「初めまして、です。
           妹のがいつもお世話になってます!」


          江戸に出てきた今日だけは、
          ここ真選組の屯所に泊めてもらうことになった。




















新たな暮らしが始まる日――第二話 浮かぶ疑念






























          屯所に泊めてもらうこともあって、
          今は隊士の皆さんに挨拶をしているところ。






          「俺が局長の近藤勲だ。よろしくな、ちゃん!」

          「はい、よろしくお願いします!」

          「俺は山崎退だよ」

          「退くん……でいいかな?」

          「うっ、うん!」


          良かった、みんないい人みたい。










          「ん〜、
           やっぱり女の子がいると屯所内の雰囲気が違うなァ〜!」

          「近藤さん、も女の子なんだけど」

          「お前は女であって女じゃねーよ」

          「ひどいなトシ、
マジで死んでくれ

          
「お前が死ね」











          「退くんなどんなお仕事をしてるの?」

          「俺は密偵としての調査が主な仕事かな」

          「へぇ〜、すごいんだね!」

          「そ、そんなことないよ」


          あたしも調査は好きだから、
          そういうのをお仕事にしてるっていうのは、うらやましいかも……。











          「ったく……
           たかが女一人にデレデレしやがって、仕方ねェ奴らだな」

          「まァ、珍しいってのもあるんでしょうがねィ……
           ……じゃ、どれほどの人間なのか俺が見極めて来やしょう」

          「おっ、オイ総悟! 何するつもりだ?」

          「心配いりませんて、近藤さん。ちょっと挨拶してくるだけでさァ」






          「心配いらないよ、近藤さん」

          「だが、ちゃん……」

          「あの人を誰だと思ってんですか?」

          「ちゃん……だろ?」

          「否、」







          「“のお姉”、だよ」

          「……!」















          ……ん? あの男の子、こっちに……
          ……!





          「ねぇ、あなたお名前は?」

          「俺ですかィ? 俺は沖田総悟でさァ」

          「総悟くん、ね。 ちょっとこっちに来てくれないかな?」

          「……?」






          「なんだなんだ?」






          「そこに座って」

          「ここですかィ?」

          「うん、そうだよ」


          えーっと、確かバックの中に……
          …………あっ、あった!









          「あの女、櫛なんか出してどーするつもりだ?」

          「さァね」









          シャッ、シャッ……





          「…………はい、出来た♪」

          「……?」

          「総悟くん、髪の毛が少しボサボサになってたよ」

          「アンタ……それを直してくれたんですかィ」


          って言っても、櫛でとかしただけなんだけども……。






          「せっかく綺麗な髪なのに、
           ボサボサだったらもったいないでしょ?」

          「別に……」

          「でも、直したからもう大丈夫だよ。
           ……うん、やっぱりこっちの方がかっこいいね♪」

          「……!」





          「(ちゃん、沖田隊長の頭なでてる!
            なんて恐れ多い……!!)」










          「…………俺、カッコいいですか?」

          「うん、すごく」

          「…………ありがとう、ございやした」





          「おおっ! あの総悟が素直にお礼を……!!」















          「どういたしまして。
           ……っと、ごめん、まだ名乗ってなかったね、あたしは……」

          「知ってまさァ、さん……でしょう?」

          「う、うんっ! よろしくね、総悟くん!」

          「…………よろしくお願いしやす。それじゃ」


          あっ、総悟くん、行っちゃった……
          ……でもすごく髪の毛サラサラだし似合ってたな。








          「ちゃんは、前はどんな所に住んでたの?」

          「あ、うん……すごく田舎だよ。畑もたくさんあって……」










          「あの人がの姉上ですかィ……」

          「見極めに行った感想はどうだ?」

          「…………俺も、姉上を思い出した」

          「……そうか」

          「いい人なんじゃあないですかねィ。
           じゃ、俺は部屋に戻りますんで」




          「(総悟を黙らせるとは……さすがお姉だね。)」











          「お姉……世間話はそこまでにしなよ。
           どうせ最低限の荷物しか無いんでしょ?」

          「う、うん」

          「じゃ、すぐに使いそうな物だけ買いに行くよ」

          「そうだね」


          歯ブラシとか、慌ててダンボールに詰めちゃったから今は無いし……。





          「というワケで、ちょっと出掛けてきますね近藤さん」

          「おう、気をつけてな」

          「失礼します」


          バタバタ……。
















          「いやァ〜、なかなかいい子じゃないか」

          「そうかァ? 俺ァまだ納得がいかねェがな」


          まだ何か……隠してるような……。






          「……まァ、お前の言いたいこともなんとなくは解るぞ。
           けど、相手は女の子だ。意地悪とかはしないでくれよ」

          「…………そんな幼稚なことしねーよ」


























          「どうだった? 真選組(うち)の人間は」

          「うん、みんないい人そうで安心した!
           も馴染んでるみたいだし」


          女の子はあまり……というか、隊士では全くいないらしいから。
          心配してたんだけど、大丈夫そうだね。






          「ちなみに、さっきの総悟って奴は一番隊長なんだ」

          「へぇ〜、すごーい! も何か役職があるの?」

          「初めはヒラだったけど……今は一応“副長補佐”」



          ええっ!







          「すごいじゃん!」

          「そう?」

          「そうだよー!」


          だって、副長って言ったら二番目に偉い人じゃん!







          『……俺は真選組副長の土方十四郎だ』





          そっか、あの人の……










          「土方さんの補佐役なんだね」

          「そう。
           ま、補佐って言うよりその地位を狙ってる感じだけど……」

          「え?」

          「なんでもないよ」


          ……??





          「でも、土方さんと仲良しなんだよね?」
 
          「…………なんでそう思ったの?」

          「だって、“トシ”って呼んでたし!」

          「あァ……(それでか。)」


          けっこう親しそうだったし……





          「もしかして付き合ってるとか!?」

          「
んな訳ねーよ。
           全く、お姉はすぐそっちに持っていきたがる……」

          「だって〜」


          そっちの方が楽しいじゃない(笑)






          「お姉、をネタに楽しまないでよね」

          「そっ、そんなことしてないよ!」

          「……。(どもってるし。)」


          なんでってこんなに鋭いんだろう……?















          「ほら、店に着いたよ、お姉」

          「あ、うそっ……」


          ……!





          「うわー! 大きい店〜!」


          デパートってやつだ……!





          「大げさ……と言いたいところだけど、まァ仕方ないか。
           故郷にはこんなデカイ店も無いしね」

          「うん、初めて見たよ!」


          すごーい、ほんとに都会だ!






          「んじゃ、さっさと買っちゃおっか」

          「うん!」

          「……。(…………てか、トシだったらどっちかって言うと
           お姉にホレそうな…………)」










          『もしかしてお姉にホレた?』

          『…………悪りィか』

          『別にィ〜』














          「(そーいや、銀時はすでにお姉にホレてるんだよなァ……)」


          …………。





          「……待てよ。(銀時とトシって結構似てるよね……なんか色々と。)
           いや……まさかね。(トシの奴、まだお姉のこと警戒してたし……)
           いや、無い。それは無いよ」













          「〜! 早くおいでよ!」

          「あ……うん」


          この嫌な予想が的中したらめんどいな……


          そう思いながら、前を行く人の背中を追いかけた。




















          To Be Continued...「第三話 その裏に隠された何か