奴と出会ってから一年1年が経ちました。
皆さん、あたしの今の状況を聞いてくれませんか?
「さん、おはようございます!」
「死ね」
そう言ったあたしは、そいつに渾身の蹴りをお見舞いする。
「ひどいです、さん……!」
「うっさい、黙れ」
登校中だったあたしのところへ走りよってきて、
その上抱きついてきたこの男……
あたしは今、こいつにものすごく困っています。
(ちなみに、抱きつかれる前に蹴飛ばして阻止してます)
「一緒に学校に行きましょう☆」
「語尾に☆マーク付けんな、死ね」
ナッポー頭のこの男……名を、六道骸と言います。
今、「えっ、カッコいい名前!」などと思った方、
それは大きな間違いであることをあたしは主張します。
こいつはとんでもない奴です。
一言で言えば、そう……
「でも、どうせ同じ方向だから、ついて行っちゃいますけどね☆」
「プチッ」
怒りのバロメーターが頂点に達したあたしは、
それを自身の右手に込めた。
「ああ、さん……また腕を上げましたね。
平手のキレが増しています」
「誰かさんのおかげでな〜」(棒読み)
「惚れ直しました!」
「キモッ!!」
そう、こいつは「変態」なんです。
それは確か、およそ1年前のこと……
『あー、やっぱ降ってきちゃったか』
だけど、ちゃんと傘は持ってきてあるしね。
『何も問題ないし……
……ん?』
さっさと帰ろうとしたそのとき、
昇降口のところで立ちすくんでいる人に気づいた。
『……僕としたことが、ぬかってしまいましたね』
そのときのそいつが、傘を忘れたらしい六道骸だったのだ。
『…………』
他の人なら、喜んで傘に入れてあげるところだ。
でもあたしは、あいつが転入してきたときから
良くない噂が立っているあいつを警戒していて……
このまま帰るべきかとも思ったんだけど、
良心が痛んだから仕方なく傘に入れてやることにした。
すると……
『なんて優しい人なんでしょう……!
お名前を教えてください!』
『え……、だけど……』
『さんですね! お名前も素敵だ!
僕とあなたは、運命の赤い糸で結ばれていますね☆』
『…………』
その瞬間、思った。
こ い つ 、 別 の 意 味 で 危 険 だ 。
それ以来なんですよ、こいつの付きまとわれているのは。
はっきり言って、完全にストーカーの領域です。
警察に駆け込もうとも考えましたが、
毎回こいつに阻止されてしまうので出来ません。
これといってあまり良い対策も見つからず。
だけど、とにかく……
「逃げるが勝ち!」
六道骸のスキをついて、あたしは猛ダッシュをしかける。
「あっ、待ってください、さーん!」
「ぎゃああ!」
追ってきたんですけど!?
「来るな変態!」
「あなたが逃げるからですよ☆」
「だから語尾に☆つけんなっつってんだろーが!!」
「照れてるんですか?
可愛いですねぇ、さんは☆」
こいつ、全く聞いちゃいねぇ!
「……おはよう」
「〜、またやってるんれすか?」
「千種と犬!
いいところに来てくれた、助けて!」
「…………無理」
なんですと!?
「そんな訳ないだろ、早くなんとかして!」
そしてあたしは、いつものように犬&千種を盾にします。
「犬、千種……
僕のさんとずいぶん仲が良さそうですねぇ」
「誰が誰のだっつーの!」
「あなたが僕のものです☆」
「キモッ!!」
それ、勝手な妄想じゃん!
「あんたのものになった覚えはない!
さらば!」
そうしてあたしは、再び猛ダッシュをしかける。
「さん、待って!!」
いや、待てと言われて待つ奴なんか、
いないと思うんですけど……!?
「はあー……」
やっと学校に着きました。
登校するだけで疲れるって、どんな状況だよ……。
「とにかく、これで放課後までは安心……」
「あ、さん☆」
って、廊下にナッポー!?
「偶然ですね☆」
「んな訳あるか」
「また照れてるんですか?
本当にあなたは可愛いですねぇ」
「オイ!」
聞いて!
とりあえずあたしの話を聞いてよ!
勝手に会話を進めるんじゃない!!
「……んで、教室までやって来て何の用?」
いつも教室まではついてこないんですよね、何故か……。
「ああ、そうでした……
本当はさっき渡そうと思っていたのですが、」
「ん?」
「どうぞ、こちらを」
なんだ、この包み……
「プレゼントですよ♪」
「なんで突然?
それとキモいから♪マークも付けんな」
「ひどいです、さん……」
いや、だって……
不良の頂点とか言われてるやつが、
♪マークなんて気持ち悪いだろうが。
「僕とあなたが出会ってから1年経ったので、
その記念のプレゼントです」
「記念のプレゼント……」
まあ、確かに約1年経ったけど……
そんなこと覚えてたんだな。
もしかしてこいつ、意外にいい奴かも……
「中身は婚約指輪です☆」
ドゴォッ!!
「くっ……
いいパンチでした、さん……」
そう言い残して、こいつはその場に倒れた。
「あー、もう!!」
やっぱりこいつは変態だ!
あの日に戻れたら
(絶対に、傘に入れたりなんかしないのに!)
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サイト1周年企画の第6弾です。
当時、骸さんの変態ギャグ夢が流行っていて(?)
そういえばうちのサイトには居ないな……
と思って書いたんだと思います。
ただ、もうわたしの中では完全にカッコいい人なので
今はギャグに走れない感じはありますね。
修正して、ギャグ感が薄れていないといいのですが……。