『あ、……見て、和成くん!』


          手を繋いで歩き出してから間もないとき。
          ちゃんが空を指さしながら、オレを呼んだ。

          それに従い見上げてみると、空から何か細かくて白いものが降ってくる。







          『粉雪だ……』


          彼女がつぶやいた通り、見上げた空から舞い散るそれは、粉雪だった。










          『……なんか、こないだ見たドラマみたい』

          『ドラマ?』

          『うん』


          一昨日彼女がたまたま見ていたドラマで、結婚式のシーンがあって。
          そこで新郎新婦が教会を出るときに、白い花びらを降らせていたらしく……

          幸せそうな二人が印象的で、覚えていたのだという。







          『いま降ってるのは雪だけど、でもすごく似てる……』


          ドラマの中にあった祝福の瞬間と、今とを、ちゃんは重ねているらしい。

          ……オレはそのドラマを見てねーけど、たぶんハッピーエンドだったんだろう。
          空を見上げる彼女の優しい顔が、そうだと言っているようだった。















          『……ちゃんも、やっぱ結婚に憧れてたりすんの?』

          『うーん、そうだなぁ……
           今までずっと、全然興味が無かったんだけど』


          でも、今は少しだけ、してみたいなぁとも思う。
          そう言って、優しい顔のままオレを見上げる。

          その顔で見つめられると、なんつーか……いつも心があったかくなる。
          例えるなら、固く結ばれていた何かがほどけるような気持ち。







          『ちゃん……』


          単に「思いきりバスケがしたい」とか「勝ちたい」だとか、目の前のことだけじゃなくて。
          ずっとずっと先まで見据えていけるよう、いつも彼女が道しるべを描いてくれる。

          その道しるべがオレに示すものは毎回違うけど、今は……
          今はただ、この先もずっとちゃんと一緒に居られるような道を、示してくれている……気がした。










          そんな突拍子もねーことを考えながら、既に粉雪に視線を戻しているちゃんを見やる。


          ――この先もずっと、君よ、どうか。
          君の意志で自由に、オレを選んでほしいんだ――……





































          「……――和成くん?」


          12月の初め、「なんとなく会いたくなった」と言って
          突然秀徳までやって来たちゃん。
          一緒に帰る途中、少し早い初雪を一緒に見たんだった。

