4月25日、水曜日。
今日は、昨日の雨とは打って変わってよく晴れていた。

そして私は……
いつものように、学校へと向かう。










「よぉ、

「山本……おはよう!」

「ああ、はよっ」



『あんまり、縛られすぎるなよ?』


――あのたった一言で、私は救われた。

その言葉をくれた山本は恩人であり、そして……
とても掛けがえのない存在になった。





「数学の宿題、やってきたか?」

「一応ね」

「じゃあ見せてくれよ」

「しょうがないなぁ」


昨日は、山本の誕生日だったらしく……

「笑顔が見たい」と言われたから、
できる限り精いっぱい笑ったつもりだったけれど。

心から笑えていた自信は、全くない。





「あんなタイミングで祝って、
 おめでたい感じも全然なかったし……」


やっぱり誕生日は、もっと明るくないとね。

1日遅れちゃってはいるけれど、
何かの形でお祝いできないかな……。










「おはよう、ちゃん」

「ツナ、おはよう」

「難しい顔してどうしたの?」

「えっと、その……」


山本は私のやってきた宿題を必死に写してるし、
今なら相談してても大丈夫だよね……?





「実は……」















「うーん……
 それなら、普通に誕生日パーティやってみようか?」

「パーティ?」

「そう」


事情を説明すると、ツナは少しだけ悩んだあと

「山本なら、一生懸命やれば何でも喜んでくれると思うよ」

と言った。





「なるほど……」


確かにそうかも。





「明るい感じにしたいんだよね」

「う、うん」

「じゃあ、みんなも呼んでさ。
 なんかこう、にぎやかな感じで」

「うん……!」



さり気なく、私の希望も取りいれてくれてるし……

やっぱりボスにふさわしいな、なんて思った。





「じゃあ、他のみんなはオレが声かけておくから、
 山本はちゃんが誘うんだよ?」

「任せて」

「場所もうちでいいから」

「ありがとう」















そして、放課後……





「あ、あの、山本!」

「どうした、

「今日、部活が終わった後って何か予定ある……?」

「ん〜……別になんもねぇと思うけど」


よし。





「じゃあ、ツナの家にお邪魔しようって話になってるから、
 山本もおいでよ」

「おっ、面白そうだな。オレも行くぜ」

「ホント!?」

「ああ」


うまく誘い出せて良かった……。





「部活終わって、ツナんちに行けばいいか?」

「うん!」


部活の終わる時間は、なんとなく分かるし……
それまでに、準備を終わらせておかないとね。





「それじゃ、また後でな」

「うん。部活、がんばって」

「おう!」


私の頭をがしがし撫でると、
山本は部活に行くため教室を出て行った。





「……よーし」


私もがんばらないと!



















数時間後。

ツナの家で待機していると、ふいにインターホンが鳴った。





「オレが出てくるから、みんなは待ってて」


そう言ったツナが、玄関に向かう。










「はーい」

「よ、ツナ!」

「いらっしゃい、山本。どうぞ上がって」

「ああ」

「あ、今日はオレの部屋じゃなくてリビングね」

「こっちな」


――ここまでは打ち合わせ通りだ。

ツナが山本に扉を開けさせてくれるから、
あの扉が開いたタイミングで……





「ん? ツナ、なんか部屋が暗い……」


今だ!

