「うわー、完全に遅刻っスよ〜……」


          このままじゃ確実に、今日も笠松センパイの蹴りが入るな……。

          よりにもよって練習試合の日に遅刻とは、
          (自分で言うのも何だが)見事やらかしたものだ。

          しかも、対戦相手は東京・秀徳。







          「緑間っちのとこスね」


          だがしかし、どんなに頑張っても試合開始時間に間に合うとは到底思えない。
          そんなわけで、俺はややスピードを緩めた。












          「もう蹴りでもなんでもいいや……」


          いや、本当は良くない。
          良くはないが……
          ここで全力疾走して、体力を全て使い果たすわけにもいかない。





          
『この際、遅刻については後だ。
           着いたらすぐ試合に出てもらうから、そのつもりで来い』








          「試合に出たら使えませんでした、じゃ
           シャレになんないっスかね」


          そんなことをつぶやきながら、試合会場である秀徳に向かっているとき……















          「もう追ってこないでよ!!」

















          「……ん?」


          どこからか、女の子の叫ぶ声が聞こえた。
          姿が確認できないのでなんとも言えないが、なんか嫌がっているようにも取れる。















          「待ってよ、ちゃーん!」

          「僕たちのプレゼント受け取ってよぉ!」





          「待たないし、要らないから!!」


          一人の女の子が、大勢のむさ苦しい男どもに追いかけられている。
          その一連の集団は曲がり角から急に現れ、真っ直ぐこちらに向かってきた。















          「……あっ、黄瀬先輩!!」

          「え?」


          男どもにと呼ばれていたその女の子は、オレを見てそう言った。


          ……つーか「先輩」って、オレら会ったことあるっけ?
          いや待てよ、この制服は……。















          「黄瀬ってまさか、黄瀬涼太か!?」

          「キセキの世代の一人だよ!」

          「ってことは、ラスボスと同等の力を持ってるのか!?」


          その男どもの集団の中でリーダーらしき人物(勝手な予想だけど)が
          「いったん退くぞ!」と叫び、むさ苦しい集団は嵐のように去っていった。
          (つーかラスボスって何?




















          「ありがとうございます、黄瀬先輩……おかげで助かりました」

          「いや、オレは何もしてないっスけど……」


          勝手にあいつらが去っていっただけってゆうか……。







          「アンタ、帝光中の生徒っスよね」

          「はい、そうです」


          その制服には見覚えがあった。
          自分も少し前まで通っていた中学校の、女子の制服。

          雰囲気からすると1年生ではなさそうだし、
          オレのことを「先輩」と呼ぶのも納得がいった。










          「ところで、なんであんなむさ苦しい連中に追いかけられてたんスか?」

          「は、はい、話すと長くなるんですが……」


          そう言いながらも、彼女は事の次第を簡潔にまとめてくれた。

          つまるところ、あのむさ苦しい連中は彼女のファンなのだという。
          で、一緒に話したいだとかプレゼントを渡したいだとか、
          サイン欲しいだとか握手してほしいだとか、その他諸々の理由で追いかけられていたという。
          (あれ、なんかデジャヴなんスけど















