「……おい。おい、高尾」
「んーー……?」
「授業はとっくに終わっている。早く起きるのだよ」
ケータイが鳴っているから早く確認しろ。
真ちゃんは苛立たしげにそう言った。
けど、早くっつったって……
今まで寝てた奴が、そんな俊敏に動けるわけねーじゃん。
そんなことを思いつつも、オレは急かされるままポケットに入っていたケータイを取り出し、
(おそらくメールが届いたと思われるので)受信画面を開きメールをチェックする。
「……!」
そして送信元の名前を読んだだけなのに、急に目が覚めた。
「ちゃんからだ……」
そう、メールを送ってきたのは、最近仲良くしてもらっているちゃん。
いろいろあって知り合ったわけだけど、実はオレの好きな子だったりする。
……まあ、それは真ちゃんにも言えることなんだけどさ。
2012/11/21 12:39
From
Sub こんにちは!
―――――――――――
突然で申し訳ないん
だけど…今日の放課
後ってちょっと会え
ないかな?またご飯
とか食べに行きたい
んだけど、どうでし
ょうか??
―――――END―――――
「今日の放課後?」
マジで突然だな……
いや、まあ、本音としてはすげー嬉しいけど。
……けど、今日の放課後っていやぁ、確か…
「真ちゃん、今日の放課後ってさ……」
「部活ならば中止なのだよ」
思い当たることがあり尋ねてみると、予想通りの答えが返ってきた。
……確か、昨日の部活で大坪さんが
「早い時間から設備点検が入るから部活は全面中止だ」とか言ってた気がする。
「こないだのことに続き、マジでラッキーだな……」
「フン、お前なりに人事を尽くしていたということだろう」
眼鏡をくいっと直しながら、真ちゃんが言った。
(「これでラッキーアイテムを持ち歩けばなおいい」という言葉は、適当にスルーしておいた)
「っと、とりあえずメール返さねーと……」
オレはすぐに返信画面を開き、文字を打ち始めた。
こないだと同じように「電話していいか」という短い内容で。
……確か、メールで長々とやり取りするの苦手って言ってたもんな。
「お、返ってきた」
その内容を確認したあと、これまたこないだと同じようにメール画面を閉じてアドレス帳を開く。
「」のページを開き、その番号を押した。
『もしもし、です』
「あ、ちゃん?
どーも、高尾です」
わざとふざけた感じで言うと、ちゃんも笑いながら「こんにちは」と返してくれた。
「んでさ、さっきのメールであった話なんだけど」
『うん……
ほんと突然だよね。ごめんね』
でも、どうしても今日会いたくて……。
そう言ったちゃんに対し、
「そんなに会いたがってくれてるのか」と、ちょっと照れくさくなってしまった。
けど、それを悟られないようにと、オレは普段通りを装って話を続ける。
「突然っちゃあ突然だけど、グッドタイミングだったぜ」
『え?』
「ラッキーなことに、今日の放課後は部活全面中止なんだよね」
昨日大坪さんが言ってたから、間違いないよ。
『そう、なんだ……
まさか、また設備点検?』
「おー、正解!
ちゃん、冴えてるねー」
『あはは、ただの当てずっぽだって』
オレの言葉で、ちゃんが笑ってくれている。
それがすげー嬉しかった。
『えーと、じゃあ……
今日、会えるのかな?』
「もちろん」
『そっか、良かった!』
ほっとしたように言ったちゃん。
……でも、ずっと気になってたんだけど、なんで今日なんだ?
そう思いながら、オレは教室の壁に掛けてあったカレンダーに目を向ける。
今日は、11月21日…………
……あー、なるほど。
そーゆーことね。
「なあ、ちゃん」
『ん?』
「オレちょっと行きたいとこあんだけど、いい?」
主役だし、我が侭のひとつくらいいーよね。
そう続けると、電話越しにちゃんが焦るのが解った。
『な、なんで……!』
「ははっ、オレをナメてもらっちゃー困るな」
『そんなー……』
バレちゃったら、サプライズにならないじゃないの……。
罰が悪そうにそう言った。
「とにかくさ、今日の放課後は大丈夫だからさ。
集合場所とか時間は、後でメールするよ」
『うん、解った。
あたしは何時でも大丈夫だから、高尾くんの都合のいいように、で』
「りょーかい」
そう言って、オレは電話を切った。
「……やっぺ、ちょー嬉しいんだけど!
ちゃんとデート(仮)の約束しちゃった!」
「……良かったな」
テンションの上がるオレの横で、黙々と弁当を食べながら真ちゃんが言う。
「またまたそんなこと言ってー!
