12月の、とある日の放課後。
クラスメイトの京子ちゃんから、
ツナの家でやるというクリスマスパーティに誘われた。
ハルちゃんとも久しぶりに会えそうってことで、
私は二つ返事でそのお誘いを受ける。
「24日のイブに、夜7時から始める予定なの」
「そっか、分かった」
1時間前に集まって、みんなで準備するとのことだ。
「誘ってくれてありがとう、京子ちゃん。
私、図書室に用があるからそっちに行くね」
「うん。またね、ちゃん!」
ばいばい、と言って、京子ちゃんとはそこで別れた。
「クリスマスパーティか〜……」
友達とわいわいやるなんて初めてだから、すごく楽しみだな。
それに……
ツナの家でやるんだから、山本が来る可能性も高いと思うし。
「どうなんだろ……」
来てくれるといいな。
「?」
「……!」
図書室の手前で、ふいに声を掛けられた。
考え込んでいたせいか、私は必要以上に驚いてしまう。
「あ、なんだ、ツナか……」
「なんだ、って……ひどいなぁ、」
「ごめんごめん」
ツナの言葉がおかしくて、思わず笑ってしまう。
「……あ、そうだ」
少し不服そうな顔をしていたツナだけど、
どうやら何かを思い出したようで。
私はひとまず、言葉の続きを待つ。
「クリスマスパーティの話、京子ちゃんから聞いた?」
「うん、つい今」
そこで聞いたよ、と答える。
「君も参加するよね?」
「もちろん。楽しみだよね」
パーティ自体も楽しそうだけど、準備も楽しそう。
「きっと楽しくなると思うよ。山本も来るしね」
「えっ……」
ツナが、ちょっと笑った。
もしかして、とは思っていたけれど……
やっぱり、私の気持ちは既にバレているらしい。
「良かったね、」
「……うん」
ちょっと微妙な心境になりつつ……
山本もパーティに来るってことが嬉しくて、
私は素直に頷いた。
「山本も来る……」
本当に楽しみ、だね。
――12月24日。
パーティ開始の1時間前に集まって、準備を始め……
そして、予定通り7時にパーティが始まった。
「気をつけてください、10代目!
それは姉貴の作ったポイズンクッキングです!」
「なんでー!?」
「遠慮しないで食べてちょうだい」
ツナがすかさずツッコミを入れた直後、
所用で遅れていたビアンキさんが現れて。
「ふげーっ!!」
「ご、獄寺くん!」
当然のことながら、獄寺も卒倒してしまう。
「あはは、相変わらず面白れーリアクションするな」
「山本、これはリアクションじゃないよ……!」
山本も相変わらずのボケっぷりだけど、
私はそんなほんわかしたところに癒されるんだよね。
「…………」
――やっぱり、好きだなぁ。
「ビアンキさん、お疲れ様ですっ!」
「もうご用は済んだんですか?」
「えぇ、もう終わったわ。遅れてごめんなさいね」
あれ?
ビアンキさんが手に持ってるのって……
「シャンメリー?」
「さすがね、。
足りなくなるかと思って、ついでに買ってきたのよ」
本当はお酒の方が良かったんだけれど、と微笑みながら、
ビアンキさんはそれを手渡してくれた。
「私はまだ出していない料理を運んでくるから、
これはあなたに任せるわね」
「はい、分かりました!」
「って、ビアンキの料理、まだあるの……!?」
私が返事をしたのとほぼ同時に、
後ろのほうに居たツナが、小声でそう言った。
「っと、このシャンメリー、開けないとね」
せっかくビアンキさんが任せてくれたんだし。
「あ、あれ……?」
これ、けっこう固い……
「……?」
悪戦苦闘していると、
持っていたシャンメリーが突然なくなった。
「開けてやるから」
笑顔でそう言ったのは山本だった。
無くなったと思ったシャンメリーは、
どうやら山本が取ったらしい。
「ほら、開いたぞ」
間を空けずして、簡単に開けてみせたシャンメリーを
変わらずの笑顔で手渡してくれる。
「あっ、ありがとう!」
ついさっきまで少し離れたところにいた山本が、
いつの間にか近くまで来ていて……
驚いて少しだけ無言になってしまったけど、
なんとかお礼を言うことは出来た。
「…………」
でも、私がシャンメリーを開けられずにいたこと、
気付いて来てくれたんだよね。
普段ボケっぽい発言が目立つのに、
こういうところで気遣いが出来るのも、山本のいいところだよね……。
「ちゃん、そのシャンメリーもらってもいいですか?」
「う、うん、どうぞ!」
その後もしばらく、私たちは食べたり飲んだり、
おしゃべりをしたりして楽しい時間を過ごした。
「ツナ君、今日はお家を使わせてくれてありがとう」
「う、ううん、このくらい大したことないよ!」
「ケーキもおいしかったし、楽しいパーティでしたね!」
「うん!」
パーティを始めてから、2時間くらい経ったとき。
そろそろお開きにしようか、という流れになり、
一通り片付けも済ませてから揃ってツナの家を出る。
「じゃあ、またね」
「皆さん、今度は新年会でお会いしましょう!」
「おやすみなさい、10代目!」
「じゃあ、またな」
京子ちゃん、ハルちゃん、獄寺、山本は家が同じ方向。
私だけ別方向だから、必然的にここで別れることになる。
「それじゃまたね、みんな」
「待って、!
