「……さん!」
――分かれ道にて、岩ちゃんとバイバイしてから。
ウチまでの道のりを菅原と歩いていたところで、
背後から声を掛けられた。
振り返ってみると、そこには影山が居て……
「ひどいっすよ、さん!
帰るなら、声かけてくれてもいいじゃないすか」
「あ、いや、ごめん……
及川の足止めを、しててもらおうと思って……」
でも、やっぱさすがに悪かったかなぁ……
「そうだよ、ちゃん!
飛雄はともかく、俺にも一言もナシってどういうこと!?」
「ゲッ!」
……なんて思っていたところで、
曲がり角から急に及川が現れた。
「影山、なんで及川まで連れてきてんの!
足止めしてもらった意味ないんだけど!?」
「いや、及川さんは勝手についてきただけで……」
いやいや、それをうまく撒いてくるところだろ、ここは!
でも、まぁ、あたしも影山のこと置いてっちゃったし
あまり強くは言えないってのもあるか……
でもなぁ……
「……うーん、なんかいろいろ考えてんのがアホらしくなってきた。
ウチに帰って肉まんでも食べよう」
もらったドーナツでもいいんだけど、
甘いもの(アイス)はさっき食べたからね。
「菅原、助けてくれたお礼に一つおごるね」
「えっ、いいの?」
「うん」
「ありがと、さん」
そう言って、菅原は嬉しそうに笑った。
(しっかりしてる印象がある子だけど、
やっぱりこういうところは年相応な気がするな)
「影山も、置いていっちゃったお詫びに一つあげるから」
「いいんすか!」
「うん」
結果的に及川も付いてきちゃってるけど……
まぁしょうがないな。と思い込むことにしとこ。
「待って、ちゃん!
及川さんの分は!?」
「無い」
「ええっ! ちょっとひどすぎない!?」
「全然ひどくない」
十分ひどいよ、なんて言ってくる及川を、
なんとかあしらってたんだけど……
結局ウチまで付いてきてしまうのだった。
「菅原、影山、はいコレ」
「ありがとう」
「どーもっす!」
「ちゃん、ひどすぎ……」
及川には全く目もくれないあたしに対し、
そんなことを呟く。
……でも、ちゃっかり店内に入ってきて
座ってるあんたもどーかと思うんだけどね。
「……ほら」
「え……?」
完全に落ち込みモード(?)の及川の前に、
菅原と影山にあげたのと同じ肉まんを置いてやる。
「ちゃん、これ……」
「……仲間はずれが嫌なだけだから」
「……!」
そう言うと、及川の顔がパッと明るくなった……気がした。
「ありがとう、ちゃん!
君ってツンデレだったんだね」
「いや、違うし!」
勝手にそーゆー属性を加えるの、やめてくんない!?
「……あっ、おいしい!」
「当たり前でしょ、ウチの肉まんナメんなよ」
「今度は部活帰りに寄ろっかな」
「入店をお断りさせて頂きます」
「ひどい!」
「……あんなに及川のこと毛嫌いしてんのに、
さんって結局は優しいんだよなぁ」
「だからあの人の周りには……
人が集まるんじゃないすか」
「はは、言えてる」
「岩ちゃんと一緒に来れば、岩ちゃんだけは入店可」
「なんで岩ちゃんだけ!?」
「当たり前じゃん」
なんてやり取りをしているうちに、
そのうち菅原と影山も会話に入ってきて……
肉まんを食べ終わってからもしばらく、
雑談をしていたあたしたちであった。
「……あっ!」
今さら気づいたんだけど よくよく考えたら
(ここに居るの全員セッターじゃん!? おもしろすぎ!!)
(((遅ッ!!)))