「うーん……」

5月の初め…あたしは頭を抱えていた。





、どうしたの?」

「お嬢!」

そんなあたしを心配してくれたのか、お嬢が声を掛けてくれた。





「何か悩み事?」

「うーん、悩みとゆーかなんとゆーか…」

「…?」

「えーと、実は……」




















「そっか、リベルタの誕生日プレゼントね」

「うん、そーなんだけど…」

何がいーのか悩んでるんだよね…





「ええと…リベルタの好きなものって言うと…」

「辛い物、仮面、海、船、スペランツァ、ダンテ」(ドーン)

「う、う〜ん…けっこう解りやすいね」

「うん」

そう。そーなのよ…
あんなわかりやすい子、他に居ないんじゃね!? ってゆーくらいわかりすいのよ!!





「でも、だから逆に悩むってゆーか…」

何をどーすんの!? って感じなんですけど…





「仮面をあげてみるとか」

「それも考えたんだけどさー…
 
あたしその仮面好きなとこだけは理解できねーんだわ

「……そっか…」

お嬢のこの表情からして、どーやら「理解できない」点についてはあたしと一緒みたいだ。

そんなわけで、まず始めに「仮面をプレゼント」という選択肢を外す。










「……そうだ。みんなにも聞いてみたら?」

「ええ!」

「意外といい意見が出てくるかもしれないし」

そーかなぁ…。

でも、まあ、お嬢がせっかく提案してくれたことだし…





「…うん、わかった。
 じゃーちょっと聞いて回ってみる!」

ありがとー、お嬢!





「どういたしまして」

お嬢はにこっと笑ってそう言い、あたしを送り出してくれた。

























「……はぁ。
 意気込んできたはいーものの、誰から聞いてくかなぁ……」

つーかコレ、乙女ゲーでよくある展開よね。
主人公が、本人じゃなく周りに聞いて回ってくってゆーやつ…





「個人的にはこの展開、あんま好きじゃねーんだけど」

本人に聞けばいーだろ!
とかいっつも言ってたんだけどね。

いざ自分がその状況に陥ったら、あの主人公たちの気持ちめっちゃわかるわ。





「確かに、本人に聞いちゃったらサプライズにならん!」

やっぱ、こーゆーのはサプライズでしょ!
前にリベルタも言ってたけど!





「まぁ、とにかく…最初っから博打に行かなくてもいーか」

そんなことを思いつつ、あたしはとある場所へと向かった。





















トントントン


「開いているぞ」

「し、失礼しま〜す…」

ノックしたら中から声が返ってきたので、いちおー一声かけてからその扉を開けた。





「お前か…どうした?」

「あ、いや、えーっと…ちょっとノヴァに質問が」

「質問?」

ちゃんと答えてくれそーな人から回ってこ…と思ったあたしは、
まず始めに聖杯待機室にやって来ていた。





「あ、あのさ…もーすぐリベルタの誕生日なんですけど、
 なんかプレゼントするのにいい案が無いかなーと思いまして…」

「なるほど、リベルタの誕生日プレゼントか…
 ……いや、その前に何故敬語なんだ?」

「い、いや、なんとなく…!」

てか、よくよく考えたら10歳以上年下の子にこんな質問なんて…
めちゃくちゃ恥ずかしーでしょ…!!












「アイツの好みについては、お前自身もう十分把握しているだろうが」

「えっと、…うん」

「それでもなお、悩んでいるんだろう?」

「うっうん!」

さっすがノヴァ、よくわかってくれてる…!!





「だが、そうだな…
 僕が考えるに、お前からのプレゼントならアイツは何でも喜ぶと思う」

「え、そーかなぁ…」

「ああ」

そーだといーんですけどねマジで…。





「…すまないが、僕にはこれくらいしかアドバイス出来ない」

「い、いや、十分だよ! ありがとー!」

そーやって言ってもらったら、なんか失敗も恐れずいけそーだし!





「ありがとー、ノヴァ!」

「いや…お前なりの方法で、盛大に祝ってやってくれ」

そう言って笑うノヴァの顔は、ちょっとだけ優しい感じがした。

























「さてと…」

次はどーするかな〜……










「あっ、〜!」



「パーチェ! デビトも」

「よォ」

廊下を移動してるとこで、パーチェ&デビトと鉢合わせた。





「ちょーど良かった、二人に聞きたいことがあるんだけど」

「えー、なになに〜?」

「あのさ……」










「……なるほどナァ、リベルタの誕生日プレゼントねェ」

「そー。なんかいい案ないかなぁ」

「そりゃあ、あれでしょ? ラ・ザーニアァァ!!

「却下」(ドーン)

「ええっ!?」(ガーン!)

当たり前だろーが!!





「バカか、パーチェ。んなモンで喜ぶやつなんか、お前くらいだっつーの」

「激しく同意するわ。うん」

「ひどいよ〜、二人とも〜〜」

って、こんな漫才してる場合じゃねーよ!