そう思って、クラッカーの紐を引っ張る。

みんなも同じタイミングでやってくれたので、
パーンという大きな音が同時に響き渡った。





「「「「「「「お誕生日、おめでとう!!」」」」」」」





「あ……なんだ、そういうことな」


一瞬身構えたように見えた山本だったけど、
状況は把握してくれたらしい。

すぐに笑顔に戻った。





「あの……1日遅れちゃったけど、
 ちゃんと誕生日をお祝いしたいなって思って……」

「ありがとな、

「ううん、私だけじゃ出来なかったよ。
 ツナや、みんなが協力してくれたから」

「そっか。みんなもサンキュー!」


良かった……
喜んでくれたみたい。










「じゃあ、ご飯食べよっか」

「そうだね、ツナくん」

ツナと京子ちゃんの呼びかけにより、
用意したごちそうをみんなで食べ始める。





「はひ〜、これおいしいですー!」

「おいアホ女! 
 食いすぎて10代目のご迷惑になるなよ!?」

「獄寺さんこそ、ツナさんに迷惑かけないでください!」

「オレがいつ10代目に迷惑かけたってんだよ!」

「いつもです、いつも!!」


それにしても、あの2人は相変わらずだなぁ。










「……あ、」


楽しそうなみんなの様子を見てから、
ふいに窓の外へ目を向けると。

綺麗な星空が広がっていた。





「何見てんだ?」

「山本……」


いつの間にかそばに来ていた山本が、声を掛けてくる。





「うん……星が綺麗だなぁって」

「お、ホントだ」


今日はよく晴れてたし、綺麗に見えるのも納得だな。

昨日の雨もあったから余計に、
今日は晴れてくれて良かった……










「……なあ、

「ん?」


その声音が、いつもと少し違うように聞こえて。

星空を見ていた私は、山本のほうへ視線を戻す。





「どうかした?」

「お前のことが好きなんだ」


…………。





「ええっ!?」

「付き合ってくれ」

「え、あのっ……!」


何を急に!?

てか、同じ部屋に居るから当たり前だけど
みんなにも聞こえてたらしく注目されちゃってるし……!










ちゃん」


どうしよう、どうしよう、と焦っていたとき……
ツナが、いつもと違う迷いのない声で私を呼ぶ。





「ツナ……」

ちゃん、きちんと言わないと」


そう言って優しく笑う。

――そっか。
ツナには、私の気持ちがバレてるんだ。





「…………」


ここで言わないと絶対に後悔するし、それに……
私はきっと、前に進めないままだろう。










「あのね、山本……
 私も山本のことが、好き……です」

「ホントか!?」

「うんっ」


本当だよ。

山本のことが好きだからこそ、
雨の守護者であることが嫌でたまらなかったんだ……。


もっと前から分かっていたはずなのに、
昨日やっと自覚できたんだ。

そんなことを考えていたとき、唐突に部屋の扉が開く。




「やあ」

ヒイイィィ、ヒバリさん!? なんでココに……!」


部屋に入ってきたのは、雲雀さんだった。





「僕もこんな所に来たくなかったんだけど
 のために仕方なくね」

の……?」


そっか、雲雀さんにお願いしてたんだよね。










「ほら、ケーキ用意してきたよ」

「ありがとうございます、雲雀さん!」

「いや、なんでヒバリさんがケーキを!?」

「なんでって……お願いしてたからね」


ツナったら、何をそんなに焦ってるんだろう。





「そーゆーことじゃなくて!
 なんでヒバリさんが用意してくれたのか……」

「そんなの決まってるでしょ。
 が妹みたいに可愛いからだよ」

「(初耳ですけど!?)」


そうなんだよね。
雲雀さんってお兄ちゃんみたいで、つい頼っちゃうの。










「それより……山本武」

「なんだ?」

を泣かせたら……咬み殺すよ」

「ははっ、泣かせねぇよ。心配すんな」

「……だったらいいけどね」


そう言った雲雀さんは、私のほうに向き直る。





「じゃあ僕は帰るよ。またね」

「はい。ありがとうございました、雲雀さん!」


さてと。





「せっかくケーキが来たから、みんなで食べよっか」

「ああ、そうだな」


私の言葉に、山本も笑顔で返してくれた。



















その日は、晴れだった。


(昨日と違って 本当の笑顔で返せた気がした)























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加筆修正を加えて、タイトルも大きく変更しました。

ひとつ前と続きものでタイトルもお揃いみたいに出来たので、
そこは良かったなと思います。

最後の雲雀さん登場は、なんでそうしたのか
自分でもちょっと謎です。