「……ああ、。ちょっといいですか?」
「うん?」
館の廊下を歩いているところで、ルカに声を掛けられた。
「こっち来い」と手招きされたので、(あたしにしては)素直に従う。
「なんか用?」
「ええ。これなんですが…」
「……手紙?」
「お嬢様からの依頼だそうです」
お嬢から依頼?いったい何だろう…
不思議に思いつつも、あたしはルカからその手紙を受け取って開いてみた。
『 へ
私からに依頼します。
今から挙げるものを町で買いそろえて、地図に示した場所まで持ってきてください。
だいたい夕方くらいに来てもらえると、依頼としてはいいかも。
急がなくて大丈夫だから、途中でご飯を食べたりお茶したりして
のんびりとこなしてください。
一人で歩き回るのもきっと退屈だろうから、お供をつけるね。
目の前に居る従者を、ぜひ使ってあげてください。
それじゃあ、また後で。
フェリチータ 』
「……お嬢様は何と?」
「うーん……要するに、
『目の前に居る帽子魔人と一緒に書き出したものを買って指定の場所まで持ってきてください』…だって」
「なっ、なんですかその『帽子魔人』って!!」
お嬢様がそんな書き方をするわけないでしょう! と、
ルカはあたしの手から依頼書を取り上げて読み始める。
そしてすぐ、あたしのほうに視線を戻した。
「ほら、見なさい!
どこにも『帽子魔人』なんて書いてないじゃないですか!」
「いや、そっちのほうが面白いかなーと思って」
「全然面白くないですよ!」
「だってデビトとパーチェ、いつも言ってるし」
「あの二人がおかしいんです!!」
いつも思ってたけど、ルカって漫才コンビのツッコミ担当みたいだよね。
…言ったら割と傷つきそうなので、言わないでおくけども。
「と、とにかく!
他でもないお嬢様からの依頼です。さっそく町に行きましょう」
「はーい」(棒読み)
「返事に感情がこもってないですよ、!」
そんなこんなで、あたしはルカをからかいつつも一緒に町へ向かった。
「それで、何を買ってくるんだったっけ?」
さっきルカに取り上げられてからは、依頼書はルカに預けたままだった。
あんまり買い出しリストをじっくり見てなかったので、イマイチ覚えてないあたしだ。
「そうですね……
けっこう色々なお店に行かないと揃わないんですが」
「じゃあ効率よくいかないとね」
「ええ、その通りです。まずは……」
そんなこんなで、あたしが小難しいことを考えるまでもなく
まずここに行って、次にあそこに行って…と、ルカが指示を出してくれた。
…さすが、長年お嬢の従者を務めてきただけのことはあるね。
なんか、こーゆーのが板についてるってゆーかさ。
「どうしたんですが、ー! 次のお店に行きますよー!」
ちょっと考え込んでいたら、いつの間にかルカとの距離があいてて
少し叫ぶようにしてあたしを呼んでいた。
「ごめーん、今行く!」
お嬢は「のんびり」って書いてくれてたけど、あんまりのんびりしても時間に間に合わないもんね。
そう思いつつ、あたしはルカのところまで駆け寄った。
「うーんと…あとは指定の場所に行くだけだよね?」
「ええ…依頼書にあったものは、全て買い揃えましたから」
だんだん日も傾いてきて、時間も指定された夕方に合わせていけそうだ。
「ですが、何故この場所に……」
依頼書に書かれた地図を見ながら、ルカがつぶやく。
「知ってる場所?」
「……地図を見る限りは、おそらく」
どうやら、お嬢がここに呼び出した理由がルカ的にはよくわかんないのだという。
「……まあ、行けばわかるよ!
お嬢が待ってるし、急ご?」
「そうですね……
他でもないお嬢様をお待たせするわけにもいきませんし!!」
こいつホントお嬢バカだよなぁ……
そんなこと思いつつも、あたしは口には出さず歩き続けた。
「ここですね」
「へー……ってここだったの!?」
「私が地図を間違って見ていなければ…ですが」
てか、ここ…あの教会じゃん!?
「なんで、ここに……」
「おそらく、中に入れば解かるでしょう」
お嬢様もいらっしゃるでしょうから、と、ルカは教会の扉に手をかける。
あたしも慌ててその後に続いた。
「……あ、! ルカ!」
教会の中に足を踏み入れると、ちょうど真ん中あたりにお嬢が立っていた。
あたしたちに気づき、こちらにやって来る。
「依頼書にあったもの、全部買ってきたよ」
「ありがとう。
ええと…リベルタ! これ運んでくれる?」
「おう、任せとけよお嬢!」
お嬢の声に従い、リベルタもこちらに駆け寄ってくる。
そして(主にルカに持たせていた)荷物を全部受け取り、すぐに奥の部屋に行ってしまった。
「ねえ、お嬢。
一体今からここで何するの?」
「うん、ちょっとね」
問いかけてみるが、お嬢は「まだ秘密」と言って微笑んでいる。
間もなくして、今度はデビトとパーチェが姿を現した。
「デビト! パーチェ!
どうしたんです、二人とも。今日は共同の任務だったはずじゃ…」
「だーからァ、これがその『任務』だっつーの。なァ?」
「そうそう!
おれたちも、お嬢から依頼を受けたんだよねー」
もしかしてリベルタも? と聞いてみると、
予想通り「そうだよ!」とパーチェが答えてくれた。
「よォーし! じゃあルカはこっち来いよ」
「な、なんでですか?」
「いーからいーから!
ほらルカちゃん、おとなしくしましょうね〜〜」
「ちょ、ちょっとパーチェ!
