「……あっ、またメール?」


ケータイを置いてすぐ、またもやメールが届いた。

あーちゃんとのメールはひと段落したから、
たぶん違う人だろうけど……


そんなことを思いつつ、あたしはメール画面を開く。








     201X/09/XX 18:03
     From 桃井さつき
     Sub こんにちは!

    ――――――――――――

     メールありがとうご
     ざいます!さっそく
     登録しました♪

     あと、下にあるアド
     レスも登録してもら
     ってもいいですか?
     青峰くんのです☆
















「……えっ!?」


なんで突然、青峰くんのアドレスまで!?
驚きながらも、理由を考えようとするけれど……





「……!」


考える間もなく、次いで電話が掛かってきた。
ディスプレイには「桃井さつき」の字がある。

再び驚きながら、あたしは慌てて通話ボタンを押した。












「も、もしもし!」

『あっ、もしもし、さんですか?』

「う、うん、そうです!」


電話の向こうからは、予想通り彼女の声が聞こえる。





『急に電話しちゃってごめんなさい。
 今、少し大丈夫ですか?』

「う、うん、大丈夫だよ!」


なんか緑間くんといい、あーちゃんといい、
この世界の人ってすぐ電話してくるよね。

まぁ、あたしもメールめんどくさい派だから
そっちのほうが助かるんだけど……。





『メールでもお伝えしたんですが……
 連絡してくれて、ありがとうございます☆』

「いえいえ、どういたしまして。
 ちゃんと届いたみたいで良かったよ」

『はい、バッチリでした!』


嬉しそうに言った桃井さんが、
何かを思い出したような声を上げる。










『青峰くんのアドレスも一緒に送ったの、解りました?』

「う、うん、それは解ったんだけど……」


さっきも思ったけど、なんで彼のアドレスまで……?





