目を開けて身体を起こしてみると、ようやく頭が覚醒してきた。
「……ん？」
キッチンのほうから、なんか音が……。
音の正体についてはなんとなく予想がついたけど、
あたしはひとまずキッチンに行ってみることにした。
「…………ハル？」
そこには予想通り、お皿やらコップを洗って後片付けをしているハルの姿があった。
「おはよう、」
「あ、おはよう……
って、ごめん！ あたしも片付けする！」
「いや、いい。疲れてるんだろ？
昨日遅くまで準備してたみたいだからな」
ゆっくりしてろ、と、言ってくる。
「そんなわけにはいかないって！
とにかく、あたしも一緒に片付けする！」
ハルの気持ちはありがたかったものの……
それじゃ納得のいかないあたしは、
キッチンに常備してある自分用エプロンを手に取る。
「……じゃあ俺が水で流してくから、お前が洗ってくれ」
「解った！」
エプロンを着けたあたしはハルの隣に並んで立ち、食器を洗い始めた。
「いや〜、それにしてもハロウィンパーティ楽しかったな〜」
最後はみんな寝ちゃってグダグダだったかもだけど……
でも、それでもすごく楽しかった！
「協力してくれてありがとー、ハル」
「いや……お前が楽しめたなら、それでいい」
ちょっと照れているのか、顔を赤くしながらそう言ってくれた。
「お前は本当に、こういう行事が好きなんだな。
準備してるときも楽しそうだった」
「うん、大好きだよ！」
「そうか……なら、良かったな」
「うん」
ハルが微かに笑った。
あんまり表情を変えない子だけど、こーゆー風にたまに笑顔を見ると
なんかすごく和むってゆーか……ホッとするんだよね。
「……よし、片付け終わりだね！」
「ああ」
口を動かしつつ手もしっかり動かしていたので、
二人でやったら片付けにさほど時間は掛からなかった。
「あっ、そーだ、ハル！」
「ん？」
「せっかくだからツーショットで写真撮ろ！」
そうだよ、よく考えたら撮ってないじゃん？
せっかく不思議の国で合わせたのにもったいない！！
幸い、ハルもまだ着替えてなかったし！
チャンスは今しかないよ！！
（後で冷静に考えたら、この格好で片付けしてたのかわいすぎだよね）
「…………解った」
あたしが引かないとゆーことを感じ取ったのか、ハルは割とすぐに了承してくれた。
「ありがとー、ハル！
じゃ、さっそく撮ろう」
そうしてポケットに入っていたケータイを取り出し、
起動して自撮りできるようにカメラを切り替える。
「これって、けっこう手ぇ伸ばさないとうまく写らないね……
ハル、もっとこっち寄って」
なんか今、話題のなんとかスティックってやつ？
アレあると自撮りうまく出来るってテレビで特集してたよね……
……って、今そんなこと言ってもしょうがないんだけど。
「……あっ、こんな感じかなぁ。
じゃー撮るよ？」
「ああ」
ハルの返事を確認して、あたしはシャッターボタンに手をかける。
「いくよ〜！はい、チーズ！」
「ん」
ちゅ
「…………！！！？？？」
カシャッ
「あ、……え…………？」
いや、ちょっと待て……
今、シャッター音する直前に、なんか……。
「ちゃんと撮れたか？」
隣に居るハルは、なんでもないよーな感じで問いかけてきた、
けど、今……絶対何か頬にやわらかいものが触れたと思う。
そう思いつつも、恐る恐る撮ったばっかりの写真を確認してみると……
「…………！！！？？？」
やっぱりだ……！！！
写真を確認すると、ハルがあたしの頬にキスをしていた。
「は、はははハル！何してんの！？」
「何って、キス」
「そんなのは解ってんだよぉ！！」
なんでしたのかってゆーことを聞いてんだよ！！
てか、何なの？
このネタ（？）実際にやる人いたの！？
「…………」
抗議の意味を含め、ハルを見つめるけど、
当の本人は（いつの間にか取り上げた）あたしのケータイを何やら操作している。
「……あんま聞きたくないけど、何してんの？」
「俺のケータイに画像送った」
「オイ！！」
「それと、お前のケータイの待ち受けにした」
「それはやめろ！！」
ハルからケータイを取り返して、待ち受け設定はすぐに解除した。
「もったいない……」
「も、もったいなくない！！」
あたしは自分で解るくらい顔を真っ赤にして叫んでたんだけど、
そんなことを言いながらも、その画像はしっかり保護するのだった……。
Happy Halloween?
（そうだ、言い忘れてた。Trick or Treat）（もしかしてイタズラが先行してたわけ！！！？？？）