起き上がろうとした瞬間、身体に違和感があった。
「え……」
……あれ? なんか急に身体が浮いたような……
ってゆうか、浮いてる……!
「……あっ、起こしちゃった?」
ビックリして目を開けると、そこにはマコの顔があって。
「ま、こ……」
えーっと?
背中と足の下になんか感触があるから、
たぶんマコがいわゆる「お姫様だっこ」というやつをしてあたしを運ん……
「…………!!!???」
再びビックリして、あたしは思わず暴れ出すが……
「ああっ、ダメだって暴れちゃ!
ここ階段なんだから、じっとしてないと落っこちちゃうよ?」
「……!!」
と言われ……
さすがに階段から落っこちるのは嫌だったので、すぐに暴れるのをやめた。
「ふふ、そうそう。いい子だから大人しくしててね」
優しく微笑まれ、あたしは黙って頷いた。
「…………はぁ」
なんか、毎回この笑顔には逆らえないんだよね……
まだマコは人がいいからいいものの、これ悪い人だったら毎回騙されることになるよね。
……なんてことを考えているうちに、
いつの間にかあたしが寝室として使ってる部屋まで来ていて。
「はい、到着」
そうして、ベッドの上に優しく降ろしてくれた……
「……って、なんでベッド?」
今さらながら、運ばれてきた意味が解んないんだけど……。
「ああ、あんなところで寝てたら風邪引いちゃうかなと思って」
あ、そっか……だから運んできてくれたわけね。
(で、その途中であたしが目を覚ましたとゆーことらしい)
「それに……前から思ってたけど、はもっと気を付けないとダメだよ?」
「えっ……何が?」
問いかけると、マコは困ったように笑う。
「いくらよく知ってるからって、相手は男なんだから。
あんまり隙を見せないようにしないと」
「隙……?」
「うん。今日だってそうだよ、ハルに抱きついたり渚の頭撫でてたり……
挙句の果てに、みんなと一緒にその辺で寝ちゃったり。
男はみんな狼なんだから、気を付けないとね」
「え……」
男はみんな狼、って……
「やっ、やだなー!
みんなが、あたしなんかにそんなことするわけ……」
「するわけないと思うの?」
「……!」
な、何だ、この有無を言わせない感じ……。
ちょっと怖いけど、何か返さないと……えーと、えーと……
「……じゃ、じゃあさ!
現に今あたしは、マコと二人で部屋に居るじゃん。それも気をつけなきゃってこと?」
「うん、そうだね」
「……!」
即答された。
マコなら「違うよ」って言うと思ったのに……
あたしはビックリして、今度は何も返せなかった。
「風邪引いちゃうから、っていうのは建前で、
ホントは君にイタズラするつもりだったかもしれないよ?」
「え、……」
イタズラ、って……
「Trick or Treat」
「……!!」
いつもの優しい感じじゃない、ちょっと怖い笑みを浮かべた。
「ま、こ……」
今はお菓子なんて持ってない。
あたしは怖くなって、ぎゅっと目を閉じた。
「…………なんてね」
でも、次にそう言ったときには、もういつものマコに戻っていて。
あたしの頭を優しくなでてくれる。
「さ、いい子だからもう寝ようね」
「まっ、マコ……!」
そうして手早くあたしに布団を掛け、部屋を出ようとして……
いったん立ち止まり、振り返って言った。
「…………次はもう、俺の前でも隙を見せちゃダメだよ?」
「…………!!!」
さっきみたいな怖い笑顔を一瞬浮かべたあと、マコは今度こそ部屋を出て行った。
Happy Halloween?
(ほ、ホントに狼男だった……!!)(ふふ、今頃俺のことで頭がいっぱいだろうな)