ったく、アイツなんなのマジで!
めちゃくちゃムカつくんですけど!
唐突で申し訳ないんですが……
あたしは同じヴァリアーの、
ベルことベルフェゴールが大嫌いです。
なぜかと言うとですね、奴がすっごい意地悪だからです。
この間なんかさ……
『あっれ〜?
、寝ぐせが直ってないじゃん』
とか言ってきたんですよ!
つーかアレは寝ぐせじゃねーんだよ!
気分転換にちょっと巻いてみたんだよ!
それを奴は寝ぐせとか言いやがって!
まじムカつくんですけどー!
お前なんか鮫特攻くらって死ね!!
「はあー……」
とにもかくにも!
ベルとは関わらないに越したことないんですよ。
「あ、じゃん」
って言ってるそばからキターーー!?
「今日、任務なんだって?」
「そ、そうだけど何よ?」
「べっつに〜。ま、頑張りなよ」
「あんたに言われなくても、完璧にこなすっつーの!」
何なんだよもう、あたしをバカにしてんのか!?
言っとくけどね〜、あたしも天才って言われてんのよ。
そんなあたしが失敗するわけないでしょうが!
「じゃあ。あたしは行くから!」
見てなさいよー!
完璧にこなして、ベルをあっと言わせてやるんだから!
「ベル」
「どーした、マーモン」
「素直に心配だって言った方がいいと思うよ」
「……はオレのこと嫌ってるしさ。
これでいいんじゃん?」
「君がいいって言うなら、これ以上は言わないけど……」
よーっし!
準備万端だし、さっそく任務に行くぞ!
「じゃあボス、行ってきます!」
「ああ」
さてと!
ベルはムカつくけど、そろそろ心を落ち着けないとね。
冷静さを欠いたら、大変なことになるし……。
「あーボス。なんか手紙が届いてたんだけど」
「よこせ」
「はいはい」
……。
…………。
「……!」
「どうかしたの?」
「ベル、今からを追え」
「……どういうことだよ」
「あいつが狙われている」
「……!」
「前の任務であいつが始末した奴の仲間だ」
「じゃあ、あだ討ちってワケ」
「だろうな」
「………ボス、オレが行ってきていーんだよな?」
「好きな女くらいテメェで守ってこい。
でないとテメェもカスだ」
「うししっ、オレはスクアーロとは違うからね」
じゃあ、行ってくるよ。
「無事でいろよ…………」
「……ここだね」
今日の標的がいる場所は、何の変哲もない質素な家。
マフィアのボスなんだけど、アジトには住んでいなくて……
本人的には、カモフラージュのつもりらしい。
「まあ、とにかく……さっさと始末しちゃいますか」
それでベルをあっと言わせるんだから!
「おっと」
標的をさっそく発見!
写真と比べても……間違いない、コイツが標的だ。
弱小マフィアのボスらしいけど……
「あたしには関係ないね」
そう呟いて、あたしは自身の得物を構える。
――永遠に眠りなさい
「さよなら、よ……」
「この世とサヨナラするのはお前だ!」
「……!?」
誰……!?
「いったいどこに……!」
そう考えたときは、もう遅かったのだ。
あたしに向かって、無数の銃弾が飛んできていた。
「…………」
銃弾の動きはスローモーションに見えたけど。
避けられない、とすぐに悟った。
「っ……」
ダメだ……殺られる……!
――そう、思ったはずなのに。
向かってきていた銃弾は、唐突に弾き飛ばされ……
「……!」
少し離れたところで物音がして、そちらに目を向けると。
あたしを狙ったと思われるやつが、倒れていたのだった。
そして……その先に居たのは。
「ベル……!?」
「うししっ、セーフって感じ?」
その言い草からして……
銃弾を弾いたのもあの男を始末したのも、
全てベルのやったことなんだ。
「でも、なんで……」
なんでベルが……ここに居るのよ……?
「なんかさ〜、ボス宛に手紙が届いてたんだよね」
「手紙……?」
「オレは読んでないけどね」
そこに、を殺すっていう
暗殺予告が書いてあったらしくて。
「暗殺予告……」
おおかた、あだ討ちってところだろうけど……
……そんなことより、
「ヴァリアーともあろう者が、
そんな殺気に気づけなかったなんて……」
自分で気づいていなかっただけで、
あたしは冷静さを欠いていたんだ。
ベルにもあれだけデカイこと言って出てきたのに、
もう最悪だよ……。
「ま、いいんじゃねーの?」
「なっ……バカにしてるの!?」
あたしは……
「あたしは、周りから天才って言われてたのに……
自分の身を守ることも、満足に出来ない……」
悔しい……
ただただ悔しい……!
「……でも、お前が完璧だとオレが困るからさ」
「なんでよ!
自分が優越感に浸れないから!?」
やっぱ最悪だ、コイツ!
「違うって」
「じゃあ何よ!」
「やっぱオレとしては、好きな女は守りたいし。
だから、お前が完璧だと困るんだよね」
「なっ……」
何よそれ……
「何を、言って……」
「お前のことが好きだって言ってんの」
……。
…………。
「はああぁぁぁ!?」
ちょっ……
いきなり何言って……!
「今まですっごく意地悪ばっかしてたのに!?」
「なんとなく意地悪してみたかったんだって」
お前は小学生かッ……!
「とにかく、標的を殺ってアジトに帰らないと
ボスがうるさいから」
「わ、分かってるわよ!」
そうよね、とにかく先に任務よ!!
「はあ〜……」
結局、標的もベルが始末しちゃったし……
あたしマジでヴァリアー失格だよ……。
「んじゃ、さっさと帰るか」
「……」
でも、コイツ……
あたしを助けてくれたんだよね。
「…………」
あたしの前に現れたとき……
息が切れていたのは、気のせいじゃなかったの?
心配、してくれたの……?
「…………」
「?」
全力疾走してくれた、ってことよね……。
「…………」
ベルのこと、キライよ。
でも、やっぱり助けてもらったし……
「…………ベル」
「何?」
「……ありがと」
「……!」
助けてもらったんだから、お礼は言っとかないとね!
「じゃ、じゃあ、帰ろ!」
そう言ってあたしはさっさと走り出したけれど、
ベルが付いてくる気配がなくて……
いったん立ち止まって振り返ってみると、
ポカンとしたベルがその場に立ち尽くしていた。
きょう、はじめて
(キミを見てわらっちゃった)
いつもは、嫌な顔ばっかしてたと思うけどね。
+++++++++++++++++++++++
◇香さんのリクエスト夢◇
修正させて頂きました。
いや、本当に、実を言うとベルが苦手だったので
けっこうなチャレンジではありました。
でも今は、最初は毛嫌いしてるのに
ゆくゆくは、くっつく……というのも
それはめちゃくちゃ楽しいなと思っています。
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