「年越しパーティだと?」
「おー」
聞き返した俺に、(一応は)副長補佐に就く女隊士――は、気の抜けた返事をした。
「言っとくけど、もう決定事項だからね」
「オイ待て、まだ許可出してねーぞ」
「近藤さんから出てるから問題ないだろ」
って、近藤さんんん!?
なんで早々に許可出してんだよ……!
後先考えず快諾している奴の姿が思い浮かばれて、俺は頭を抱える。
「いーだろ別に、仕事に支障は出ないようにするからさ」
「まあ、それなら……」
「それに、お姉(+銀時たち)も参加するって言うしさ」
「も……」
そうか、も来んのか……。
つーか、近藤さんが乗り気な時点で、
俺がとやかく言ってもきかねー気がする、こいつら……。
「解ったら、観念して年越しパーティに参加することだな」
「…………」
チッ、なんかうまく丸め込まれた気がしねーでもねェが、仕方がねェ。
それに、が参加するならいいか……。
そう思った俺は、あえてそれ以上に反論しないことにした。
「……で、そのパーティとやらは具体的に何すんだ?」
「そーだな……
まあ、だいたいはいつもの宴会と変わらないだろうけど」
それって、「年越し」にかこつけて単に騒ぎたいだけじゃねーか……。
「まあ『年越し』を掲げてるんだから、最後はカウントダウンくらいするだろうな」
「……そうか」
結局「年越し」っぽいことって、それくらいになるよな。
自分で言っておいてなんだが、まあ、
確かにいつもの宴会と同じようなことぐらいしか出来ねーだろ。
「でも、それだけだと味気ないって言うお姉の意見により、」
「……?」
「成り行きで部屋の飾り付けをすることになった」
「飾り付け?」
この屯所を、か?
「ちなみには遠回しに反対したけど駄目だった」
この屯所が飾り付けられるとか、なんか想像するときもい。
はそんなことを考えたらしいが、結局、
を止めることは出来なかったと言う。
……んで、飾り付けすると意気込んでいるが、もうすぐここに来るらしい。
「で、トシはお姉と一緒に飾り付けしてやってくれ」
「は?俺が?」
なんで俺が……
そんなキャラじゃねーだろ。
俺の考えが解ったのか、は言葉を続ける。
「たちは、これから買い出しに行ってくるからさ」
「買い出し?」
「そ。酒やらお菓子やら、いろいろとあるでしょ」
あァ、そーゆーことかよ。
「だからってお姉ひとりじゃ可哀想だろ?
だから、トシは留守番しつつ飾り付けを手伝ってやってくれ」
「ちょっと待て、お前ら全員で買い出しに行くのか?」
「そーだけど」
なんか明らか必要以上に買い込んできそうな気がするのは俺だけかァ……!?
「もう決定だから。じゃ、行ってきまーす」
「あっ、オイ待て、……!!」
俺の制止も聞かず、はさっさと屯所を出ていってしまった。
(他の奴らは、どうやら既にデパートに向かっているらしい)
「……チッ、仕方ねェな」
普段全く言うこときかねーのに、
こういうときになると一致団結すんだよな、アイツら。
だが、既にここには居ない奴らについてあれこれ愚痴ってもどうにもならない。
そう思った俺は、なんとか頭を切り替えることにした。
「によると、がもうすぐ来るって話だったよな」
飾り付けするって具体的に何すんのか知らねェけど、なんか荷物が多そうだな。
「……屯所の前まで迎えに行ってやるか」
普段なら絶対こんなことしてやらねーけど、まあ、相手がじゃな。
そうして俺は、自室を出て屯所の門へ向かった。
「……あっ、土方さん!」
屯所の門を出たところに、ちょうどやって来たらしいが声をかけてきた。
予想通りの(いや、それ以上か?)大荷物で若干ふらついている。
「何やってんだよ……貸せ」
「えっ、あの……!」
持っていた荷物のうち重たそうなものをいくつか奪い取った。
は俺のそんな行動に驚いているようだが、
いちいち返しているわけにもいかず、俺はそのまま屯所に入る。
「あっ、待ってください、土方さん……!」
そう言いながらが慌てて走り寄ってきたので、俺も足を止めた。
(待っててやらねェと、なんか転びそうだからな……)
「えへへ、ありがとうございます!」
「……気にすんな」
行くぞ、と言うと、
も無邪気に返事をし俺のあとに続いた。
「……で、飾り付けするってから聞いてたが、
これから何すんだ?」
飾り付けなんてもん今までやったこともねーから、
俺はとりあえずにそう聞いてみた。
「ええと、ですね……
まずはお決まりの輪っかの飾りを作ります」
「輪?」
「はい」
この細長い折り紙をですね、交互にくっつけていくんです。
は実際に作業しながら俺に説明する。
「クリスマスとかお誕生日パーティには定番なんですよ!」
年越しパーティに使っていいものか解らないけれど、と、
また無邪気に笑いながら言った。
「……じゃあ、俺はそれをやる」
「いいんですか?」
「あァ……
から、お前の手伝いをするよう言われてるからな」
それに、この作業なら俺にだって出来るだろ。
俺がう言うと、は「じゃあお願いします!」と嬉しそうに笑った。
「かさなる影 飾らない気持ち〜で 強さを求めてーく♪」
鼻歌を歌いながら、は垂れ幕のようなものを準備している。
そこには達筆な字(誰の字だ?)で「年越しパーティ in真選組屯所」と書いてあった。
「つまずいーても迷っても構わない 1人じゃ〜ないーから〜♪」
持ってきた荷物の中から、今度は花?みたいなもんを取り出していた。
どうやら、机の上に飾るものらしい。
……それから俺も自分の作業をしながらの行動を盗み見していたが
(別に変な意味は無ェぞ!)
