辺りを見回すと、どうやらみんなも寝ちゃったらしかったけど、
一人足りないことに気づきふと庭のほうを見てみる。





「人影……?」

外に誰か居る? あれは……

えーっと、ハル、マコ、渚くん、怜ちゃんが寝てるから……
消去法でいくと間違いなく凛だけど、暗くてよく見えない。





「とりあえず行ってみよう」

そう思ったあたしは、その人影のほうへと近づいた。










「…………凛?」

庭に降りると、月明かりでようやくその姿が(ぼんやりだけど)確認できた。
そこに居たのは、やっぱり凛だったのだ。





「ああ……起きたのか」

「う、うん」

振り返った凛は、月明かりに照らされて幻想的に見える。

今はドラキュラの格好をしている上に似合ってるから、なんか……
ちょっと怖いような気もした。





「凛は、ずっと起きてたの?」

「いや……俺もついさっきまでは寝てた」

あ、そーなんだ……





「それなら良かった!」

「は?」

「だってもう夜は寒いし」

ずっとここに居たのかと思って焦った。

そー言ったら、一瞬目を見開いた凛が急にそっぽを向いた。











「……凛?」

「っ……なんでもねぇよ」

僅かにのぞく耳が赤い、ような気がする。
ってことは、(よく解んないけど)照れてるのかな?

とりあえず、あんまりつっこまないでおこう…と、思った。













「……あっ、そーいえば、凛」

「ん?」

そっぽを向いてたのに、呼ぶとちゃんとこっちを見てくれる。
それがなんだか嬉しくて笑っちゃいそうだったのをこらえ、あたしは続ける。





「ホントにさ、そのドラキュラ似合ってるよね!」

たぶん、みんなの仮装にあえて点数を付けるとしたら、
凛は間違いなく100点満点だと思う。
(衣装をチョイスした江ちゃんにも、100点をあげたいくらいだ)





「そうか? 自分じゃよく解んねぇけど」

「いや、だって!
 あたしさっき、本気で血ぃ吸われると思ったし……!」

最初に現れたときのインパクトが冗談抜きですごかったんだよ。うん。





「ふぅん…………じゃあ、」

「……?」

そこでいったん言葉を止めた凛が距離を詰めてきて、
あたしの目の前で止まり……









「ホントに血を吸ってやろうか?」

そう言ってニヤリと笑ったところで、ギザギザの歯がチラッと見えた。





「あ、いや……」

てか、その歯で噛みつかれたら冗談抜きで痛いんじゃ……










「Trick or Treat」

「……!?」

「ほら……早く菓子寄こせよ」

きゅ、急に何……





「お、お菓子は……さっき散々食べたじゃん!」

「さっきじゃねぇよ、今。今、寄こせっつってんだよ」

「……!!」

そ、そんなこと言ったって……
お菓子なんて、今は持ってないよ……!





「持ってねぇなら、悪戯の方だな」

「……!」

そう言った凛は、あたしの髪をかき上げ……
首筋に顔をうずめてきた。





「り、んっ……」

やっ、やばい!
ホントに本気で血を吸われる……!!

そう思ったものの、何故か凛を振り払うことが出来ない。
どうしようもなくて、あたしはぎゅっと目を閉じる。















「…………!!!???」

噛みつかれた感触こそ無かったものの……
首筋に何かやわらかいものが触れて、次いでちゅっというリップ音が鳴った。





「り、りりり凛……!!!」

「んだよ、文句だったら受け付けねぇぞ」

菓子持ってなかったんだからな、と、凛は笑う。





「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! 
くっそぉ!

「女がくそとか言うな」

なんて注意してくるものの、凛はまだ楽しそうに笑っているのだった。















Happy Halloween?


(ら、来年は見てろよー凛!!)(ああ、臨むところだ……くくっ)