「デビトはなんかいい案ない?」

「あァ、そうだな……」

ちょっと悩む素振りを見せたあと、デビトはあたしの頭をぽんっと軽く叩き…





「ここにリボンでも付けて、『私がプレゼントよ』でいーんじゃネェ?」

「オイ!!」

何言ってんだ、こいつ!
今どきそんなことやるやつ、いねーよマジで!!










「デビト〜、ここはやっぱりラ・ザーニアだよ!」

「いや、これは絶対ェ譲れねーな」

「ラ・ザーニアのほうがいいって!」

「んなモンより、本人あげちまったほうが…」





「…………ダメだこいつら」

こいつらからまともな意見はもらえないと判断し、
あたしは未だ論争を続ける二人を置いてその場を立ち去ることした。



















「リベルタの誕生日プレゼントか……」

「はい、そーなんです」

パーチェとデビトのもとを離れたあたしは今、幹部長執務室に居た。

やっぱダンテならリベルタのことよく知ってるし!
と思い、意気込んでやって来たわけである。





「俺のときには、リベルタが仕切って色々と盛大にやってくれたからな」

「あ、そーですよね…」

「君さえ良ければ、
 同じように諜報部の船を使ってパーティを開くのもいいかもしれないが」

あー、確かにそれはいい案かもだけど…うーん……










「……まあ、今回は二人で過ごす方がいいかな?」

「……!!!」

「ガッハッハッハ、君も素直だからすぐ顔に出るなぁ」

「あ、あの、あたし、もう行きますんで!」

失礼しました!!





「ハッハッハ…リベルタにはもったいないお嬢さんだ」




















「はぁ、ビックリした……」

まさか、ダンテにまで(?)からかわれるなんて…





「と、とりあえず次、行こ…」

あと聞いてないのは、ルカとジョーリィだけど……





「…………ジョーリィは聞かなくていーや

パーチェとデビト以上に意味わからん案を出してくるに違いねーよ。















「やあ、

「ゲッ!!」

噂をすれば何とやら…!





「お嬢様から聞いたよ…
 リベルタへのプレゼントで悩んでいるそうだな」

「…!!」

お嬢、聞いてくれたのはありがたいけど、よりにもよってジョーリィ…!!(ドーン)










「プレゼントに困っているようなら、私がいいものを提供してやろう」

「い、いいもの?」

「ああ。先ほどできたばかりの新作、背徳の夜想曲…」

「って、
んなもん、いるかーい!!

ジョーリィが最後まで言い切る前に、あたしはその場から駆け出した。





「何だ、せっかく持ってきてやったのに残念だな…クックック」




















「あー良かった、逃げ切れた……」

今頃きっと「残念だったな、クックック」とか言ってるに違いねーよ!





「いやマジで…あれをプレゼントにだなんて、満場一致で反対されんだろーよ」

そんくらいのもんだってわかってて持ってきたのか、
もしわかってなかったら、ただのバカだわ、あいつ…。










「にしても、どーしよ…」

あと聞いてないのは、ルカか…
どこに居るのかな。研究室?





「……おや? 、そんなに難しい顔をしてどうしました?」

「ルカ発見!!!」(ダッ!)

「ええっ!?」





















「ああ、そういうことだったんですか」

「うん」

ルカを発見したあのとき、あたしが猛ダッシュして駆け寄ったんで
だいぶビックリしたらしい。





「うーん、プレゼント…そうですねぇ……」

あー良かった、なんかルカならまともに考えてくれそーだわ…。





は、何か『こういうことがしたい』という希望はあるんですか?」

「あ、いや…特には。
 喜んでもらえれば、あたしはそれでいーや」

「……そうですか」

そう言って、ルカはにこっと笑う。





「きっとリベルタも、あなたのような考え方をすると思います」

「…とゆーと?」

「あなたが一生懸命用意してくれたものだったら、なんでも嬉しいでしょう」

あー…





「それ、ノヴァにも言われた…」

「そうでしょうね」

喧嘩ばかりしているようで、ノヴァはリベルタのことをよく見ていますから。










「まあ、ですがこのままでも結論が出ないことですし」

「うん」

「何か物をプレゼントしましょうか?
 それとも、ダンテの言うようにパーティみたいな形のものでお祝いしますか?」

うーん……





「単に物をあげるだけじゃ、なんか面白くないってゆーか…」

だからって、パーティっていうほどのものだと、
今から準備して間に合うかわかんないし…。










「……ああ、そうです。
 それなら、何か料理を作ってあげたらどうでしょうか」

「料理?」

いや、でも…





「ルカも知ってると思うけど…
 あたしそれ、だいぶ不得意分野なんですけど……」

ちゃんと作ってあげられる自信がまるで無いわ…。
それにリベルタだって、あたしが料理苦手って知ってると思うし。





「ですが、だからこそ逆にいいんですよ。
 不得意分野なのにがんばってくれたら、リベルタも嬉しいんじゃないでしょうか?」

「うーん……」

そーゆーものなのかなぁ…





「……ルカも、おんなじ立場だったら嬉しーの?」

「ええ、嬉しいです」

そっか…










「……わかった。
 じゃー、(ちょっと怖いけど)料理に挑戦してみます!!」

「ええ、その意気ですよ、!!」