あの大荷物の中からどんどん飾り付けに使うものが出てきた。
よくそんなに持ってこれたな、と変に感心しつつ、
俺もの作業を出来る限り手伝ってやった。
「それにしても、ずいぶん楽しそうだな」
見た目もすっかり変わってしまった屯所内。
それを見回しながら、俺は言った。
「はい、すごく楽しいです!」
ふとつぶやいただけのつもりだったが、しっかり聞こえていたらしい。
満面の笑みで、はそう答えた。
「故郷に居るときは、が江戸に行ってから毎年ひとりだったので……
こんなに大勢で年越しするのは初めてだから、すごく楽しいです」
あァ、そうか……
そういや、そうだったな。
が故郷を離れてから、ずっと一人で……。
「一緒に年越ししよう、と誘ってくれる人は、ありがたいことにたくさん居ました。
でも、なんだか年末年始って家族で過ごした方がいい気がして」
だからお断りしたんです、と続ける。
「……まァ、昔は昔、今は今だ。
今を楽しんでればいいんじゃねーのか」
「…………はい!!」
俺の言葉に、心から笑って頷いているように見えた。
「……でも、ちょっと惜しいですね」
「何がだ?」
の唐突な言葉に、俺は首をかしげる。
「大勢で年越しするのは楽しみだから、みんなには早く帰ってきてほしい……
……けど、土方さんと二人じゃなくなってしまうのは残念です」
「なっ……!?」
何言ってんだコイツ!?
なんでそんな意味深なこと言ってんだ? なんだ?どういう意味だ……!?
「オイ、……!」
混乱した俺は、その言葉を真意を問いただそうとしたが……。
「ただいま〜〜」
「……あっ、の声!
みんなが帰ってきたみたいですね」
あたし迎えに行ってきます、と言い残し、
さっさと奴らのもとへ行ってしまった。
「なんなんだよ…………」
さっきの言葉は、一体どういう意味だったのか。
後で絶対ェ問いただしてやる。
そう決意したものの、パーティが始まってからは
万事屋や総悟たちの邪魔が入り、まともにと話すことすら出来なかった。
……まあ、いいか。
が楽しそうなんだからな。
けど、やっぱり後でもう一度聞いてみるか
(このままじゃ気になって眠れねーからな……)
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テーマ「年越し」を土方さんでお送りしました! いかがでしたか?
いや、土方さんまじ好きなんですよ。あんまアピールしきれていないけどね。(オイ
土方さんと銀さんがまじ好きだな。銀魂だと。
二人好きすぎるよ!
口で言う割に、自分が犠牲になるのを厭わないふしがあるからね。
あたし自己犠牲する人に惹かれる傾向があるんですよ。
弁慶さんとか銀とか、まさに。(何
そういう人を、諭していくのが好きなんですねー。
だから、あたしの書くものは人を諭すシーンが多々ある。
相手をヒロインが諭す場合と、逆パターンも。
ずいぶん話がそれましたが、とにかく、土方さんが好きなんです。
サイトにあるオリジナル長編での土方さんが、割と理想。(笑)
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
この企画も半分以上終わってきたので、残り頑張ります……!(必死
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