こんなところで能力を使わないでください!」
そんなこんなで、ルカはあっという間に?デビトとパーチェによって
奥の部屋に連れてかれてしまった。
「お嬢…これホントにさ、今から何すんの?」
「すぐ解かるよ。
ほら、もこっちの部屋に来て」
「え!」
てか、この教会そんな広かったの!?
と、場違いなことを考えながら、あたしはお嬢についていった。
「来たのね、」
「マンマ!」
通された部屋に入ると、そこにはマンマの姿があった。
いよいよ何が起きるかわからなくて混乱するあたしに、お嬢がようやく種明かしをする。
「実はね…これから、とルカの結婚式をしようと思って」
「…………結婚式?」
「そう」
どうやら、買いそろえるようにと指示があった髪飾りやドレスなど…
もろもろは結婚式に使うものだったらしい。
「が私たちの仲間になってから、7年…正直つらいことも哀しいこともたくさんあった。
でもね…そんなときいつも、やルカが支えてくれてたの。
二人にはすごく感謝してる。だから……」
――だから、二人のために何かしたかった。
少し照れくさそうにはにかみ、お嬢はそう言った。
「お嬢……」
どうしよう…って、どうしようもないか。
やばいな、すごく嬉しい……
「お嬢…ありがと!」
あなたが…あなたとリベルタがあのときあたしを信じてくれたから、
あたしは今こうしてここで生きていられる。
あなたが背中を押してくれたから、あたしは今こうしてルカの隣を歩いていられるんだ。
「お礼を言うのは私のほう。ありがとう、」
お嬢のその言葉が嬉しくて、涙が出そうになった。
「ほらほら、泣くのはまだ早いわよ、」
「マンマ…」
「事情を説明したところで…さっそく準備に取り掛かりましょう」
「うん!」
マンマの言葉に、お嬢が力強く返事をした。
「……
これからもずっと、ルカと一緒に幸せな道を歩いていってね」
「……うん!」
バージンロードを歩く直前、お嬢がそう言ってくれた。
「……おい、忘れ物だ」
「ノヴァ!」
今ここにやって来たのか、ノヴァがひょっこり姿を現した。
その手にあった花束みたいなものを、こちらに差し出してくる。
「マンマに頼まれて、バラ園のバラを綺麗にまとめてもらってきた」
「すごい綺麗…
……あ、もしかしてこれ」
「そう、バラのブーケよ」
マンマがにっこり微笑んでそう言った。
「マンマ…ノヴァもありがと!」
「べ、別に僕は…マンマに頼まれただけだ!」
少し照れているのか、顔を赤くして叫んだ。
「すまんすまん、遅くなった!」
「準備に手間取ってしまってな…
まあ、相手はお前たちなのだから、少し待たせるくらいがちょうどいいだろう」
「ちょっとジョーリィ!あんたそれどーゆー意味!?」
「どうもこうも、そういう意味だが? クックック」
ノヴァのすぐ後に、ダンテとジョーリィが教会に入ってきた。
つーかこのグラサン、何がクックックだよ!
「諜報部の船で、先に準備してきたんだ」
「準備?」
「ああ。この式が終わったあとは、船上パーティだからな!」
「ええ! すごい!」
船上パーティなんて…なんかお金持ちっぽい!
「ちょっとあなたたち!いつまでそうしているんです!
いい加減、式を始めませんか!?」
少し離れたところであたしを待っていたルカが、イライラしながら言った。
どうやら、待ちくたびれてしまったようだ。
「を足止めしてるようにしか思えないんですが……」
「いや、実際そうだし」
「デビト!?」
「ホント、その通りだよね」
「パーチェ!?」
「まあ確かに、ルカにってもったいないよなー」
「お前の意見に合わせるのは癪だが…そこは同意する」
「ちょっ、リベルタにノヴァまで!?」
「いやぁ、実は俺もな…少し歳の離れた妹を嫁に出すような感じがして、寂しくてな」
「ダンテ!?」
「クックック…それは私も同じさ。
せっかくの研究材料を実の息子に取られたのだからな」
「ジョーリィ、あなたまで!?」
散々な言われようで落ち込むルカが、
最後の望みと言わんばかりでお嬢のほうに視線を向ける。
「私も本当は、ルカなんかにをあげたくないけれど…」
「お嬢様!!!???」(ガーン!!)
「そこにの幸せがあるなら、邪魔はしないよ」
「お嬢様!!!!!」(パアァァァッ)
なんかお嬢が割と毒舌だったりルカが相変わらずお嬢バカだったり
ツッコミどころは多いんだけど、とにかく……
言いたいことは、ひとつだ。
「ありがとう……」
ありがとう、お嬢。
ありがとう、みんな。
それから……
ありがとう、ルカ。
あなたと出逢ってからこの7年間、あたしにとってはホントにかけがえのない時間だった。
そしてこれからも、そんな時間を二人で過ごしていこうね。
「ええ、もちろんです」
そう言って微笑んだあなた、支えてくれるファミリー、
ここに在るものがみんな、あたしの大切なもの。
(心からそう思うよ)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ラスト7発目はルカでした!
今めっちゃアルカナにハマっているので、その影響で…。
いやぁ、ルカがすっごい好きですね。ここでの扱いハンパなく可哀相ですが(笑)
幼馴染・三人でつるんでるとことか、和みます(*´∀`)v
本当はパーパも登場予定だったのですが、(冗談ではなく)本気で結婚式を
邪魔してきそうなのでやめておきました。(娘のように思っている設定)
今頃、船で一人ヤケ酒をしているのだと思います(笑)