――あれから数日が経って。

どうして彼が、あんな状態になっていたのか……

私が少し落ち着いてきた頃、
沢田くんや山本くんが説明してくれたの。




あまりに次元の違いすぎる話で、
全てを理解することは出来なかったけど……

とにかく、彼は……彼らはマフィアで、
何かの抗争があったみたい。






「そんな、マフィアだなんて……」


初めは信じていなかったけど、
あんな状態の彼を見てしまっては信じるしかない。

それにきっと……
沢田くんは、嘘をつくような人ではないと思うから。





「こんな……
 こんな悲しい想いなんて、したくなかった……」


でもやってきてしまった――……















「……さん?」

「あ、沢田くん……」

「今日もここで歌ってるの?」

「うん……」


私は今も、変わらずここで歌っている。
私の初めてのお客さんは、もう居ないけど……

こうして沢田くんや、ときどき山本くん……

それに彼らの友人である笹川さんや黒川さんも、
聴きにきてくれるの。





「本音を言うと、ここで歌うのは少しつらいの。
 でもやっぱり、歌うならここがいいから……」

さん……」

「……やだ、あんなに泣いたはずなのに、私っ………」


まだ涙が出てくるなんて………







さん……我慢すること、ないと思うよ」

「ありがとう、沢田くん……
 でも、今日は泣かないって決めたの」

「え……?」

「今日は、泣かないでちゃんと歌い切る。
 獄寺くんのための、……鎮魂歌(レクイエム)だから」








彼と出会ったのは、偶然かもしれない




必死で叫ぶ私の声を


あなたは きいてくれたね


すてきな言葉を 私にくれたね





あのとき傘を差してくれた


不器用な優しさ


あなただからこその 優しさ




私にとっては かけがえのない想い出





よく怪我をしているあなたを


見るのは少しつらいと思うよ


できれば あまり


無茶はしないでね





あなたを想って書いた


この新しい歌……





どうして こんなに


あなたのことばかり 考えているのかな





不思議だね


でも あなたが聴いてくれるから


今日も私は歌うよ


この、青い空の下






彼と出会ったのは、偶然なのかもしれない






でも、運命だと信じたいよ――…………



















「…………」


ごめんね、獄寺くん。
今の私には、歌うことしか出来ないけど………





「少しでも……あなたの慰めになれば……」



ありがとう……隼人くん。





私はあなたが



大好きでした――…………





















Good-bye days


(もう二度と会えないあなたに この場所から鎮魂歌を)




さようなら あなたと過ごす大切な日々よ


さようなら 大好きなあなたよ












Good-bye days