本当は羨ましいくせに」
「……そんなことは、ないのだよ」
いやいや、そんなことあるだろ。
顔に書いてあっから。
「まー、でも今日はオレが主役だからな。
真ちゃんには悪りーけど」
「お前が無理やりを連れ出すなら容赦しないが、
他でもないからの誘いだ。せいぜい楽しんでくるのだな」
「え? ああ……」
なんか真ちゃん、やけに引き際いーな……
「真ちゃん、放課後なんか用でもあんの?」
「別に用などない。
ただ自主練をするだけだ」
「へー」
こいつがちゃんより練習を優先するなんて珍しい……
まあ、部活が全面中止で全く練習できないってのも気に食わないのかもな。
「そんなことより、高尾」
「ん?」
「早く食わないと昼休みが終わるのだよ」
「やっべ……!」
時計を見ると、午後の授業開始まであと20分。
今日は弁当ねーから、まず購買に買いにいかねーと!
「ちょっと行ってくる!!」
真ちゃんにそう言って、オレは慌てて教室を飛び出した。
「まったく……仕方のない主役なのだよ」
「もしもし、緑間くん?」
『ああ』
「ごめんね、突然電話なんて」
直前にメールで知らされていたから、問題ないのだよ。
あたしが気にしないようにという気遣いからか、
いくらかやわらかい口調でそう言ってくれた。
「それで、あの、ちょっと相談なんだけど」
『どうした』
「う、うん……
その前に、そばに高尾くんって居ないよね?」
高尾くんに聞かれてしまっては元も子もないので、
あたしは本題に入る前にそれを確認しておきたかった。
『高尾なら授業中からずっと寝ていて、終わった今でも変わらず寝ているが』
「そ、そうなんだ」
だったら、聞かれる心配はないのかな。
「あのー……今日って高尾くんの誕生日なんだけど」
『ああ……そうだったか』
「うん。
それで、サプライズでお祝いできないかなと思って」
こないだあたしの誕生日のときに、
緑間くんと高尾くんがサプライズで祝ってくれた。
そのお返しをしたい、というわけなんだけれど。
「緑間くんも、一緒にお祝いしてくれるよね?」
『……そうしてやりたいのは、山々なのだが』
今日は用があるので、一緒に出掛けるのは難しいのだと緑間くんは言う。
「そうなんだ……」
『すまない』
「ううん、大丈夫!
気にしないで」
じゃあ、あたしひとりでお祝いしてみるね。
『ああ……お前が祝ってくれれば、高尾も喜ぶだろう』
その言葉に、「そうだといいな」と思いながら頷き返した。
『ここのところ、高尾は根を詰め過ぎている気がする』
「えっと……バスケのこと、だよね」
『ああ』
打倒誠凛に燃えるのは自分も同じだが、緑間くんが見るに、
高尾くんの燃えようも相当なのだという。
『少し肩の力を抜く必要があるだろう。
お前が、それをしてやってくれ』
「う、うん……
出来るか解らないけれど、がんばってみる」
『ああ、頼む。
とりあえず、高尾に直接連絡してみてくれないか』
「解った!
ありがとう、緑間くん」
そうして、あたしは緑間くんとの電話を切った。
『出来るか解らないけれど、がんばってみる』
電話を切る前に放った彼女の言葉が、頭の中で繰り返された。
「……お前だからこそ、できることなのだよ」
どうしてそれが解らない。
……いや、お前はそういうやつだからな。
だから横で爆睡しているこいつも、オレも……お前に惹かれているのだ。
「仕方がないから、今日ばかりはお前に譲ってやるのだよ」
未だ爆睡しているそいつを見やりながらつぶやいたとき、ケータイが鳴った。
オレのではないから、必然的にそいつのものだということになる。
……おそらく、からのメールだろうがな。
「……おい。おい、高尾」
「んーー……?」
授業はとっくに終わっているから早く起きろと告げると、だるそうに起き上がった。
「ケータイが鳴っている。早く確認しろ」
十中八九からのメールだろうからな。
彼女を待たせるようなことは、オレが許さん。
だらだら動く高尾に苛立ちながら、オレは早く確認するようにと急かした。
――せいぜい楽しんでくるといいのだよ、高尾。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
というわけで高尾和成くんの誕生祝いです!
これは「嬉しそうに〜」の続編的なものなんですが……またもや1話完結にできなかった!
まとめるのがとことん下手なのだと思われる…。
いや、とにかく、和成くんが格好よすぎて毎日悶えているあたしです。どうしてあんなに格好いいのか!
ついさっき黒子アニメの再放送見てきたんですが、(え
ちょうど秀徳戦のところで和成くんちょー出てきました。
格好いいよ!!!(それしか言えない
ところでこのお話についでですが(今さら
今回緑間がまじいい奴です。
結局緑間も高尾のこと信頼できるいい相棒と思っていればいいなと思う。
決して口にはしないけどね。(笑)
とりあえず続きます!
まだ全然祝ってねーですしね…。