「カゲトラさん、ちょっと出かけてきますね」
「今からか?」
「はい。
ちょっと友人と一緒にご飯食べてきます!」
なので、今日の夕飯は大丈夫です。
あたしがそう言うと、カゲトラさんはあたしの服装を一通り見たあと、
怪訝そうな顔で問いかけてくる。
「まさか、男じゃねーだろうな」
「はい、……違いますよ。女の子の友人、ふたりです」
ちょこっとぶりに会える機会が得られたので、
ご飯食べがてらおしゃべりしてきたいんです!
あたしのそんな説明にひとまずは納得してくれたようで、
ようやくカゲトラさんは送り出してくれた。
「……あ、リコちゃんにはメールしておきますが、
一応カゲトラさんからも伝えてくださいね」
「了解ー。
あんま遅くなるなよ?」
「はい」
「絶対だぞ?」
「は、はい」
念を押してくるカゲトラさんに苦笑しつつ、あたしは家を出た。
「カゲトラさん、すごい気迫だったなぁ」
本当のお父さんみたいに心配してくれるのは嬉しいけれど、
なんてゆうか、リコちゃんに対するくらい親馬鹿な感じがしなくもない。
「会う相手が緑間くんと高尾くん(=男)ってバレたら、どうなるんだろう……」
なんか、想像しただけで怖いな。
いや、ここはあえて想像しないでおくべきか……。
「……と、とりあえず、集合場所に行かないとね!」
ちょっとだけ想像してしまった情景が思いのほか恐ろしかったので、
一度頭を振ってから、気を取り直して歩き出した。
「おーい、ちゃーん!」
「高尾くん! 緑間くん!」
集合場所につくと、既にふたりの姿があった。
こっちこっち、と言いながら、高尾くんが手招きしてくれる。
「ごめん、遅くなっちゃった…!」
「いや、まだ時間前だ。気にすることはないのだよ」
「そうそう、オレらも部活が思ってたより早く終わったからさ」
だから早めに来てたんだよね、と、高尾くんが続けた。
「じゃ、ぼちぼち行きますかー」
「うん!」
高尾くんの声にならい、あたしと緑間くんも歩き出した。
「ちゃんは、なんか食べたいもんとかある?」
「この辺りだったら、だいたい揃っているのだよ」
うーん、そうだな……
「特には無いかなぁ。
ファミレスでいいんじゃない?デザートいっぱいあるし」
デザート重要だもんね、デザート!
「プッ……
ちゃん、力説しすぎだから!」
「そ、そんなことないでしょ!?」
デザートは重要なんだよ!
「緑間くんもそう思うよね!?」
「ああ、お前が言うなら間違いないだろう」
「ほらー!」
「ちょ、真ちゃん、
ちゃんが言うこと全部肯定すればいいってわけじゃねーからな?」
緑間くんがあたしについたことで、高尾くんの立場が弱くなってしまったようだ。
ちょっと焦りつつ緑間くんにツッコミを入れている。
「と、とにかくファミレスに行こーぜ」
「そうだな」
「はーい」
そこからまた、他愛のない話をしながらファミレスに向かった。
「あれ?そーいやちゃん、デザート注文してなくね?」
ファミレスに着いて、注文をし終えたあたしたち。
今は頼んだものが運ばれてくるのを待っているところだ。
そこでふと気になったのか、高尾くんがそんなことを聞いてきた。
「そういえば、そうだな」
あんなに力説していたのに、と緑間くんが続ける。
「うん、デザートは追加で頼むの」
先に頼んじゃったら、ご飯でお腹いっぱいになっちゃったとき大変だし。
「ご飯食べても余裕があればガッツリしたデザート頼むし、
余裕なければちょっとしたデザートにするから」
だから、あえて後から追加するんだよ!
そんなあたしの言葉が再びツボだったのか、
高尾くんが先ほどと同じようにプッと噴き出した。
「ごめん、ちゃん最高だわ」
「なんでそんなに笑ってるの、高尾くん!」
失礼しちゃうわ!