『その……青峰くんは、
 あなたには少し心を開いていた気がして』

「え……?」

『昨日のあの一瞬だけだから、ただの勘なんですけど。
 でも……そんな気がしたんです』


そう、なのかな……。





『だから、青峰くんと仲良くしてもらいたいなって思って』


桃井さん……










『勝手なお願いっていうのは解ります!
 その、頻繁にじゃなくていいので……』


本当にたまにでいいので、
青峰くんとやり取りしてあげてほしいんです。





「…………」


そうだよね……
今の青峰くんはまだ、心配なところもあるもんね。










「……うん、解った。
 せっかく教えてもらったし、やり取りさせてもらうね」

『本当ですか!? ありがとうございます!』

「いえいえ」


あたしの言葉を聞いた桃井さんは、
本当に嬉しそうにお礼を言った。

――変わってしまった今の青峰くんも、
彼女にとっては、大切な幼馴染なんだもんね。











「……あ、でも、青峰くんのケータイには
 あたしの連作先が入ってないよね」


いきなり連絡したら、誰こいつってなるような……





『それなら大丈夫です!
 こっそり登録しておきましたので♪』

「えっ!」


す、すごいな、いつの間に……。





『だから、ちゃんとあなたの名前が表示されると思いますよ』

「そ、そうなんだ……それなら大丈夫そうだね」

『はい♪』


うーん、ほんとこの子も侮れない……。










『……あっ、なんだか話が長くなっちゃいましたね。
 さんもそろそろ夕飯ですよね?』

「うん、確かもう食べられる時間のはず」

『それじゃあ……もうちょっと話していたいですけど、
 これ以上はやめておきます』

「うん」


最初はちょっと身構えちゃったけど……
やっぱり女の子だし、話しやすかったな。

あたしのほうからも、また連絡してみよう。










『また連絡しますね!』

「うん、ぜひ」

『あっ! あと、私のことも良ければ
 下の名前で読んでください♪』

「いいの?」

『はい、ぜひ!』


あたしの言葉を真似するように、
桃井さ……さつきちゃんがそう言った。





「ありがとう、じゃあ……
 そう呼ばせてもらうね、さつきちゃん」

『はい! それじゃあさん、また後で』

「うん、またね」


そうしてあたしは、さつきちゃんとの電話を切った。














「……あ、そうだ」


青峰くんのアドレス、あたしも登録しておかないと。

そう思って、再びケータイをいじり出したとき……。











「ただいま〜」


ガチャッとドアの開く音がし、
次いでリコちゃんの声が聞こえた。





「お帰りなさい、リコちゃん」


夕ご飯の前に、カントクと2年メンバーで、
明日の練習試合について話し合うって出ていって……

今しがたその話し合い(作戦会議?)が終わり、
戻ってきたみたい。










「やっぱり頭つかうとお腹すくわね〜。
 もうペコペコよ」

「がんばってる証拠だね」

「そうだといいんだけど」


苦笑しながらリコちゃんはそう言った。





「すぐ夕ご飯行くよね?」

「ええ、もちろん。
 さんは行かないの?」

「あたしは、その……
 急ぎで返したいメールがあるから」


たぶんそんなに時間かからないから、
それが終わったらすぐ行くよ。





「解った、じゃあ先に行ってるわね」

「うん」


話し合いで使ったらしき資料やらノートやらを置いて、
リコちゃんはまたすぐに部屋を出ていった。










「さてと……」


青峰くんのアドレスを登録して……
確認のために、何かメールを送っておこう。





「まさか、あたしのこと覚えてない……
 ことはないよね?」


昨日会ったばっかりだし、ちゃんと自己紹介したし……
うん、大丈夫だよね、きっと。










「……よし」


これで青峰くんへのメールも送れたし、大丈夫そう。
あたしも早く、リコちゃんの後を追わなきゃ……

……って、また電話?




「……?」


知らない番号だけど……
でも流れからすると、たぶん……。










「はい、もしもし」

『おう、お前か』


やっぱり青峰くんだ……!





『なんか、さつきが勝手にアドレス送ったらしいな』

「う、うん、なんだか成り行きで
 教えてもらっちゃって……」


ほんとの理由はちょっと違うけど、
ひとまずごまかしておくことにした。





「ごめんね、やっぱり消したほうがいい?」


さつきちゃんの想いも、汲んであげたいけど……

やっぱり勝手にアドレス送られるのは、
気持ちのいいことじゃないとは思う。

だからこそ、提案してみたんだけど……










『……いや、別にいい』

「えっ、いいの?」

『ああ』


てっきり嫌がられると思ったんだけど……





『お前そんな嫌な奴じゃなさそーだから、
 別に悪用したりはしねぇだろ』

「そ、そんなことしないよ!」

『だったら、別にそのままでいい』


彼にとってはそんなに大したことじゃないんだろうけど……

消さなくていいという言葉が、すごく嬉しかった。










「せっかくだから、たまに連絡するね」

『いいけど、あんま多いようだと
 めんどくさくて返さねぇからな』

「うん、解った」


そこは青峰くんらしいかも。










「あっ、そういえば……
 今かかってきたこの番号、青峰くんのケータイ?」

『そうだけど』


なんでそんなこと聞くんだ?
という思いが、声音から感じられる。





「教えてもらったのアドレスだけで、
 番号は知らなかったから」

『は?
 じゃあ、誰から掛かってきたのかも解らずに出たのかよ』

「うん、そうだけど?」

『そこはお前……もっと警戒するだろ、普通』


そうかもしれないけど……
この世界であたしに電話を掛けてくる人は、限られてるし。





「でも、なんとなく青峰くんかなって思って」

『……そうかよ』


ちょっと呆れたようにそう言ってきたけど、
嫌な感じではなかった。

どっちかって言うと照れてる、ような。









『……っと、もうメシの時間みてぇだな』

「あたしたちも、そろそろ夕ご飯なんだよ」

『じゃあ、長話することもねぇな。それじゃ』

「うん、またね」


そうして青峰くんは、あっさり電話を切った。










「お腹すいてたのかな……なんて、
 そう言うあたしもお腹すいてるけど」


それにしても……

昨日も感じたけど、今の青峰くんでも
けっこう普通に話はしてくれるよね。

良かった……。





「あとは、WCのときだな……」


そうだ、後で黒子くんに青峰くんのこと
聞いてみようと思ってたんだった。

タイミングを見計らって、声をかけよう。


そんなことを考えながら、あたしはもう一度
手にしているケータイに視線を戻した。

















みんなが自然に笑い合う姿を この目で見たいから


(そのために何か 出来ることをしたい)



























+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 久々に長編をアップしました!
 ヒロイン、こんな子だったかな?感がハンパないです。

 とゆうか、このヒロインに関しては、連続して書いているときから既に
 だんだん性格変わってんな…という自覚はありました。(え