けっこう遅いけど、一人で大丈夫?」
普通に帰ろうとしていたら、ツナに呼び止められた。
一人で帰る私を心配してくれているみたいだ。
「大丈夫だよ、そんなに遠くないから」
「でも……」
「じゃあ、おやすみなさい」
ツナは最後まで渋っていたけれど、
私はそれを上手くかわし、一人で家までの道を歩き出した。
「大丈夫かなぁ……」
「心配いらないわ、ほら」
「え……?」
「よっス、ツナ!」
「えっ、山本!?
どうしたの? もしかして忘れ物?」
「いや、そういうわけじゃねぇんだけど……
用事を思い出したから、こっちから帰ろうと思ってさ」
「あ、そうなんだ」
「ああ。じゃあ、今度こそまたな!」
「うん、またね」
「山本武は、あの子を送ってくつもりなのよ」
「あ、そっか……!」
「!」
ふいに名前を呼ばれたから、何かと思って振り向いてみると。
「山本……!?」
そう、さっき別れたはずの山本がいた。
「な、なんで……」
「んー、やっぱお前を一人で帰すのもちょっとな。
家まで送ってく」
「で、でも……」
完全に逆方向なのに、いいのかな……。
「遠慮すんなって。
それとも、オレよりツナか獄寺の方が良かったか?」
「そ、そんなことないよ!」
私は、山本と一緒がいいから……。
「それなら問題ないだろ?」
「……うん」
なんだか、言いくるめられちゃったかな。
「それにしても、今日もまた一段と寒いなー」
「今日は特に寒いって、天気予報で言ってたよ」
雪がちらつく可能性もある、とも言ってた気がする。
でも、雪か。
今日はイブだし、せっかくだから降ってくれたらな……。
「。上、見てみ」
「え?」
考え込んでいたからなのか、
いつの間にかうつむき気味だった顔を上げてみると。
なんと、本当に雪が降っていた。
「わあ……!」
すごいタイミング……
「すごいよ、山本! ホワイトクリスマス!!」
「ああ、そうだな」
そう言って一緒に笑ってくれた山本が、
すごくあたたかくて……
改めて、私はこの人が大好きだなって思った。
「……っと、雪もいいけど、
これ以上遅くならないうちに帰るか」
「うん……そうだね」
お互い黙ったまま、しばらく雪を見ていたけれど。
さすがに、ということで、再び歩き出した。
「……ふふ」
こうして山本と、二人でいられるだけでも嬉しいのに。
イブに雪を見ることが出来るなんて……
「すごくラッキーだったかな……」
「何がラッキーなんだ?」
そんなに大きな声で言ったつもりはないけれど、
山本には聞こえていたらしい。
不思議そうにしながら問いかけてくる。
「んー……秘密!」
「そっか、秘密ならしょうがねぇな」
この気持ちも、いつかは伝えたいけれど……
今はまだ、純粋にこの幸せな時間を感じていたいな。
そんなことを思いながら、私はまた雪を見た。
雪の降る、寒い夜だけど
(隣にいる君は とてもあたたかかった)
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綱吉くんに気持ちがバレてる系の設定が、けっこう好きです。
自然にアシストしてくれそうなので……。
今回だとビアンキさんも色々分かってる感じで良きです。
恋愛の相談相手はビアンキさんorルッス姐さんと
わたしの中では決まっております。