ピンポーン



「……あっ!」

「ちょうどみんな来たみたいね」

玄関先でリコちゃんと一緒に出掛ける支度をしてると、
タイミングよくインターホンが鳴った。





「おはよう! あと、あけましておめでとう!」

「あけましておめでとう、みんな!」

「おめでとうございます、さん、カントク」

ドアを開け外に出ると、予想通り誠凛メンバーの姿がある。

リコちゃんとあたしで新年の挨拶をすると、黒子くんを始め
みんなが口々に「あけましておめでとう」を返してくれた。





「そんじゃあ……挨拶もこんくらいにしてそろそろ行くか」

「ええ、そうね」

日向くんとリコちゃん言葉により、その場にいるメンバーがぞろぞろと歩き出す。

あたしはまたなんとなく、一番後ろを歩く形になった。














――今日は1月1日……そう、つまり元旦。

数日前の部活にて……
小金井くんの「みんなで一緒に初詣行こうぜ!」の言葉により、
今日は誠凛メンバー全員で神社へ初詣に行くことになった。






さん、寒くないですか?」

「ううん、大丈夫だよ」

同じく一番後ろを歩く黒子くんが、声を掛けてくれる。
その優しさに癒されつつ、あたしは「ありがとう」と返した。

今から行く神社はそんなに遠くなくて、みんなで歩いていくことになり……
寒さ対策として色々と防寒はしてきたので、あんまり寒くはなかった。






「それより楽しみだね、みんなで初詣!」

「ええ……そうですね」

そう言うと、黒子くんは微かに笑って頷いてくれた。





「でも、割と有名な神社らしいので、少し混んでいるかもしれませんね」

「えっ、そうなの?」

こんな大人数で大丈夫かなぁ、と思いつつ、
「まあ、この子たちなら大丈夫そう」なんてのん気なことを考えてしまった。





「はぐれないように気を付けてくださいね、さん」

「えっ、あたしだけ!?」

「他のみんなは、はぐれてもどうってことなさそうなので」

なんか今、ちょっと毒舌ぽかったな……

さらっと言い放った黒子くんに内心つっこみつつ、
あたしは置いてかれないように前を歩くみんなに続いた。





















「うっひょー!やっぱ混んでんなぁ〜」

「まあ、さすがに元旦は混むよな」

小金井くんと伊月くんのそんなやり取りを聞きつつ、周りを見回してみる。





「……うん、確かにすごい」

どこを見ても人、人、人……
ものすごいことになっていた。





「それじゃあ、先にお参り済ませるわよ!」

人ごみに掻き消されないよう少し声を張ったリコちゃんの言葉を受けて、
さっきと同じようにみんなでぞろぞろと移動を始めた。


















「はぁ……やっとお参りできた……」

長蛇の列を並び続け、ようやくお参りが出来たときには若干疲れていた。





「とりあえず、先にお参り終わったみんなと合流しないと……
 ……って、あれ?」

えーと、確か……
先頭のリコちゃんたちが、「そばのお守り売場で待ってる」って言ってたはず。

けど、お守り売場を見回しても誠凛メンバーの姿は無かった。





「どうしよう……」

一番後ろで一緒にお参りしてたはずの、黒子くんの姿も見えないし……





「もしかして、これは……」

ほんとに本気ではぐれちゃった……?
さっき黒子くんに言われたばっかりなのに……!?










「と、とにかくケータイで連絡を……」

そうつぶやきつつ、ケータイを取り出そうとしたとき……










さん」

ふいに、声を掛けられた。





「あっ……黒子くん!」

振り返ると、一緒にお参りしたその姿があった。





「よ、良かった……
 ほんとに迷子になっちゃったのかと思ったよ」

「すみません、さん。
 先にお参りが終わったので、脇に避けてあなたを待っていたんですが」

あまりにも混雑していたので、少し人ごみに流されてしまったらしい。

……でも、たぶん、急いで戻ってきてくれたんだろうな。
ほんの少し、息が切れてるし……。










「…………ありがとう、黒子くん」

なんだか色々と嬉しくなって、あたしは唐突にお礼を言う。
でも言われた側の黒子くんはというと、頭に?を浮かべていた。





「ボクは今、あなたに謝っていたはずなんですが……」

何故お礼を入れたのでしょうか。

あんまり表情を崩さない黒子くんが、ほんとに不思議そうな顔をしてそう言うので
あたしは思わず笑ってしまった。















「……あ、」

さて、これからどうしよう……と思ったところで、ふとケータイが鳴る。
すぐに確認してみると、リコちゃんからのメールのだった。





「カントクからは何て来たんですか?」

「うん……
 なんか、あたしたち以外のみんなは一緒に居るんだけど、
 人ごみに流されてだいぶ離れちゃったらしくて」

リコちゃんからのメールは、
「一緒にお参りは出来たんだし、あとは別行動にしましょ」という内容で締めくくられていた。





「……ってことなんだけど、黒子くんはそれでいい?」

「ええ、もちろんです」

微かに笑って、即答してくれた。





「そういうさんも、ボクと一緒でいいですか?」

「うん、もちろん!」

他でもない、あなたと一緒ならば――……










「では、この後はどうしましょうか」

「おみくじ引きたいな!
 あと、ちょっと何か食べたい気も……」

「そうですか……
 では先におみくじを引いて、その後に露店を見に行きましょう」

「うん!」

自然と差し出されたその手を、あたしも自然と取っていた。




















今年もどうか あなたの隣に居られますよう


(神様にそうお祈りしてきたよ)



























「このおみくじ、変わってるね。自分の運勢を良くしてくれる人が書いてあるよ」

「本当ですね……
 ボクのには、『蟹座で背が高い人』と書いてあります」

「あたしのは、えーっと……『蟹座で眼鏡を掛けた変な人』だって」



「「…………」」





「「…………緑間くん?」」



「でしょうか?」

「そうかも……」

どうやら、あたしたちのラッキーパーソンは同じ人のようです(笑)