ここに入学してから月日が流れ……
とうとう卒業する日がやって来た。
オレは、卒業したらヴァリアーに入隊することが決まっている。
だけど、アイツはどうなんだ……?
そう思いながらも、なんとなくずっと聞けないでいた。
「う゛お゛ぉい、」
「……あっ、スクアーロ!」
振り返ったそいつは、
そのままオレの方へ向かって走ってきた。
「どーしたの?」
「い、いや……
お前に聞きたいことがあるんだけどよぉ」
「うん、何?」
なんか、きょとんとしてて可愛い……
……じゃねぇ!
危うく本題を忘れるとこだったぜぇ!
「お前よぉ……卒業したらどうすんだ?」
「卒業したら?」
「オレはヴァリアーに入るが、お前はどうなんだ?
どっかのファミリーに入んのかぁ?」
今さら卒業に対するら寂しさだとか、そんなものはない。
ただ、こいつの進路次第では……
今までみたいに、頻繁に会うこともなくなっちまう。
オレは、それだけが気がかりだった。
「あたしもね、すっごい有名なとこに入るの!」
「そ、そうかぁ」
「うん!」
確かにこいつの力量だったら、
有名どころにスカウトされても不思議じゃねぇ。
だから納得はできた、けど……
そうなると、やっぱり会う機会は少なくなりそうだ。
考えていなかったわけじゃねぇが、いざその状況となると……。
「でもさ、頑張った甲斐があったよね!
お互いすごいとこにスカウトされちゃったし」
「まぁな」
「頑張ろうね、スクアーロ……
あたし、負けないよ。スクアーロも負けないで」
「誰に言ってんだぁ」
「あはは、最強剣士のスクアーロ様だよね!」
……は強いな。
冗談を言うほど、余裕があるんだ。
オレなんて、頻繁に会えないことを嘆いていたってのに、
こいつはもう先のことを考えている。
もっと見習わねぇとなぁ……。
「あ、スクアーロ!
そろそろ卒業式が始まるみたいだよ」
「じゃあ行くかぁ」
「うん!」
そしてオレたちはこの学校を卒業し、別々の道に進んだ。
「…………」
ヴァリアーに入隊する日。
入隊式とやらをやるからと言われ、
朝早くからここ、ヴァリアーのアジトまで来ていた。
「ずいぶん立派だなぁ」
いくら使ってんだよ、この屋敷……
……いや、そんなことよりも
入隊式をやるっつー部屋に行かねぇとな。
「確か、こっちだっつー話だよなぁ……」
「……!」
そうして角を曲がった俺の目に映ったのは……
卒業式で別れたきりの、だった。
「あ、スクアーロ〜」
「おおお、お前っ!
なんでこんなところに……!」
どういうことだぁ!?
「なんでそんなにビックリしてんの?」
「驚くに決まってんだろぉ!
なんでお前がここにいんだぁ!?」
どーゆーことか説明しやがれ!!
「そんなの決まってるでしょ?
あたしが今日、ヴァリアーに入隊するからよ」
「はあぁ!?」
あっけらかんと答えるに、オレはまた驚いた。
いや、ヴァリアーってお前……
「聞いてねぇぞぉ!!」
「当たり前だよ、言ってないもーん♪」
「お、お前……謀ったなぁ!?」
わざとオレに言わなかったんだ……!
「てゆうか、『謀った』なんて人聞きの悪い。
ただ、言わなかっただけでしょ?」
「それは……」
「別に嘘ついてないし、騙してなんかないもんねー」
「くっ……」
確かにそうだけどよぉ……
「だいたいさー、スクと頻繁に会えないって分かってたら
あたしもっと落ち込んでたと思うんだよねー」
確かに、卒業式でのこいつは異様なほど明るかった。
「また会えるのが分かってたからだなぁ!?」
「もち♪ じゃなかったら泣いてたよ、あたし」
「っ……」
その『泣いてたよ』っつー言葉は嬉しいが……
オレはそれよりも、謀られたことが悔しかった。
「お前なぁ……
オレのセンチメンタルなモノローグどうしてくれんだぁ?」
「やっだー、スクアーロそんなモノローグをお送りしてたの?
やばい、ウケる〜!」
「…………三枚におろしていいかぁ?」
冗談じゃねぇぞぉ……。
「それよりさ、みんなここに住み込むらしいじゃん?
任務のとき以外は一緒にいられるね、スクアーロ♪」
「うっ……」
ま、待てオレ!
丸くおさまりそうになってるけど
こいつの術中にハマっちまったらダメだぁ!
「と、とにかく謝れ!」
「もー、何が不服なのよー!」
「不服も何も、そもそもお前が……」
「うるさァい!!」
「「……!!」」
に言い返そうとしたオレの言葉を遮り、
ヴァリアーの隊員らしい男が叫んだ。
どうやら、入隊式を取り仕切る奴らしく……
「お前たち、早く部屋に入りなさい!!」
部屋の前で言い合いをしていたオレたちに、
キレちまったようだ。
「くそっ……お前のせいだぞぉ?」
「ぐちぐちうるさいスクのせいでしょーが……」
そんなことねぇ!
「ま、それよりさ……」
「ん?」
「おんなじ進路なんてスゴイと思わない?」
「……まぁなぁ」
「ということでね、スクアーロ」
「……?」
「信じてみるかい?僕らの運命!!」
「何が運命だ、バカかぁ」
そう言いつつも、信じてみたいと思うオレがいた。
+++++++++++++++++++++++
書いたとき、卒業シーズンだったみたいです。
入隊式とかあるのか謎ですが、まぁ一応……。