と、わざと大げさに言うと、高尾くんはますます笑い出してしまう。
「まったく……。
それにしても、早くご飯こないかな」
お腹すいちゃったな。
「確かに、待っている間は暇だな。
……いつまで笑っているのだよ、高尾。あれを出せ」
「はあ、面白かった……
あーハイハイ、あれね」
緑間くんに促され、やっと笑いの治まった高尾くんが荷物をごそごそあさる。
てか、あれって何だろう?
「はい、ちゃん。ハッピーバースデー!」
「え、……」
そう言いながら高尾くんが差し出したのは、可愛らしくラッピングされた包み。
いや、それよりもまず、どうして……
「なんで、誕生日……」
「そりゃあ、オレらが知らねーわけないじゃん。
な、真ちゃん?」
「ああ、桃井に教えてもらったのだよ」
「って、なんでバラしたの!?」
ここは普通、秘密にしとくとこだろ!
そんな高尾くんのツッコミが面白くて、思わず笑ってしまった。
「……んじゃー改めて。
これオレらからのプレゼントね。どーぞ」
「誕生日おめでとう、」
「あ、ありが、とう……」
どうしよう……
すごく、嬉しい……。
「開けても、いいかな」
「もちろんなのだよ」
緑間くんの答えを受け、あたしは包みを丁寧に開ける。
そして中から出てきたのは、すごくおしゃれなペンダントだった。
「もしかしてこれ……バスケ?」
「正解〜、さすがちゃんだな」
パッと見は解らないんだけど、よく見てみるとバスケのボールをモチーフにしている。
「けど洒落たデザインだから、さり気なくていいっしょ」
「うん!」
「気に入ってもらえたようだな」
「うん、本当にありがとう!」
ふたりを見てそう言ったあと、あたしは再び手の中にあるペンダントに視線を落とす。
――まさか、ふたりが誕生日を祝ってくれるだなんて。
思ってもみなかった。
そもそも、出会えたこと自体がまさにキセキなのだ。
それが、こうして親しく話をしたり一緒にご飯を食べたりする仲になった。
絶対に交わることのない世界に居たひとたちは、
今は手を伸ばせば触れられる位置に居る。
そして心から、あたしの誕生日を祝ってくれている…………
「ちょっ……ちゃん!?」
「ど、どうしたのだよ」
「え……?」
ふたりの焦る声が聞こえて、ふと顔を上げる。
するとそこで、やっと気がついた。
自分が、泣いていることに。
「あ、……ごめん」
ふたりを心配させまいと、慌てて涙を拭う。
幸いなことに、それ以上涙は流れてこなかった。
「オレたちが、何かしてしまったか」
緑間くんが不安そうな顔をして言う。
「やっぱプレゼントが気に食わなかったとか?」
高尾くんも、いつもとは違う真剣な顔をして言った。
「ううん、違うよ!
そうじゃなくて……」
そうじゃ、なくて……
「ふたりに祝ってもらえたことが、すごく嬉しくて」
すごく、尊いことに思えたから。
だから、自然と涙が出てきたんだと思う。
あたしがそうつぶやくと、
ふたりは一瞬目を丸くしたあと、安心したように……そして照れくさそうに笑う。
「そんなに喜ばれるとは思わなかったな……ハハ」
「だが、安心したのだよ」
お前が心から喜んでくれて。
「うん……すごく、嬉しい!」
本当に、ありがとう。
あなたたちと出会えて、あたしは幸せです――……
嬉しそうに笑うお前を見て確信したのだ
(サプライズは成功したのだよ)(どうやらそーみたいだな)
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そんなわけで(?)自分の誕生日を祝うために書いた、緑間と高尾のお話でした!
まじ自分の好みに走っています。(オイ
すみません。
もう最近このふたりの組み合わせが好きすぎてしゃーないです。
ほんと緑間はツンデレのイメージが強くて、いろいろ書いてみたくなりますね。ツンデレ最高だ!
あと高尾はなんかもう、あたしの中では「和成くん」です。(意味不明
和成くんって名前かっこよすぎだから!まじで。素敵すぎる。いつか「和成くん」と呼びたい。(何
いろいろアレでしたが(?)最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
できればまた、このふたり+ヒロインで何か書きたいです!