初めて江戸に来た日だから、
知らないうちに疲れが溜まっていたのかもしれない。
布団に入ると、すぐに眠りについた……
…………そして。
あたしはその日もまた、夢を見るのだった。
新たな暮らしが始まる日――第四話 闇夜に迷った心
『ごめん、お姉。、江戸に行くよ』
『えっ……なんで……?』
『真選組に入隊することになった』
幕臣になることは、夢だったんだもんね……
それが、やっと叶うんだ、
だからあたしは、姉として応援してあげないと……
でも……でも、あたしは…………
『…………ごめん』
嫌だ……
本当は行ってほしくなんかない…………
『っ……!』
嫌だ……行かないで…………!!
「……!」
…………。
「嫌だよ…………」
行かないで……
「待って……!」
混乱して何も考えられなくなったあたしは、
後先も考えずに部屋を飛び出した。
「チッ……」
結局こんな時間になっちまった……。
「いい加減、寝るか」
さすがにこれ以上は、明日に響くしな。
バタバタ……
「……ん?」
何だ……
「誰かいんのか?」
それは構わねェが、
こんな夜中に走り回ってんじゃねーよ……。
どうせ総悟辺りの嫌がらせだろ……
仕方ねェから注意してくるか。
シャッ
「はぁっ、はぁっ……」
バタバタ…………
「あれは……」
の姉貴じゃねェか。
「こんな時間に何やってんだ……?」
とにかく追いかけてみるか。
「はぁっ、はぁっ……」
嫌だ……行かないで…………!
「外に出ようとしてんのか?」
何してんだ、あの女……!
「オイっ! オイ、待てよ!」
「嫌っ!」
嫌じゃねーだろ!
女がこんな時間に外をうろつくなんて何考えてんだよ!
「待てっつってんだろ!」
ぱしっ
「……!?」
…………。
「一人にしないで……!」
「バッ……!
なっ何してんだ、離せ!」
「……か……で…………」
「は……?」
「置いてかないで…………」
「……!」
コイツ……
『どうして姉貴は一緒に来なかったんだよ』
『……が置いてきたから』
『は……?』
『なんでもないよ』
そうか……
のあの言葉、冗談かと思ってたが
どうやらそうでもないみてェだな……。
「あたしを……一人にしないでっ…………
置いて……いか、ないでっ…………」
「…………」
『初めまして、です。
妹のがいつもお世話になってます!』
そうだったのか……
コイツが隠していたのは、淋しさ……
それを隠しているから……違和感があったんだ………。
「いか……ないでっ…………」
『初めまして、です』
“”…………
「……お前は一人じゃねェ」
近藤さんも総悟も、みんなお前のことを信用してる……
『否、“のお姉”、だよ』
「それにここには、もいる」
「、も……?」
「あァ……」
『うん、待ってるね、銀さん!』
コイツは、これから万事屋んトコで暮らすんだろ……
「これから住むトコだって、一人になったりしねェよ」
「これから……」
『一緒に行くぞ、』
「ぎん、さん…………」
「…………」
確かに故郷では一人だったんだろう……
だが、それも昨日までのことだ。
「もうお前は一人じゃない」
「ほん、と……?」
「あァ……」
今だって……
「今だって……俺がいるだろ…………?」
「……!」
…………。
「っく……ひじ、かた、さっ…………」
一瞬目を見開いたあと、はそのまま泣き出す。
「ひじかた……さ…………」
…………そうしてときどき俺の名を呼びながら、
しばらく泣き続けていた。
そして俺は……
早く泣きやむように、さっきまでを抱きしめていたこの腕に、
さらに力を込めた。
To Be Continued...「第五話 君という名の刀に」