※注:これは、原作で奈々生ちゃんと人間になった巴衛が
御影社を去った後、再び戻ってくるまでの合間のお話イメージです。

今回、ヒロインはほぼ眠っていますので、名前変換はありません;










「御影様〜! 
 僕、ちょっと外で掃除してきますね〜」

「ええ、お願いします」


巴衛くんに代わって、これからは僕ががんばらないと!

奈々生ちゃんももう居ないけど、
彼女ががんばって守ってきた社だから……

ここに残った僕が、守っていかないとね。





「さ〜とて……
 …………ん?」


まずは鳥居の周りから、と、箒を握り直したとき。
ふと何かが視界に入った。










「……!」


誰か倒れてる!

すぐに気づいた僕は、箒を投げ出して
その人のそばに駆け寄る。





「ねえ! 君、どうしたの?
 大丈夫? ねえ!」


倒れていたのは、女の人だった。





「ねえってば!」

「…………」


抱き起して声を掛けてみるものの、何も返事が無い。
死んでいるわけではないと思うけど、顔色はとても悪かった。










「……ここに居ちゃだめだ」


よくわからないけど……具合が悪いんだったら、
いつまでもこんなところに居るべきじゃない。

そう思った僕は、彼女を抱きかかえ急いで社の中へと戻った。




















「おや、どうしたんですか、瑞希くん。
 まだ掃除を始めてから、そんなに時間が……」

「御影様、大変なんです!
 鳥居のそばで、この人が倒れていて」

「……! この女性は……」


彼女を見て、御影様は一瞬驚いたような顔をする。





「……いえ、話は後です。
 顔色が悪いですし、とにかく休ませないと」


もしかして、御影様の知ってる人……いや、神なのかな。
大国主様みたいに、急にやって来たとか?











「鬼切、虎徹、君たちは先に行って
 布団を敷いてあげてください」

「「お任せください!」」

「瑞希くんは、そのまま彼女を運んでもらえますか」

「はい」


……いや、それは後で聞いてみよう。
とにかく今は、この人を休ませないと!




















「……うん、だいぶ顔色も良くなってきたし、
 このままゆっくり休んでもらえば大丈夫そうですね」


――あれからしばらくして。
彼女の様子を見に行くという御影様に、僕もついていった。





「…………」


確かに、もう大丈夫そうだけど……。










「……あの〜、御影様。ちょっと質問なんですけど」

「はい、何でしょう」

「この人、御影様の知り合いなんですか?
 いや、人っていうか……もしかしてどこかの神様?」


僕の言葉に、御影様はう〜んと考え込む。





「僕の知っている方ではありません。
 それにおそらく……この方は人間でしょう」

「なーんだ、そうなんですか」

「ええ。ですが、この方はとても異質です。
 人間なのは明らかなのに、強い神気をまとっている」


神気をまとう、人間……?





「もしかして……
 奈々生ちゃんみたいな土地神とか?」

「それも十分考えられますね」


そこまで深く考えずに口にしたけれど、
御影様は反論しなかった。










「何故うちで倒れていたのかも、気になりますし……
 この方が目覚めるのを待って、話を聞いてみましょう」

「はい」

「それまでは瑞希くん、君がこの方を見てあげてください」

「わかりました!」


この人のことは、まだよくわからないけど……
でも、ここは僕の神使としての腕の見せ所だよね!





「よーし!」




















「うーん、まだ眠ってるみたい」


さっきは、あんなに意気込んだものの……

何度か様子を見に来ても変わらず眠ったまま、
この人は全く起きる気配を見せなかった。





「……でも、ひとまず大丈夫かな」


さっき御影様と一緒に様子を見たときよりも、
また少し顔色は良くなっているみたいだし。





「今日は寝る前にまた様子を見て、それで……」


そうつぶやきながら、部屋を出ようとしたそのとき……










「う……」


背後から微かに声が聞こえた。





「……!」


その微かな声を聞き取った僕は、慌てて後戻りし……





「……う……ううん……」


そばにしゃがんで、顔をのぞき込んでみると。
ずっと閉じられていた瞳が、ゆっくりと開かれた。





「……!」


この人の瞳……
すごく綺麗な赤色で、まるで……





「…………」


その赤色の瞳が、僕をとらえる。





瑞希……

瑞希、こっちに来て。梅が綺麗よ






そう、この赤い瞳はまるで、僕の大好きな――……






















僕の大好きな、梅の花だった。


(その瞳から 目がそらせなかったんだ。)