たたたたたっ
「骸さーん!」
「そんなに慌てて、どうしました?」
「初詣に行きませんか?」
「初詣?」
はい、そんなわけで私と骸さん、
犬ちゃんと千種くんで近くの神社までやって来ました。
「すげー、デカイびょん!
、これ何なんら?」
「これは鳥居って言うんだよ」
「へー!」
犬ちゃんは鳥居を見るのが初めてみたいで、
まじまじと観察していた。
その様子がかわいくて、私も微笑ましい気持ちになる。
「どうでもいいけど……寒い……」
一方の千種くんは、すでに帰りたそうだ。
まあ、寒いし無理もないか……。
「それにしても、」
「はい」
「なんで今さら初詣なんです?」
そうなんです。
私が初詣に行こうと言い出した今日は、
実は2月7日なのです。
「だって、お正月に行ってなかったし、
行きたいなーって思ったので」
「もっと早く言ってくれたら……
せめて1月の前半あたりで」
「そのときは忘れてました!」
「はぁ……」
あ、骸さんがため息ついてる。
「あなたは、相変わらずマイペースですね」
「えへへ、それほどでも」
「褒めたわけではないのですが……」
あれ?
またため息ついちゃった。
「……まぁ、いいでしょう。
逆に言えば、そこがあなたの長所ですから」
「……???」
なんだかよく分かんないけど、まぁいっか!
骸さんが頭なでてくれたし。
「ー!
あれは? あれは何なんら!?」
「それはお賽銭箱だよ〜」
犬ちゃんが、いつの間にか神社の奥まで進んでいる。
「お賽銭を入れて、お参りするの。
せっかく来たんだし、みんなでお祈りして行こう」
「初詣と行ったら、これをやらないとですからね」
「はい!」
むしろ、他に何をやるの?
って感じだもんね。
「めんどい……」
「いいから、千種くんも!」
未だに帰りたそうな千種くんを引っ張って、
私と骸さんも犬ちゃんそばまで行く。
「はい、これお賽銭ね」
「それでどうするん?」
「こうやって……」
言いながら、私はお賽銭を投げてみせる。
「お賽銭箱に入れて、お参りするんだよ」
「わかったびょん!」
犬ちゃんは、私が説明した通り
素直にお賽銭を投げてお参りをしている。
「…………」
さてと……
私は、何についてお参りしようかな。
今年は受験生だから、勉強のこともいいか。
でも、それじゃ少しつまんないし……
健康っていうのもアリだけど……
「…………」
……うん、やっぱりこれかな。
「あなたは何についてお参りしたんですか?」
「秘密ですよ♪」
「そうですか……
まぁ人に教えると叶わないと言いますからね」
「そう聞きますね〜」
ってか、ものすごく今さらなんだけど
骸さんってやけに日本に詳しいよね。
なんだかんだで日本が好きなのかな?
「えっと……じゃあ骸さんも、
お参りの内容は教えてくれないってことですよね?」
ちょっと気になってたんだけど。
「知りたいのなら、教えてあげますよ」
「え! いいんですか!?」
でもさっき、人に教えたら叶わないって
自分でも言ってたのに……?
「別に構いません」
「え、えーと、じゃあ……知りたいです」
一体どんなことを……
「僕は、「とずっと一緒にいられますように」と願いました」
「え……」
ええっ!?
「ななな、なんですか、それ!?」
「何か問題でも?」
「いえ、問題はないです!」
むしろ嬉しいなーって思いますけど……
……いやいや、そうじゃなくて!
「あの〜……」
「何です?」
「それって……
教えちゃったから叶わない、とか……」
そんなこと、ないですよね……?
「さぁ、どうでしょう」
「なんで投げやりなんですか!?」
「僕は、それほど神を信じていませんからね」
「え?」
こうして初詣に来たのに?
「こうして初詣に来たのは、
他でもないあなたにお願いされたからです」
「えっ」
「そうじゃなければ、わざわざ来たりしません」
「そ、そうですか……」
それはちょっと……いや、かなり嬉しいな。
「それから、」
「はい」
「僕は、自分の願いは自ら叶えますから」
「えっ……」
「だから、心配無用ですよ」
骸さん……
「それって、つまり……
私とずっと一緒にいてくれるってことですか?」
「そういうことですね。
たとえあなたが僕から離れたがっても、離しませんよ」
「……!」
どうしよう……すごく嬉しい……!
「さぁ、そろそろ帰りましょう。
寒さも増してきましたから」
「は、はい!」
骸さんから、嬉しい言葉も聞けたし……
今日は初詣に来て良かったな♪
「それに……」
それに何より……
私がお願いしたことも、同じだったんだもの。
――骸さんと、ずっと一緒にいられますように。
その願いが、きっと叶うようにと
(強く、願った)
++++++++++++++++++++++++++
◇あやめちゃんのリクエスト夢◇
2008年・お年賀企画、ゲスト枠の第一弾でした。
犬ちゃんと千種が最後のほう空気になってしまったので、
もう少しうまく登場させられるよう、
今後も精進して参りたいと思います。
いろいろあって現在は骸さんが最推しなので、
もっと色々書いてみたい気持ちはあります。
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