          「先輩みたいに、女の子に追いかけられるなら嬉しいでしょうが、
           あんな気持ち悪い集団に追いかけられても怖いだけですよ」

          「同感っスね」


          オレだって逆の立場なら、先ほどの彼女のように
          叫びながら逃げ回るかもしれないし。

          気の毒だな、と思いながら、彼女を見る。







          「もう、せっかく秀徳に行こうとしてたのに……」

          「え?秀徳?」


          聞き覚えのある名前が出てきて、思わず聞き返してしまった。










          「はい、秀徳高校ですよ。
           今日は秀徳と海常で練習試合があるって聞いて、応援に行こうとしてたんです」

          「ああ、なるほど。
           でもアンタ、秀徳とは逆方向に走ってたような……?」


          もちろんあの連中を撒くためですよ、と、困ったような顔をして彼女は答えた。















          「大変っスね……
           ここで会ったのも何かの縁だし、同中のよしみで秀徳まで送ってあげるっスよ」

          「えっ、いいんですか!?」

          「またあんな集団に追いかけられちゃあ、さすがに可哀相っスからね」

          「やった、ありがとうございます!」


          ――そう言って屈託のない笑みを浮かべた彼女が、とても綺麗に思えた。
          特徴のある緑色の長い髪が、その綺麗さを際立たせているようにも感じる。













          「まあ……オレも、もともと秀徳に行かなきゃいけなかったんスけど」

          「え?どうして……
           ……あ、そっか!先輩、海常のバスケ部ですもんね」

          「知ってるんスか?」

          「はい、お兄ちゃんがそう言ってました」


          え?お兄ちゃん……?

          オレはふと気になって、その子をじっと見つめる。







          「……あ、ごめんなさい、先輩!
           秀徳に行く前に、ちょっとお兄ちゃんにメールさせてください」


          いや、確かに「緑の髪」で連想できる人物は居るけれども
          まさか、そんなことは……。















          「ちょっと遅れていくってことだけ、伝えておかないと。
           もう試合始まってるかもしれないけれど、一応……」


          そんなことをつぶやきながら、彼女は手早くメールを打つ。
          そして送信し終わったのか、携帯をしまうため鞄を開けたとき……







          「あっ、やば!」


          缶のようなものが鞄から転がり落ちてきた。
          コーヒーかなんかかな、と思ってよくよく見てみると、その表面には「おしるこ」の字。


          ……。


          …………。










          「良かった、缶がちょっと潰れただけで飲むには問題なさそう」


          おしるこって、ちょっと……
          もしかしてこの予想、当たってるんスか?

















          「お待たせしました、先輩。
           じゃあ、行きましょうか」

          「そ、そうっスね……
           あ、いや、その前にアンタ……名前は?」

          「あたしですか?
           帝光中3年、緑間です!」


          やっぱりっスか!?
          (どーでもいいけどさっきの連中が言ってた「ラスボス」ってのは緑間っちのこと!?)















          「それより、急ぎましょう、先輩!
           早くしないと試合終わっちゃう」


          先輩も出るんでしょう、と言いながら、
          微妙な心境になって動けずにいるオレの手を彼女がひいていく。







          「あ、ちょ、ちょっと!」


          ――本当にこんな無邪気な子が緑間っちの妹なんスか!?

          オレはそう叫びたいのを我慢し、手をひかれたまま秀徳に向かった。






































          「お兄ちゃん、お待たせー!」


          そう言った彼女は、まだオレの手を握ったまま。
          「まずい」と思ったときには……時すでに遅し。














          「何やってんだ、黄瀬ェ!遅れてきた上にナンパしてたのか!!

          「ち、違うっスよ、センパイ!誤解っス!!」





          「黄瀬……貴様、俺の可愛いに手を出したのか。許せないのだよ

          「ちょ、緑間っち!目が!目が怖いっス……!!」



          秀徳に着いた俺は、結局笠松センパイと緑間っちの両方から蹴りを入れられた。
          (なんてことだ!)
















































兄妹なのに全然似てねっスよ!!





(兄貴は偏屈で妹は無邪気とか、全然違う……!!)





























































          +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

            やばい、ごめんなさい。(唐突
            再び黒子のバスケに手を出しました……!

            実は、キャプテンの話よりこっちを先に書き上げていました。
            アップは遅くなったけど……。

            まじで好きすぎるこの人!
            一般の女の子たちに好まれそうなキャラにあたしがここまでハマるのは
            ぶっちゃけ言って珍しいかと思います。まじで。

            でも好き。かっこいい。
            特にVS青峰くんのところ、やばいっスよね。
            何あれ。
            なんであいつあんなかっこいーの!?


            つーか全然お話に触れていませんね……
            ええと、実はさんは緑間真太郎の妹さんでした。
            緑色の髪の毛はそっくりですよ。
            あとは、おしるこ好きなところとか……その辺ですかね、似てるのは。(たぶん

            とにかく最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
            思いつけば、また黄瀬でも挑戦したい、な……と思います、ハイ。
            今回のはただのギャグで恋愛要素なかったので、次はその辺を克服できれば……!