「ねえ、山本」

「どうした?」

「最近さんが、元気ないみたいなんだ。
 何か知らないかな?」

「……」


こないだ話して以来、まともに会ってねぇしな……





「メールしてみたんだけど、
『なんでもないよ』って返ってきちゃって」

「そっか……じゃあオレからも聞いてみるわ」

「ありがとう。
 さんが元気ないなんて珍しいしさ」

「ああ」


あいつは基本的にテンションが高いし、いつも明るい。
落ち込むことなんて、無いと思ってた……

そう、あの時までは。










『おばさーん! はどこだ?』

『あら武くん、こんにちは。
 なら、公園に行ったわよ?』

『そっか、さんきゅー!』


あれは、オレたちがまだ小学生だったとき。

キャッチボールに誘うため、あいつを探して公園へと向かった。





『……いた!
 おい、……』




『ひっく…ぐすっ……』

『……!」


なんだ……泣いてんのか……?

いつも明るくて、ずっと笑ってるやつだと思ってたのに。










『お、おい』

『なに、よぉ』

『なんで泣いてんだよ』

『泣いてない、もん……』


そう言って顔をあげたあいつは、確かに笑っていて。





『ほら、泣いてないでしょ? 武の勘違い〜』

『なっ……』


勘違いなんかじゃない。

そう思ってすぐに言い返そうとしたけど、
オレは何も言えなくなった。





『…………』


あいつは、確かに泣いていたんだ。
赤くなった目が、それを物語っていた。










『そーいえば武、何か用だったの?』

『あ、ああ。
 一緒にキャッチボールやろうと思ってな!』

『いーじゃん、やろうよ!』


が無理してまで笑ってるんだから、
これ以上は聞いちゃいけないんだ。

幼心に、そう思っていた。










「…………」


思えばあいつは、いつもそうだった。

つらいことがあっても誰にも言わず、
誰にも頼らずにひとりで抱え込んでいた。





「それが、いっつも悔しかったんだよな……」


なんでオレを頼ってくれないんだ、って。
いつも悔しくて仕方がなかった。










「…………ん?」

オレを、頼って……?


なんでそう思ってたんだ?

あいつが幼馴染だから? 親友だから?
それとも……















「〜〜…! 〜〜…!!」

「……」

「武ってば!」

「……!」


いつの間にかのことを考えていたオレの視界に、
不満そうな顔をした先輩の姿が飛び込んでくる。





「もう、なに考え込んでるの?
 さっきからずっと黙っちゃって」

「あ、すみません……」

「ま、別にいいわよ?
 今度の日曜日、付き合ってくれたら許してあげる」

「え……?」


日曜日……?





「一緒にどこか行こうって言ってるの!
 空いてない?」

「いや……空いてますよ」

「じゃあ、行きましょ!」

「……はい」


先輩の言葉に頷き返した直後、
ふいにオレのケータイが鳴った。





「あら、メール?」

「はい……あ、ツナだ」

「友達のあの子ね」

「はい」





メールでごめん!

オレ、さんと同じ授業取ってるから
ちょっと聴きたいことがあったんだけど……

その授業にも出てなかったから、
気になって偶然会った彼女の友達に聞いてみたんだ。

そしたら、家に引きこもってるみたいだって言われて……。

具合が悪いっていう感じでもないみたい。
心配だから、山本からメールしてみてくれないかな?

オレもメールしたんだけど、返事が来なくて……。











「…………」


あいつが引きこもってる?

それに何より、いつもはちゃんと返すメールを
全然返さないなんて……。





「武? どうかした?」

「先輩すみません、……」










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