「さてと……
 目的は達成できたわけだけど、これからどうする?」

「うーん……
 自分用に買ったお菓子、食べたいかも〜」

「そうだよねぇ……」


あたしもこのお菓子すごく気になってるし、
食べたいな、とは思ってるんだけど……





「何かいい場所があるといいんだけど……
 えーと……」


あっ、あそこに地下街のマップがある!





「あのマップでちょっと調べてみよっか」

「うん〜」


あーちゃんと一緒に向こうに見えるマップまで移動し、
この地下街のお店を一通りチェックしてみる。





「えーと……」


まず現在地がここで……















「なんだよこの地図、解りにくいな……
 そもそも今はどこなんだ?」

「あ、今いるのはここですよ。
 この『現在地』って書いてあるところ」


同じようにマップを見ている誰かが、そうつぶやいて……

ちょうど現在地を見ていたあたしは、
深く考えずにそれを教えてあげた。





「あ、どうも……
 …………って、あんた……!」

「え、……火神くん!?」


お礼を言ってくれたその“誰か”に応えようと、
顔を上げてみると……。

そこには、見覚えのありすぎる人の姿があった。





「なんでさんがここに……
 つか、一緒に居るの紫原じゃないすか」

「うん、今日はもともと
 一緒にお買い物する約束だったんだ」


不思議そうな顔をする火神くんに、
あたしは簡単な説明をする。





「ちょっと〜、なんで休みの日に
 火神の顔なんて見なきゃいけないわけ〜」

「んだと! それはこっちのセリフだ!」

「ちょ、ちょっと、2人とも……!」


もう、この2人ってこんな感じだったっけ?

試合中はみんな目の前のプレイに集中してるけど、
普段ってこんな感じになるの? うーん……


……って、考え込んでる場合じゃなかった!










「か、火神くん!
 もしかして、目的地に行くのに迷ってる?」

「あー……ま、まぁ、そんなとこっす」


2人が険悪になりきる前に話しを戻そうと、
あたしはそんなことを言った。

問われた火神くんは、ちょっと罰が悪そうにしつつ肯定する。





「火神、だっさ〜」

「いちいちうるせーんだよ、お前は!!」

「まぁまぁ、あーちゃん。
 かくいうあたしたちも、どこに行こうか迷ってたわけだし」


同じようなものじゃないかな?





「あたしたちは行く場所自体に迷ってるけど、
 火神くんは目的のお店とかあるんだよね?」

「そりゃあ、まぁ」

「なんていうお店?
 確かにこのマップ解りにくいから、あたし探してあげるよ」


そう提案すると、火神くんはお店の名前を教えてくれる。

スポーツ関連の商品を売っているお店とのことなので、
ジャンルも照らし合わせながら店名を探していくと。










「……あっ、あったよ!」

「マジすか!」

「うん!
 今いるところと、同じ階みたいだね」


でも、ちょっと行くまでが複雑そう……。





「……あっ、そうだ。
 火神くんが嫌じゃなかったら、一緒に行こうか?」

「え、それは助かるけど、いいのか? ……ですか?」


あたしの提案に対し、
一瞬あーちゃんのほうに視線を向けた火神くんが
遠慮がちに問いかけてくる。










「あーちゃん、いいかな?」

「どーせちんのことだから、
 ダメって言っても聞かないでしょ〜」


ため息をついたあーちゃんが、そう答えた。
それはイコール、行ってもいいよってこと。





「ありがとう、あーちゃん!」

「別に、火神のためじゃないからね〜
 ちんのためだから」

「うん」


そんな言い方をしつつも、あたしの考えを尊重してくれる。
やっぱりあーちゃんは、優しいな……なんて考えた。










「それじゃあ……
 みんなで火神くんの目的地に行ってみよっか!」

「うす」

「しょうがないね〜」




















「わあ、思ってたより広い……!」


フロアのこの辺一帯を思いっきり使ってるし……
なんだか取り扱ってる商品の数も、すごく多そう。





「火神くんは、何を見るの?」

「バッシュを見ようと思ったんすよ。
 なんかのときのために、予備は持っておこうって」

「あ、なるほど」


確かに、あのときは急に壊れちゃったとかで
(自分に合うサイズを)探すのに苦労したらしいし。





「このお店は、サイズもけっこうありそうなんだね」

「どうやら、そうらしいっすよ。
 黒子が、桐皇の桃井から聞いたらしくて」


なるほど、さつきちゃんの情報だったら間違いないだろう。










「んじゃ、オレはバッシュのコーナーに行くんで」

「うん」


あたしも、せっかくだからお店の中を見てみようかな。






「あーちゃん、あーちゃん。
 せっかくだから、バスケのコーナーに行ってみようよ!」

「え〜?
 なんでここまで来てバスケなの〜」

「いいからいいから」


あまり乗り気ではないあーちゃんを引っ張りながら、
あたしはバスケのコーナーに向かった。




















「……さん!」


少し離れたところから呼ばれ、振り返ってみると。
先ほど別れたきりになっていた火神くんが、駆け寄ってきた。





「良かった、まだ店にいたんすね」

「うん、せっかくだから見て回ってたんだ」


今はちょうど、一回りし終わったところだった。
(ちなみにあーちゃんは、
 疲れたと言ってお店を出たすぐのベンチに座っている)





「火神くんはどうだった?
 いいバッシュ見つかった?」

「おかげで予備のバッシュも買えたっす。
 ここかなり品揃え良くて」


火神くんのサイズに合うものも、けっこう置いてあったとかで
何かあったらまた来よう、なんて言っている。

どうやら、このお店が気に入ったみたいだ。










「……って、オレの話しじゃなくて!
 さんに用があって、追ってきたんだ。ですよ」

「あ、そうだったの?」


言われてみれば、さっき慌てて駆け寄ってきてたよね……。





「その……これ、なんすけど」


そう言って火神くんは、
かわいくラッピングされたものを差し出してくる。





「これ……
 さっき渡せば良かったんすけど、忘れてて」

「……もらっていいの?」

「はい」


開けてもいい、と火神くんが言うので、
お言葉に甘えてさっそくその包みを開けてみると……










「わあ……かわいいブレスレット!」


バスケがさりげなくモチーフになってる、
すごくおしゃれなブレスレットだった。





「いつもしてるペンダントと似てたんで、
 喜ぶかなと思ったんすけど……」

「うん、すごく嬉しいよ!」


確かに、このペンダントとお揃いっぽい感じがする。

……前に緑間くんと高尾くんからもらったペンダント、
いつも付けてるから火神くんも覚えていたんだろう。












「でも、誕生日でもないのにもらっちゃっていいのかな」

「いーんすよ、別に。
 そんな高いもんじゃねぇし」


どうしても気になるってんなら、今度それ付けてきてください。

火神くんが微かに笑ってそう言ってくれたので、
あたしは余計なことは言わず「ありがとう」とだけ伝えた。





























あんたの嬉しそうな顔が見れれば、それでいいから



(だから 笑った顔を見せてくれ)