起き上がろうとしたとき、その違和感にすぐ気がついた。





「これ……」

上着……? 誰かが掛けてくれたのかな……
身体を起こしながら、まだ少しボーっとする頭で思い出そうとする。

えーっと、確かこの上着は……



   
『ではお邪魔します』





「あっ、そーだ!」

怜ちゃんが着てきたやつだ!





「ってことは、これ掛けてくれたのは怜ちゃんってことに……」

そうつぶやいて辺りを見回してみるが、怜ちゃんの姿だけ見当たらない。





「どこ行ったのかな……」

捜しにいこうか、と、考えたそのとき……










「……あ、さん。目が覚めたんですね」

怜ちゃんがそう言いながら、キッチンのほうから姿を現した。
その手には、コップがある。





「怜ちゃん!」

「喉渇いていませんか?
 良かったこれ、飲んでください」

「え?あ、うん……ありがとう」

差し出されたコップを受け取って口を付ける。
中身はふつーの水だったけど、さっぱりしておいしかった。





「……あ、そうだ!
 怜ちゃん、これありがとう」

今度はあたしが、さっきまで掛けられていた上着を差し出す。





「ふふ、どういたしまして」

笑顔で言った怜ちゃんは、それを受け取った。

















「あ、えっと、あの〜……そーいえばさ、
 怜ちゃんはなんでミイラ男の仮装にしたの?」

あんまり満面な笑みだったので、気恥ずかしくなってしまい
なんとなく目をそらしてしまった。

それを不審に思われないよーに、さりげなく話題を変えてみる。





「ええと、そうですねぇ……
 とにかくお化けやら妖怪やらを調べ尽くして、
 ハロウィンに合いそうなものを選んだわけなんですが」

でも、と、怜ちゃんは続ける。





「渚くんの話じゃないですけど、残念ですね」

「え?」

「あなたがアリスにすると事前に解っていれば、
 僕もそれに合わせて用意したんですが」

「怜ちゃん……」

それって……お揃いにしたかった、ってこと……なのかな……










「……ああ、でも僕としてはシンデレラや白雪姫辺りがいいですね」

「えっ、なんで?」

「王子様が出てくるじゃないですか!
 あなたにヒロインの仮装をして頂いて、僕は王子の仮装をします」

あ、あー!
そーゆーことか……





「でも、なんか怜ちゃんって……
 ハルやマコたちと一緒に七人の小人やってそーだけ
「王子をやります!!!」……そーですか」

そこは譲らないのね。
でも、そんな一生懸命なとこにきゅんとしてしまったのも事実。









「……解った!
 じゃー、今度は王子様が出てくるやつの仮装、一緒にやろうね」

「……! はい!!」

怜ちゃんと一緒にヒロインと王子様の仮装が出来るなんて、楽しみだな。

















Happy Halloween?


(怜ちゃんの王子様、期待してるよ!)(いいでしょう!完璧な王子を再現してみせます!)