「ふあ〜……」


          仕事先から帰宅し、夕食を食べ、一息ついたとき。
          日課になっているブログを更新しようかと思ったんだけど、
          昨晩寝るのが遅かったためか、ものすごい睡魔に襲われた。







          「ちょっと仮眠してから書こうかなぁ……」


          でも、いつものパターンから言うと、
          仮眠とか言ってそのまま寝落ちする可能性が高い。
          けど、それはまずいし……。










          「無理してでも今書いた方がいいかも」


          そう思いながらも、やはり睡魔に負けそうになり、瞼が重たくなってきた。
          こっくりこっくり頭を揺らし、一瞬気を抜いた瞬間、がくんと急激に頭が下がる。

          自分の動きに自分で驚き、急いで顔を上げると……






























          「……!!」


          そこは、今まで居たはずの自分の部屋ではなかった。







          「何、ここ……」


          自分の部屋でもなければ、自分の家ですらない。
          何か広い建物の廊下のみたいだけど、一体ここは……。

          辺りを見回してみると、どこか既視感があった。


          ――この場所には、初めてやって来たはず。
          でもあたしは、この場所を知っている……?










          「でも、どこで見たんだろう……」


          いつ、見たんだろう…………。

          
          考え込んでしまったあたしだったけれど、その疑問はすぐに解決された。




















          「あら……あなた、どちら様?」

          「……!」


          その人には、見覚えがあった。
          
          少し緑がかった青の髪に、裾の長いジャケットを羽織って、左腕には腕章……。


          ――この人は、この学園の理事長。

          それならば、この場所に既視感を覚えたのも説明がつく。
          ここはきっと……。





          そこまで考えをまとめたところで、あたしははっとなった。
          関係者でもないあたしが、こんな、廊下のど真ん中で座り込んでいるだなんて。
          誰が見たって明らかにおかしい。

          明らかに、不審者だ。















          「あ、あの、あたし……と言います!
           気づいたらいつの間にかここに居たんです……!」


          さっきまで冷静に考えをめぐらせていた自分は、どこに行ったのか。
          ……いや、そもそもさっきまでの自分が、いつもと違っていたと言うのが正しいのかも。


          違う違う、そんなことはどうでもいい!
          それよりも今は、どうやって目の前に居る人にあたしは不審者ではないと説明するか……!







          「なるほど……。
           ねえ、あなた……教師という職業に興味はないかしら?」

 
          あたしが口を開くより先に、目の前に居るその人が、
          何か考え付いたような顔をして唐突な質問をしてきた。










          「教師……ですか?
           まあ教員免許を持ってるくらいだから、嫌いじゃないですが……」


          もともと教師になろうと思って進んだ大学。
          そこで必要科目を履修し、卒業と同時に得た教員免許。

          結局別の職業に就いたから、今となっては使い道がなくなってしまったけれど、
          自分が大学で頑張ってきたことの証明ともなりうるものだったりする……。















          「まあ、免許持ってるのね。ちょうど良かったわ」

          「え……?」


          何がちょうどいいんだろう……。

          これが俗に言う(?)「嫌な予感」ってやつなのかな。


          ちょっと脇道にそれたことを考えていると、目の前に居る人は言った。










          「あなたには、今日からこの星月学園の教師として働いてもらうわね」


          開いた口が塞がらないなんてこと、実際にあるんだと思った瞬間。




























































星空の下で〜Prologue〜






(あたしの物語は ここから紡がれてゆく――……)