう返したが、は首を横に振る。
「ううん、買ってこよう!
あたしマック昨日も食べたから駄目」
ごめんね、と笑いながらは言った。
山本も山本で笑いながら、「仕方ねぇな」と言っている。
「じゃあ、隼人。
あたしたち、ちょっと買い物行ってくるね」
隼人の分もちゃんと買ってくるからね、なんて言いながら
は10代目と山本を連れて部屋を出ていった。
「…………助かった」
正直なところ、そう思った。
きっとこのままこの堂々巡りな考えをしていれば、
俺はいらついて機嫌が悪くなる。
無いとは思うが、
そうなれば10代目に当たってしまうかもしれない。
その前に、が10代目と山本を連れ出してくれて良かった。
……一人になれて、良かった。
三人が帰ってくる前に、この堂々巡りから抜け出せればいいわけだから。
その時間ができて、本当に良かったと思った。
「なあ、。
マック以外でも外で食べれば良かったんじゃねぇのか?」
山本が、最もなことをに問いかける。
ツナも同じことを考えていたようで、彼女の答えを待っている。
「うーん……まあ、いいじゃん。
あたし隼人の部屋好きだし、そこでご飯食べたかったんだよ♪」
「そっか」
「うん!」
らしい理由だな、と山本は返した。
ツナは未だに納得していないようだったが、何か感じ取ったらしく、
それ以上は聞かないでおくことにしたようだ。
「…………ん?」
ケータイが鳴った。
何かと思い開いてみると、からのメールで。
『一人で、ゆっくり考えてね。
大丈夫になったらメールください、そしたら二人を連れて戻ります』
「なんだよ…………」
どうして突然、と思わないこともなかった。
買出しに行ってくるなんて、確かになら言いそうなことだけど。
だけど、全員で外に出る、
という山本の提案を断ったところで気付けば良かった。
あいつは大勢で騒ぐことが好きだから、
どっちかっていうと、山本の提案に賛成しそうなのに。
それなのにあいつは、その提案を断った。
「…………気付いてたのかよ」
俺の、この堂々巡りをしている状況に。
そして、そこから抜け出すために一人になりたかったことにも。
普段騒がしいから、見落としそうになる。
でも、違うんだ。
あいつは、いろんなものを見ていて、そして理解しているんだ。
いつもの俺に戻ったら、電話してやろう。
早く戻ってきてれ、ってな。