          ……彼女の「雪に合う話」を聞きながら、オレはそんなことを思い出していた。










          「どうかした……?」


          オレが何か別のことを考えていたことに、気づいたらしい。
          不安そうな顔をして、見上げてくる。

          そんな彼女に、オレは黙って首を横に振った。







          「なんでもねーよ」


          大丈夫だから、そんな顔するな。















          「それより、ちゃん……ちょっとこっち来て」

          「え、……」


          戸惑う彼女の手を取って立たせてやり、
          そしてそのまま、歩道のすみにつれていく。







          「和成くん、バス停からあんま離れると……」


          バスが来たことに、気づけないよ。
          戸惑い続ける彼女のその言葉も、聞こえないフリ。










          「なあ、ちゃん」

          「……?」


          首をかしげて、オレの言葉の続きを待つ。
          そんな彼女の瞳をじっと見つめて、オレは言う。

















          「この先も、ずっと……ずっと、オレと一緒に居てください」


          一生を終えるそのときまで、ずっと。








          「え、あ、あの……」


          オレの唐突な言葉に、彼女はどう答えようか迷っているらしい。







          「そ、それって、どうゆう……」

          「どーゆーことかは、ちゃんなら解るっしょ?」

          「……!」


          彼女の言葉にかぶせるように言うと、今度は顔を真っ赤にさせた。
          どうやら、意味はちゃんと理解してくれたらしい。















          「いつか、オレがもっと大人になったら、もう一度ちゃんと言うから」


          約束な。
          そう言うと、すげー幸せそうに笑って頷いてくれた。







          「……和成くん」

          「ん?」

          「はい」


          そう言って、ちゃんは少し照れくさそうに小指を差し出した。
          たぶん「ゆびきり」がしたいんだって解ったから、オレも自分の小指をそれに絡める。

          ――バスを一本見送っただけなのに、もう辺りは真っ暗だ。
          でも、空にはたくさん星が輝いていて、すげー綺麗だった。







          「約束ね」

          「おーよっ」


          こんな綺麗な夜に守られながら、約束しよう。
          大切な約束を、大切な君と。




















          「……あ、次のバス、来たね」


          そう言いながらも、彼女がバス停に戻る様子は見られない。

          もしかしたら……オレと同じことを、考えているのだろうか。
          そんな期待を抱きながら、彼女を見やる。







          「……なあ、ちゃん」

          「ん?」

          「バスは……最終のでよくね?」


          あのバスも見送って、ねぇ少し歩こうか。










          「うん……そうだね」


          やっぱ、同じこと考えてたみてーだ。

          それが妙に嬉しくて、顔がにやけてしまう。







          「行こう、ちゃん」

          「うん!」


          オレは彼女の手をとって歩き出した。



































          「あ、……見て、和成くん!」


          ちゃんがそう言いながら、空を指さした。

          その一連の動作がこの間のことと重なり、まさかと思いながら空を見上げる。
          すると、予想通り白いものが降っていた。







          「粉雪だ……」


          一緒に初雪を見た日に聞いたんだけど……彼女は、雪が好きらしい。

          だから、普段よりも無邪気に笑ってはしゃいでいるんだと思う。
          繋いだ手を離し、雪が降る中でくるくる回ってすげー楽しそうだ。










          「綺麗……」   「綺麗だな……」


          雪に見とれているちゃんのつぶやきと、
          オレが無意識に発したつぶやきが、重なった。

          けど、彼女にはオレのつぶやきは聞こえなかったらしい。
          未だに空を見上げ、舞い散る粉雪を見つめている。







          「天使の羽みてーだな」


          はしゃいだ君へと舞い散る粉雪が。

          そんなことを考えながら、見とれてしまう。
          粉雪ではなく、天使のような、彼女に。















          「雪すごいね、和成くん!」


          オレのところに戻ってきて、心からの笑顔でそう言うちゃん。

          君のその笑顔が、この真冬を……
          オレの心を、いつも灯すんだ。


          ――ありがとな、ちゃん。こんなオレの隣に居てくれて。
          そんな君だからこそ、オレは探すんだ。

          この先もずっと信じていける、揺るがない永遠を――……











































          「……っと、いい加減にしねーと風邪引くよな」


          そう言いながら、和成くんはバッグの中から折り畳み傘を取り出した。
          そして、それを開いて差してくれる。










          「傘、持ってたんだ……」

          「当ったり前だろー?」


          天気予報で言ってたしな、と、笑いながら言う。

          ――なんてゆうか、この……
          和成くんのこの、何も着飾っていないような笑い方が実は好きだ。
          からかわれている、と感じることもしばしばだけど、なんとなく安心できるから……。















          「つーか、次こそバスに乗らねーと本気でやべぇな」

          「そうだね……そろそろ引き返そうか?」


          正直なところ、そんなに歩いてはいないんだけれど。
          でも、こんなちょっとしたことで、心はすごくあたたかくなっていた。















          
『この先も、ずっと……ずっと、オレと一緒に居てください』



          ――その言葉がどんなに嬉しかったか。君はきっと、想像できないでしょう。














          「和成くん」

          「んー?」

          「あたし……和成くんと、ずっと一緒に居る……
           ……ううん、ずっと一緒に、居させてください」


          あたしの言葉に、和成くんは珍しく照れた表情を見せて笑っていた。








































towayuki




(キミは僕がはじめて 永遠を探した恋人)




――あたしが、はじめて、永遠をあずけた恋人。






















































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            というわけで(?)和成くん短編でした!いかがでしたか?
            いい加減あたしは、一話で完結するとゆうことを覚えるべきなのである。(何

            タイトルからお察しの通りこれは、アレです……達央さんの。
            これ聴いた瞬間「ぜってー和成くんで書くぜ!」と思いましたよ。まじで。
            まさに、こーゆーのが理想なんですよね。どストライクですよ!!

            まじ和成くんが格好よすぎて毎日悶えています。
            仕事中も何かにつけて考えていますしね。(仕事しろよ

            他に書いてみたい曲があったんで、できればそっちもそのうち…!
            とにかく、最後までお付き合い頂きありがとうございました。