こんにちは、私はです!
日頃みんなに「夢みがち」と言われていますが、
別にそんなことはありません。
「はあ〜……」
「どうしたの、」
「今日こそ、王子様が迎えに来てくれないかなーって」
「あんた、なんで自分が『夢みがち』って言われるのか分かってる?」
「ううん」
だから、これといって理由が無いから
「そんなことない」って言ってるんでしょう。
「やっぱ、無自覚だったか……」
「もう、何が言いたいの〜?」
何か、失礼なことを考えてるんだろうけれど……
「いや、うん。あんたが思ってるんだったら
それでいいんじゃないかなー」(棒読み)
「そんな棒読みで言われても、説得力ない!」
「ま、どーでもいいいじゃん」
よくないよ!
「ほらほら、そろそろ授業始まるよ」
「ごまかさないで!」
「うんうん。分かった分かった」
「ちょっと……!」
全く、もう……。
「〜、そろそろ帰ろうよー」
「うん!」
放課後になって、私たちはいつものように帰路に着く。
「ところでさぁ」
「うん」
「って、なんでそんなに『王子様』にこだわるの?」
「それは……」
『、こっちにおいで。
ママがご本読んであげるから』
『うん!』
私が小さい頃、お母さんがよく読んでくれた絵本があった。
主人公は、お姫さまでもない、いたって普通の女の子。
その子がある日、知らない人とぶつかってしまうんだけど……
実はその人が、お城に住む王子様だったんだよね。
二人はお互いに一目惚れして、
結婚してお城で幸せに暮らしました……
っていうお話だったの。
「それからずっと、憧れてて」
「その絵本に?」
「うん」
きっと私も、いつか王子様に出逢える。
あれからずっと、そう信じてるの。
「なるほどね〜」
お母さんも、
『なら、いつか逢えるわ』
って言ってくれたから……
「だから私は……ずっと信じてる」
「……そっか」
可能性が低いことは、分かっているけれど、でも……。
「ま、いつかその『王子様』が来てくれるよ!」
「どうしたの? さっきまでバカにしてたのに」
「別に、あんたなら大丈夫かなって思ったの。可愛いしね」
「か、可愛くなんかないよ」
何言ってるのよ、もう……。
「本当に可愛いから自信持ちなさいよ!
髪の毛もくるくるふわふわで、お姫さまみたいだし」
「そうかなぁ……」
「そうそう!
……あ、じゃ、ここでね」
「うん、また明日!」
「えらい数のプレゼントが届いてるみたいだぜ、ボス」
「マジかよ……」
「人気者は大変だな」
今日はオレの誕生日ということもあって、
アジトにたくさんのプレゼントが届いているらしい。
大量のプレゼントが届くのも、パーティの誘いが来るのも
もう毎年恒例と言っていい。
「まあ、祝ってくれるのは嬉しいんだけどな」
その誘いを断るのも一苦労だったりする。
そういうわけで、今年は日本に避難することにしたんだ。
仕事だって言えば、あまり口出しされねぇしな。
「理由はともかく、せっかく日本まで来たんだ。
ツナのとこに寄ってこうぜ」
「そうだな」
「はあ……」
私が出逢う王子様は、どんな人なんだろう……
「金髪だったりしたら、カッコいいかも」
「そーいや、ボスはどんな女性が好きなんだ?」
「なんだよ、いきなり」
「この業界にも、いろんな女性がいるだろ?
なのに、あんま興味なさそうにしてるし」
「う〜ん、そうだなぁ……」
「それでこう、笑顔が素敵で……」
「髪がくるくるふわふわしてて、可愛い感じの……」
「真面目に答えてくれるのは嬉しいが、
前見て歩いてくれよ」
「分かってる、分かってるよ……」
なんて言ってるそばから、
誰かと思いっきりぶつかってしまった。
「おっと、危ね……」
「い、たた……」
よく前を見ずに歩いていたせいか、
曲がり角のところで誰かとぶつかってしまう。
でも、その「誰か」が支えてくれたおかがで
私は転ばずに済んだ。
「ボス、大丈夫か?」
「いや、オレは大丈夫だけど……
それより、お前は大丈夫か?」
「え、あ、はい!」
自分の体勢を立て直しながら、私は慌てて答える。
「ごめんな、オレちょっと考え事しててさ」
「そんな……!
私も考え事をしていて、本当にすみません」
「はは、じゃあお互い様ってことだな」
そう言って笑ったその人に、
ちゃんとお礼を言おうと思って私は視線を上げる。
「……!」
私は、思わず固まってしまった。
――見つけた……私の王子様……!
「ん? どうかしたか?」
「あ、い、いえ……」
私は我に返って、姿勢を正す。
「あ、あの……本当に、ありがとうございました。
支えてくれて、助かりました!」
「……!」
ちゃんとお礼を言えて良かった、と安心したのもつかの間。
今度は、その人が固まってしまった。
「あ、あの……?」
「あ、い、いや、えっと……」
――見つけた……オレの、理想の人……
「「あの、」」
何か言いかけていたみたいなので、
続きを聞こうと口を開いたんだけれど。
その人も同時に、何か話し出そうとした。
「いや、お前から言ってくれ」
「あ、いえ! あなたからどうぞ」
続きを話そうとしてくれているのに、
私のほうから改めて催促する必要はない。
そう思いつつそのまま待っていると、
その人は少し迷ってから、再び口を開く。
「えーと、じゃあ……お前の名前は?」
「です」
「そっか、オレはディーノだ」
ディーノさん、か。
明らかに日本人ではないな、と思ってはいたけれど……
それにしても、日本語うまいなぁ。
「それで、だな……」
「はい」
「お前に一目惚れしたみたいだから、その……
オレと付き合ってくれ!」
「え……!?」
さっき、ディーノさんを見た瞬間……
「私の王子様だ!」って、直感でそう思った。
それで、まさか告白されるなんて。
私、やっと……
「……やっぱ、いきなりすぎたか?」
「い、いえ……」
私、やっと逢えたんだ……
私を迎えに来てくれる、王子様に……!
「あの、私も……
私もあなたに一目惚れしました!」
「え!? じゃ、じゃあ……」
「その……よろしく、お願いします……!」
嬉しいのと恥ずかしいのでいっぱいいっぱいだったけど、
なんとかそれだけは伝える。
「ありがとな、!!」
「きゃあっ!」
私の返事にディーノさんも喜んでくれたのか、
思いきり抱きしめられた。
「ある程度満足したら離してやれよ、ボス」
後ろに居たディーノさんよりも年上っぽい男性が、
呆れながらもそう声を掛ける。
だけどディーノさんは、嬉しそうにしながら
「おう!」とだけ答えるのだった。
「っと、もう暗いから送ってやるよ」
「……いいんですか?」
「ああ、もちろん」
そう言って笑う顔を見て、
私も嬉しくて一緒になって笑った。
やっと逢えたね!
(私だけの、素敵な王子様!)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
ディーノのバースディ夢です。
ものすごくぶっ飛んでいたので、かなり直しました。
以前のあとがきによると、ディーノの誕生日前日に
妹と電話をしていたらしく……
私「やべー、明日ディーノの誕生日だ!何か書きたいけど絶対、間に合わねぇ!」
妹「大丈夫だ間に合うよ、頑張れよ」(どこか棒読みな感じ
……とかいう会話がされたのち、必死になって書き上げたらしいです。
妹の棒読みな感じを想像したらおもしろかったので、
あえてあとがきにも残しました。